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り災証明書は、生活再建への第一歩

2018.10.31

平成30年7月豪雨、平成30年北海道胆振東部地震など、大きな災害が相次いでいる。

大規模災害で心配になるのが、被災後の生活再建だ。自宅が損壊したような場合には、住まいの再建という困難にも直面することになる。

「り災証明書」は、被災後の生活再建に向けた第一歩を踏み出すために必要になる書類であることをご存じだろうか。身近で起こりうる大規模災害に備え、り災証明書の基本を理解しておこう。

り災証明書、東日本大震災をきっかけに法制化

り災証明書とは、地震や風水害で被災した家屋の被害程度を市区町村が証明するものだ。被災者からの申請があった場合に、市区町村が家屋の被災状況を調査し、そこで確認した事実に基づいて交付することになっている。

り災証明書を提示することで、被災者は各種の生活再建のための支援制度を利用することが可能になる。り災証明書を取得することは、災害からの生活再建に向けたスタート地点に立つことを意味している。被災者にとっては極めて重要な書類だ。災害で大きな被害を受けたら、「まずは、り災証明書を取得する」と覚えておこう。

生活再建のための支援制度を利用できるのだから、り災証明書は被災後、早急に交付されるべきものだ。しかし、災害の規模が大きくなればなるほど、り災証明書の交付には時間がかかりがちになる。実際、東日本大震災の際、り災証明書の交付に必要な家屋の被害認定調査の実施体制が十分でなかった市区町村では、証明書の交付に長い時間がかかり、結果として被災者支援が遅れた事例があったという(総務省九州管区行政評価局、「大規模災害時における罹災証明書の交付等に関する実態調査―平成28 年熊本地震を中心として―結果報告書」平成 30 年1 月)。

こうした経緯を踏まえて国は、平成25年の災害対策基本法改正で、り災証明書を遅滞なく交付することを市区町村長の義務として法制化した(災害対策基本法第90条の2)。それまでも、り災証明書の交付は市区町村の自治事務として取り組まれていたが、法的な位置づけは明確ではなかった。法制化により、り災証明書の交付は市区町村の義務となり、被災者は申請すれば間違いなく交付されることが定められた。

実際に調査を実施して被害程度を認定

り災証明書を申請から各種支援制度を活用するまでの基本的な流れは次の通りだ。

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まず、被災者は市区町村の窓口で、住家の被害認定調査を申請する。これを受けて市区町村から派遣された調査員が実際に被害認定調査を実施する。調査を終了し交付の準備が整ったら市区町村から案内がある。窓口で証明書を交付してもらえば、それを提示・添付することで各種支援措置を活用することができる。被害認定調査を経るため、証明書の交付までの時間は、一般的に数週間から1か月程度とされている。

り災証明書を発行するための被害認定調査は、市区町村が(1)損壊基準判定(損壊割合、住家の損壊、焼失、流失した部分の床面積の延床面積に占める損壊割合)、あるいは(2)損害基準判定(経済的被害、住家の主要な構成要素の経済的被害の住家全体に占める損害割合)のいずれかの基準で判定し、結果を「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊(半壊に至らない)」の4つに区分する。

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この被害程度に応じて、受けられる支援措置の内容が異なる場合がある。このため認定結果に不服がある場合には、再調査を依頼することもできる。

り災証明書で受けられる被災者支援措置は数多い。

返済する必要のない現金の「給付」、低金利で返済期限が長く設定されている「融資」、税金や社会保険料などの「減免や猶予」、応急仮設住宅への入居などサービスの「現物支給」など多岐にわたっている。

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がれき等を片付ける際は被災状況を写真撮影しておく

り災証明書を取得しようとする場合に覚えておきたい注意点がある。

ひとつは、被害認定調査を受ける前にがれきの後片付けなどをするときは、被災した状況を写真撮影し、記録として残しておくことを忘れないということ。この場合は、家屋の外観だけでなく、屋根、柱、壁などの構造部分や室内の被災の様子も撮影しておきたい。撮影した写真は、損害保険金等の請求手続きの際にも、損害の程度を示す資料として役立つことがある。

ふたつめは、被災した建物の「応急危険度判定」による判定区分と混同しないということ。

これは地震災害のたびに話題になるが、建築物の応急危険度判定は、余震等による二次災害防止のために緊急に倒壊危険性などを点検するもので、り災証明書を受けるための被害認定とは異なるものだ。応急危険度判定が実施された建物には、「危険(赤)」「 要注意(黄)「 調査済(緑)」のステッカーが貼られることになるが、このとき「危険」と判断されたからといって必ずしもり災証明書では「全壊」と被害認定されるわけではない。混同しやすいので要注意だ。