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改定ガイドラインの要点は「警戒レベル4までに避難する」

2019.04.30

 西日本豪雨を教訓に「避難勧告等に関するガイドライン」が改定され、前回その概要を紹介した。今回も引き続き、改定のポイントを見ていこう。

 避難勧告と避難指示(緊急)が同じレベル4に置かれたこと、レベル5に災害発生情報が新設されたことについて、ガイドラインの説明を確認してみる。

避難勧告と避難指示(緊急)が同じレベル4に

 自治体が発令する避難情報は、新たに導入された5段階の警戒レベルのレベル3から5に位置付けられることになった。「避難準備・高齢者等避難開始」は警戒レベル3に、「避難勧告」と「避難指示(緊急)」は、どちらも警戒レベル4に位置付けられた。避難勧告と避難指示(緊急)が同じレベル4に置かれたことで、最上位のレベル5には「災害発生情報」が新設された。

 この避難情報と警戒レベルとの対応に、「あれっ?」と、どこか居心地の悪さを感じる人もいたのではないか。

 ≪たしか、これまでは「避難準備・高齢者等避難開始」<「避難勧告」<「避難指示(緊急)」の順番で災害の切迫度が高まった状態と説明されてきたはず。避難勧告がレベル4なら、避難指示(緊急)はレベル5に対応するべきじゃないの?≫

 そんな疑問が浮かんでも不思議ではない。どうして避難勧告と避難指示(緊急)は同じレベル4にまとめられることになったのだろうか?

運用現場では、勧告と指示の使い分けは難しい

 5段階の警戒レベル設定を柱とした今回のガイドライン改定は、中央防災会議の作業部会が策定した報告書「平成30年7月豪雨を踏まえた水害・土砂災害からの避難のあり方について」に盛り込まれた提言を踏まえている。

 避難勧告と避難指示(緊急)を同じレベルにすべきなのか、あるいは異なるレベルにすべきなのか――。これは、作業部会でも重大な論点のひとつであり、双方の立場から活発な意見が出されていた。作業部会の資料に論点が整理されていた。

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 異なるレベルにしたほうがよいという立場からは、「『勧告』と『指示』の順序(強弱)が分かりやすくなる」「それぞれが異なるレベルに対応していたほうが使いやすい」といった意見が出された。なるほど、極めて常識的な意見に思える。

 一方、同じレベルのほうがよいという立場からは、自治体の運用現場からの現実的な視点が示されている。「指示をレベル5とした場合、レベル4での避難が進まない懸念がある」との意見や、そもそもの現実問題として勧告と指示を使い分けることの難しさを指摘する意見が相次ぐ。自治体現場の声だ。説得力がある。

 こうした議論を経て、避難勧告と避難指示は同じレベルに位置付けられることに落ち着き、新たに上位レベルに「災害発生情報」が新設されることになった。ガイドライン改定版では、次のように整理されている。

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 そのうえで、避難指示(緊急)と災害発生情報の違いについてもまとめている。

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勧告と指示の違いは、いずれ無くなるかもしれない

 西日本豪雨では、事前に出されていた防災情報が避難に十分に活用されず、多くの犠牲者が出た。避難勧告と避難指示(緊急)の違いの分かりにくさも、やり玉に挙がっていた。今回の改定でさまざまな見直しがなされたが、結局のところ両者は同じレベル4に置かれることになった。分かりにくさの解消という課題は、依然として残されていると感じる。

 実際、作業部会の議論でも、「勧告と指示で受ける立場(住民の立場)の行動がどう違うのか受け手の立場に立った整理が必要」という意見が出された。勧告と指示という2つの情報を運用していくには住民目線からの点検も必要ですよ、という指摘だ。「指示の切迫性を伝えることは非常に難しい」と、自治体の本音を率直に吐露した意見もあった。

 そうなれば、「避難勧告と避難指示の2つ要るのかは将来的な課題」「レベルという概念が定着していくのであれば、いずれは実質的にひとつになっていくこともありうる」などの意見が続いたのも当然だ。

 複数の委員が指摘するように、避難勧告と避難指示(緊急)という避難情報は近い将来、分かれている意味を見出せなくなって、ひとつに収れんしていくのかもしれない。議論の推移は、そんな予感を抱かせた。

 もちろん、用語の定義に防災の本質があるわけではない。いかに災害から身を守るかに集中することが大事だ。「警戒レベルの数字が上がれば災害発生の切迫度も増す」「レベル3で高齢者や要配慮者は立ち退き避難する」「レベル4で全員が立ち退き避難する」「レベル5の災害発生情報発令後の立ち退き避難は危険。レベル4までに避難を終えておくべきだ」――。今回のガイドライン改定の要諦はこれだろう。私たち住民は、まずは単純にこれだけを覚えておこう。