1. ホーム
  2. レポート
  3. 防災の現場
  4. 南海トラフ地震に関連する「臨時情報」を理解しよう(2)

南海トラフ地震に関連する「臨時情報」を理解しよう(2)

2018.12.30

 南海トラフ地震につながる可能性がある異常現象が観測されたとき、気象庁は南海トラフ地震に関連する「臨時情報」を発表する。

 臨時情報が発表されたら、住民や企業、自治体などはどのように対応すればよいのか――。政府の中央防災会議はこのほど、臨時情報発表時の対応方針をまとめ、報告書案として公表した。

巨大地震につながる恐れがある3ケース

 報告書案は、巨大地震につながる恐れがある異常現象として、(1)南海トラフ想定震源域の東側か西側のどちらかでマグニチュード(M)8クラスの大規模地震が発生する「半割れ」(2)想定震源域内で大規模地震より一回り小さいM7クラスの地震が発生する「一部割れ」(3)東海地震の判定基準とされるようなプレート境界⾯でのすべりが発生する「ゆっくりすべり」――の3つのケースを挙げ、ケースごとに防災対応の考え方や方向性、注意点などを示した。

(1)半割れ(M8級)ケースでは「1週間の一斉避難」

20181230_01.jpg

 想定震源域の東西のどちらかの領域でM8の地震が発生する「半割れ」ケースでは、割れ残った反対側の領域でも新たな巨大地震が発生する危険性が高まるという。

 報告書案では、後発地震による津波到達までに避難を完了できない地域のすべての住民と、それ以外の地域でも津波到達までに避難を完了できない恐れがある高齢者などの要配慮者は、あらかじめ安全な場所に避難することが対応の基本であると打ち出した。避難する期間は「1週間」を目安とした。

(2)一部割れ(M7級)ケースでは「必要に応じて自主避難」

 M7クラスの地震が想定震源域の一部で発生した「一部割れ」ケースの場合、巨大地震が後発する可能性は(1)のM8クラスの地震に比べると高くない。このため、地域を定めて一律に避難を求めることはせず、住民は個々の状況に応じて日頃の備えを再確認しながら、必要に応じて自主的に避難を判断するよう促した。

20181230_02.jpg

(3)ゆっくりすべりケースでは「備えの再確認」

 「ゆっくりすべり」は、プレート境界面の固着状態に通常とは異なる変化が観測されるケースだ。南海トラフでは過去に観測された例はない。観測された時点で揺れを感じることもなく被害も出ていないため、一部割れケースと同様に事前の避難は実施しない。日頃の地震への備えを再確認しつつ、気象庁から発表される続報に注意するよう呼びかけた。

20181230_03.jpg

後発地震の可能性は低くないが、「空振り」が前提

 3つのケースのうち半割れと一部割れは、最初にM8~7の地震が発生し、その後さらに地震が発生する事態を想定している。過去の大規模地震の発生状況をみると、このような地震の連続発生が珍しくないことがわかっているからだ。

 報告書案では、地震発生後に大規模地震が後発する可能性について、世界の地震データに基づいて整理している。それによると、半割れ、一部割れの両ケースとも、最初の地震発生直後ほど後発地震が発生しやすく、時間が経過するにしたがって減少する傾向がみられた。

20181230_04.jpg

 1904年から2014年までの間に、世界でM8以上の地震は103例発生しており、その後隣接する地域(震源から50キロ~500キロ)でM8以上の地震が発生したのは、7⽇以内が7事例、3年以内が17事例あった。M8クラス以上の後発地震が7⽇以内に発⽣する頻度は、⼗数回に1回程度(7事例/103事例)だった。

 また、M7.0以上の地震は1,437事例発生しており、後に同じ領域(震源から50キロ以内)でM8クラス以上の地震が発⽣したのは、7⽇以内が6事例、3年以内が14事例だった。M8クラス以上の後発地震が7⽇以内に発⽣する頻度は数百回に1回程度(6事例/1,437 事例)だった。

 後発地震の発生割合を単純に算出すると、M8クラスの地震の場合、7日以内では約15回に1回、3年以内では約6回に1回の割合で発生していることになる。地震国・日本に住み、頻繁に地震を体験している私たちの「皮膚感覚」に照らしても、これは十分に高い数値であると言えるのではないだろうか。M8クラスの半割れケースで、一斉避難が対応の基本にされたことは十分に意味があるだろう。

 もっとも、後発地震が発生する可能性が高いM8クラスの地震でも、15回のうちの14回は「空振り」に終わる。この割合だけをみればやはり、臨時情報による一斉避難は、空振りが前提であることは間違いない。

 それでも、報告書案が指摘するように、南海トラフ地震の切迫性とその被害の甚⼤性を考慮すれば、不確実ではあるものの、異常現象を観測したという情報(東海地震に関連する「臨時情報」)を被害軽減に役立てる取り組みは重要だ。

 当然のことながら、臨時情報が発表されることなく、大規模地震が突発する可能性は高い。家具の固定やいざというときの避難先の確認など、地震に対する日頃の備えが、すべての対応の基本であることは変わらない。

 今後、政府は報告書をもとに住民や自治体、企業などの防災対応をまとめたガイドラインを来年度にも策定するという。ガイドラインの完成を待つ間も、各家庭で日頃の備えを確実に進めていこう。