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南海トラフ地震に関連する「臨時情報」を理解しよう(1)

2018.12.20

南海トラフではマグニチュード9を超えるような最大クラスの巨大地震が発生する恐れがあり、ひとたび発生すれば東日本大震災をはるかに上回る被害が想定されている。

南海トラフ地震が発生する可能性が高まったと考えられる場合、気象庁は南海トラフ地震に関する「臨時情報」を発表することになっている。昨年から運用が始まっているが、政府の中央防災会議はこのほど、臨時情報が発表された際の住民の防災対応などについて、具体的な考え方を整理して報告書案を公表した。

今回と次回に分けて、臨時情報の位置付けや報告書案の概要を確認していきたい。

東海から九州にいたる広大な想定震源域

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南海トラフとは、駿河湾から日向灘にかけて続いている海底の細長いくぼみのこと。海側のフィリピン海プレートが陸側のユーラシアプレートに沈み込んでいるために、海底の地形が溝のようにくぼむのだという。

上図は、「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)」(地震調査研究推進本部地震本部)で示された南海トラフ地震の想定震源域(赤色の枠で囲まれた部分)。東海地方から九州東沿岸までの広大な領域に広がっている。震源域の広がりから推定される地震の最大規模はマグニチュード9クラスとされている。

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プレート同士が接する境界(固着域)では、海側のプレートの沈み込みによって陸側のプレートが地下に引きずり込まれている。これに伴ってプレートの内部に「ひずみ」が蓄積する。ひずみが限界まで蓄積されると、固着域がはがれてひずみが開放される。このとき地震や津波が発生する。このタイプの地震を「プレート境界型地震」と呼び、南海トラフ地震もこれにあたる。

地震が起こってひずみが開放された後もプレートの活動は続く。ひずみは再び蓄積していき、地震も繰り返し発生することになる。実際、南海トラフ地震も過去に何度も発生していることがわかっている。

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先ほどの「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)」によると、記録が確認できる最古の南海トラフ地震は、飛鳥時代の684年に発生した「白鳳地震(はくほうじしん)」。その後、特に1361年の「正平(康安)地震」以降は、100年から150年程度の間隔で発生している。

前回の昭和東南海地震(1944年)、昭和南海地震(1946年)が発生したのは終戦前後の混乱期。その時から70年あまりが経過した現在、次の南海トラフ地震の発生は刻一刻と迫っていると考えられている。政府の地震調査委員会は、今後30年以内に南海トラフ地震が発生する確率を「70-80%」としている。

地震の予知はできないが、「発生可能性が高まった」と評価することは可能

南海トラフ地震の長期的な発生確率を示すことは可能だが、現段階の科学的知見では、「いつ、どこで、どのくらいの規模」の地震が発生するかを予知することはできない――。

東日本大震災の発生を予測できなかった反省も踏まえ、国は昨年、南海トラフ地震対策を大きく転換。事前予知を前提としていた従来の「東海地震に関連する情報」の発表を取りやめ、新たに「南海トラフ地震に関連する情報」の運用を始めた。

同情報には「臨時」と「定例」の2つがあり、このうち臨時情報は、南海トラフ地震が発生する恐れが高まったと考えられる場合などに発表される。具体的には以下の通りだ。

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この表を見て、疑問を抱く人がいるかもしれない。

表中の(2)では「南海トラフ地震発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと評価された場合」に発表されると書いているが、これは地震予知とはどう違うのだろうか、と。

これについて気象庁は、従来の「東海地震予知情報」とは、発表から2~3日以内に東海地震が発生する恐れがあることを伝える情報であり、こうした確度の高い情報を発表することは現在の科学的知見では極めて困難であると重ねて強調している。

そのうえで、南海トラフ地震については、「プレート境界の固着状態の変化を示唆する現象を検知できれば、地震発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まっていることを評価することが可能」と述べている(気象庁資料「平成29年11月1日から「南海トラフ地震に関連する情報」の運用を開始しました」)。

中央防災会議の作業部会がこのほどまとめた報告書案でも、南海トラフ地震の切迫性とその被害の甚?性を考慮すれば、予知情報と比べて不確実ではあるものの、こうした情報を被害軽減に役立てていくという考え方は重要であると指摘している(南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応のあり?について(報告)」)。

地震予知とは異なり、情報の確度は決して高くないが、たとえ「空振り」に終わったとしても防災対応に役立てる意義は大きい。臨時情報とはこのような情報であると位置づけられている。

では、この情報は具体的にどのように役立てることができるのか。この考え方を示した報告書案の概要については、次回、見ていくことにしよう。