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加熱式たばこ、火災は発生しにくい

2019.05.31

 5月31日はWHO(世界保健機関)が定めた「世界禁煙デー」。喫煙者に対する風当たりが年々厳しさを増すなか、最近は、従来の「紙巻きたばこ」に代わって、「加熱式たばこ」を見かける機会が増えた。この加熱式たばこ、タバコ葉を燃やさないぶん、紙巻きよりも火災が発生しにくいという。

紙巻きの販売数量は激減、加熱式は急増

 加熱式たばこは、タバコ葉を燃やさずに電気で暖めてニコチンを発生させる仕組みをもつ。タバコ葉をカートリッジに詰め、充電した専用の器具で加熱して使う。燃焼ではないため煙は出ないが、代わりにタバコ葉などに含ませておいたグリセリンが気化して発生する蒸気を吸引するため、煙を吸った気分も味わえる。

 紙巻きたばこと加熱式たばこを関係法令上の扱いの違いは下図の通りだ。加熱式は、タバコ葉を燃焼させないという点で従来のたばこと異なるものの、たばこを嗜むことを目的とした製品であることに変わりはない。だから当然、たばこ税が適用される。

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 加熱式たばこは、紙巻きに比べて煙とにおいが大幅に低減されていることから、肩身の狭い思いをしていた愛煙家に好感され、このところ急速に普及している。紙巻きたばこが右肩下がりに販売数量を減らすなか、すでに市場の2割を超えるシェアを占めるほどの人気という。

火災が起きやすい条件でも、加熱式は燃えなかった

 加熱式たばこが世の中に出回るにつれ、問題も出てきた。火を使わない加熱式は、従来の紙巻き同様、消防関係法令上の喫煙規制の対象としてよいのか、危険物施設等では火気に該当すると考えて対処すべきなのかといった火災予防上の問題だ。

 「ライターやマッチでタバコ葉に火を点けて煙を吸う」という一連の行為を喫煙と定義するのであれば、加熱式たばこを用いて「ニコチンを摂取する」行為を直ちに喫煙とはみなしにくい。しかし、燃焼こそさせないものの、温めるのであるから器具はそれなりに熱をもつ。はてさて、加熱式たばこの火災発生リスクは、いったいどの程度なのか?

 こうした疑義を明らかにするため、総務省消防庁は「加熱式たばこ等の安全対策検討会」を設置して加熱式たばこの火災リスクを検証、その結果をさきごろ公表した。対象になったのは、加熱式たばことして市販されている「アイコス」「プルーム・テック」「グロー」の3製品だ。

 まず、使用時の表面温度を測ってみた。どの程度、高温になるのだろう? 計測の結果、最高温度は3製品とも数十度であり、各メーカーが公表している最高温度を下回る値だった。

 寝たばこなど、たばこ火災が発生しやすい条件を再現して、紙巻きたばこと加熱式たばこが実際に火災を発生させるのか確認してみた。下図に示す通り、紙巻きではすべての実験で燃焼が確認されたが、加熱式は3製品すべてで燃えなかった。

 さらに、加熱式たばこのカートリッジが着火物となりうるか確認するため、カートリッジに燃焼している紙巻たばこを投入した実験では、3製品のうちグローでのみ延焼が確認された。

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「たばこ火災の提言に効果」と評価も、規制対象は妥当と判断

 こうした検証結果を踏まえ、検討会は、現行製品である加熱式たばこには、さまざまな安全対策が施されていると評価、「火災発生危険が紙巻たばこより低い」と結論付けた。そのうえで、このような安全対策に積極的に取り組んだ加熱式たばこが普及すれば、「たばこ火災の低減に一定の効果がある」と期待を示した。

 一方で、懸案とされた喫煙規制や火気規制については、今後新たな製品や互換品の出現が想定されることなどを理由に、「現時点で加熱式を消防法などで定める喫煙規制の対象外であると一律で判断することは困難」「危険物を取り扱う場所において使用しないよう運用とすることは安全管理上適当である」と述べた。

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 世界禁煙デーが始まったのは1988年。この年は4月7日に実施されたが、翌89年のWHO決議で毎年5月31日に実施されることが定められた。89年は平成元年、ちょうど30年前のことだ。財務省が作成した上図の通り、紙巻きたばこは平成8年をピークに、ほぼ一貫して下がり続けている。

 人々の健康被害が軽減され、火災の発生を減らすことにもなるのだから、快事であることに異論はない。ただ、令和の時代を迎えたいま、紙巻きたばこが平成という時代の記憶とともに消えつつあることを、元愛煙家たる筆者は、いささかの感慨をもって見つめている。