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気候変動による災害に警鐘~平成30年版「防災白書」

2018.06.17

梅雨のない北海道を除いて、全国すべての地方で梅雨に入った。最も早く梅雨入りしたのは5月7日の奄美地方、最も遅かったのは今月11日の東北北部地方だった。気象庁によると、今年の梅雨入りは平年より1~8日早く、昨年よりも1~23日早いという。

本格的な雨のシーズンを迎えて、警戒したいのが大雨による災害だ。最近は、大規模水害が毎年のように発生しており、「これまでに経験したことのない被害だった」と評される水害も少なくない。

折しも、政府は今月12日、平成30年版「防災白書」を閣議決定。その巻頭特集に、近年深刻化している気象災害の脅威をテーマに取り上げた。

地球温暖化により、気温上昇・降水量増加の傾向

「気象災害の脅威~九州北部豪雨災害等を中心に~」と題された今回の特集。国内外の気候変動の現況を最新のデータを用いてわかりやすく紹介したほか、特徴的な事例として昨年7月に発生した九州北部豪雨災害を取り上げ、被害状況や防災機関の対応などについて説明した。

なかでも、国の内外の気候変動に関する最新の統計データは興味深い。グラフ化された各種データを視覚的に把握することで、気候変動の現況が一目瞭然になる。

1世紀以上にわたって集められた観測データの分析によると、このところ世界の気温は高くなり、降水量は増えている。

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昨年(2017年)の世界の年平均気温は、基準値(1981~2010年の30年平均値)より0.38度高かった。これは1891年の統計開始以降、3番目に高い値だった。

気象庁が作成した年平均気温偏差のグラフを見ると、長期傾向を示す赤線が時間経過に伴って右肩上がりに高くなっていることが確認できる。世界の年平均気温は、100年あたり約0.73度の割合で上昇している。特に1990年代以降は、基準値からの差がプラスになる年が目立って増えている。地球温暖化の確かな証拠と言えそうだ。

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雨はどうだろうか。

2017年の世界の陸域における年降水量は、基準値(1981~2010年の30年平均値)に比較して49ミリ多かった。北半球は54ミリ、南半球は37ミリで、北半球の方が増え方は大きかった。

1900年以降の世界の年降水量偏差のグラフを見ると、5年間の移動平均を示す青線が1950年代および1990年代後半以降で高くなっていることが確認できる。近年は、降水量も多い傾向があるようだ。

日本の年平均気温の上昇は世界平均を上回る

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日本でも傾向は変わらない。

昨年(2017年)の国内の年平均気温は、基準値(1981~2010年の30年平均値)より0.26度高かった。年平均気温偏差をグラフで確認すると、特に1990年代以降、高温となる年が目立って増えている。日本の年平均気温は、100年あたり1.19度の割合で上昇しており、これは先ほどの世界の年平均気温より高い。日本の温暖化の程度は、世界平均を上回って進行している。

20180617_04.jpgのサムネール画像

1898~2016年までの国内51観測地点における年降水量と基準値(1981~2010年の30年平均値)との差はグラフの通り。統計開始から1920年代半ばまで、そして1950年代は多雨期だったことが確認できる。1970年代以降は年ごとの変動が大きいが、2010年代は基準値よりも雨の多い状況が続いている。

白書ではこのほか、1時間降水量50ミリ以上および80ミリ以上の年間発生回数が1976~2016年の期間で増加していること、日降水量400ミリ以上の年間日数もこのところ増加傾向が現れていることも紹介されている。短い時間に強い雨が降る傾向が強まっているということだ。

将来的に国内の温暖化は進み、自然災害への影響も強まるおそれ

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白書は、気候の将来予測についても述べている。

21世紀末(2076~2095年)の年平均気温は、20世紀末(1980~1999年)と比較して、全国平均で4.5度上昇すると見られている。地域別には、北日本日本海側4.8度、北日本太平洋側4.9度、東日本日本海側4.5度、東日本太平洋側4.3度、西日本日本海側4.1度、西日本太平洋側4.1度、沖縄・奄美3.3度と予測されており、高緯度地域ほど大きく上昇するという。

年降水量や季節ごとの3か月降水量に関しては、全国的に明確な変化傾向はみられないものの、日降水量100ミリ以上や200ミリ以上の発生日数は、ほぼ全ての地域・季節で増加する。短時間強雨の発生回数も全ての地域・季節で増加する見通し。一方で、無降水日数も多くの地域・期間で増えるという。

将来的に気温が高くなり、短時間の大雨が増えるとなれば、懸念されるのが自然災害へのさらなる影響だ。

白書は、このような気候動向が、「洪水」「海抜ゼロメートル地帯の浸水」「都市部の地下浸水」「土砂災害」「深層崩壊」「高潮」といった自然現象の力を強めることが予測されると指摘。これらの災害リスクを低減するためには、「気候変動への適応」や「持続可能な開発目標」などを組み合わせた取り組みが求められると指摘している。

温暖化という気候変動の影響は、短時間の強い雨を増加させる恐れがある。「これまで経験したことがない」「数十年に1度」の災害が、頻繁に発生する可能性が高まっているということだろう。

私たちはまず、この現実を正しく受け止め、私たちにできる備えを怠らないよう努める必要がある。今年も梅雨が本格化する。大規模災害は決して他人事ではない――このことを改めて肝に銘じよう。