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西日本豪雨、土砂災害の被害も甚大

2018.08.31

平成30年7月豪雨(西日本豪雨)の発生から約2か月が経過した。

今回の豪雨では、土砂災害の被害もかつてないほど甚大なものだったことが明らかになっている。

1度の災害で年間平均発生数を上回る土砂災害が発生

国土交通省のまとめによると、今回の豪雨では西日本を中心に土砂災害が多発、全国の1道2府28県で土石流等560件、地すべり54件、がけ崩れ1118件、合わせて1732件の土砂災害が発生した(8月21日時点)。

これらの土砂災害に巻き込まれて119人が亡くなり、30人がケガを負った。住家被害は全壊213戸、半壊338戸、一部損壊272戸に上った。

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過去10年(平成20~29年)の土砂災害発生状況を見ると、土砂災害発生件数は年間の平均で1106件、最も多かったのは昨年の1514件だった。つまり、今回の豪雨では、たった1度の災害で普段の1年間の発生件数を大きく上回る土砂災害が発生したことになる。

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今回の豪雨を平成元年以降に発生した主な土砂災害と比べると、発生件数は「平成16年台風第23号」の800件を2倍以上も上回って1位、死者・行方不明者は「平成23年台風第12号」の94人を上回って1位となった。発生件数、人的被害とも平成最大の被害が発生した土砂災害となった。

また、降雨期間は11日間で「平成11年梅雨前線豪雨」と並んで最も多く、被災都道府県は31道府県に上って「平成16年台風第23号」の32府県に次いで2位だった。

都道府県別の発生件数は、広島624件、愛媛県250件、山口178件、高知県124件、兵庫県73件の順に多かった。特に広島県は2位の愛媛県の2.5倍も発生し、発生全体の36%を占めている。同県では、土石流等407件、地すべり1件、がけ崩れ216件が発生した。

広島県で特に多かった土砂災害の被害

広島県は過去にも繰り返し土砂災害の被害を受けている。さきほどの表でも、「平成11年梅雨前線豪雨」では、広島県内で土石流、がけ崩れなどが発生し多くの犠牲者を出した。「平成17年台風第14号」でも同県廿日市市を中心数多くの土砂災害が発生した。「平成26年前線による大雨」は、気象庁が「平成26年8月豪雨」と命名した災害であり、広島市で大規模な土砂災害が発生したことから、メディアなどでは「広島土砂災害」とも呼ばれている。

また、国土交通省の調べによると、広島県内における今回の豪雨災害は、平成26年の災害に比べて10倍の雨が降り、10倍の土砂量が流れ出したと推計されている。

広島県土木局土木整備部砂防課が作成した資料「広島県の砂防」によると、広島県は瀬戸内海を代表する温暖少雨な気候だが、梅雨時の集中豪雨や台風により、多くの土砂災害が発生しているという。特に、土石流危険渓流と急傾斜地崩壊危険箇所の箇所数は広島県が全国1位であるとして、県民に注意を促している。

危険箇所が全国1位であることの要因として、県土の70%を山地が占めて平野部が少ないために山すそまで宅地開発が進んでいること、土砂災害に弱い「マサ土」と呼ばれる花崗岩類が県土の48%を占め、県土の多くが弱い地質でおおわれていることを挙げている。そのうえで、同資料は、県がハード対策、ソフト対策の両面から土砂災害対策に力を入れていることを紹介している。

平成26年にも大規模な土砂災害を経験した広島県だが、今回再び多くの尊い人命が失われる事態になった。無論、経験したことのない豪雨に襲われたことが甚大な被害を招いた最大要因だろうが、その一方で、避難指示など避難を呼びかける情報が発令されながら、避難しなかったり、逃げ遅れたりしたことも被害を広げた一因になっている可能性はある。

実際、広島県内では7月6日、特別警報の対象となった県内の市区町住民217万人に対して避難指示などが発令されたが、実際に避難場所に避難したのは1%に満たない約6000人だったことが県の調査で明らかになっている。報道によると、こうした事実を重く受け止めた県は、避難しなかった理由などを被災者にアンケート調査し、今後の施策に活用するという。

当然のことながら、逃げ遅れたり、避難の呼びかけに応じなかったりといった住民の対応は、なにも広島県に限ったことではない。大規模災害が発生するたびごとに繰り返し指摘されている課題である。

国土交通省も、豪雨があった地域住民などに対し、スマホなどを通して土砂災害への警戒を呼び掛ける取り組みなどを続けている。

具体的には、土砂災害警戒区域などでは豪雨で土砂災害が発生するおそれがあることを指摘。危険なところには近づかない、大雨注意報や警報、土砂災害警戒情報に注意して、早めに避難場所などに避難することなどを呼びかけている。

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災害の発生が近いと告げられた人は、「自分だけは大丈夫だろう、過去に災害に見舞われたことはないのだから」などと都合よく考えがちだ。しかし、これは何の根拠もない思い込みに過ぎない。次に被災するのは自分かもしれないというリアルな想像力をもてるかどうかが、常に問われている。