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地域の消防・防災力の向上目指し、ドローンの活用広がる

2018.04.30

防災分野におけるドローンの活用が注目されている。災害現場を空撮したドローンの迫力ある映像を目にしたことがあるという人も少なくないのではないか。

総務省消防庁はこのほど、消防防災分野におけるドローン活用に関する資料を作成して全国の消防本部に配布した。ドローンの積極的な活用が、地域の消防・防災力の向上に結びつくことを期待しているという。

事件きっかけに法整備進んだドローン

ドローンと聞いてすぐに思い浮かぶのは、4つの回転翼(ローター)を備えた「マルチコプター」の独特な形状だろう。

ドローンとは無人航空機の総称で、回転翼が4つのものは「クアッドコプター」と呼ばれ、6つや8つのものはそれぞれ「ヘキサコプター」「オクトコプター」と呼ばれている。ローターがひとつのヘリコプターもあれば、飛行機のような固定翼タイプのものもある。

日本の航空法では、無人航空機は「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの」と定義されている。国土交通省の説明によると、無人航空機には「いわゆるドローン(マルチコプター)、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプター等」が該当するという。

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思い起こしてみると、ドローンという存在が世間の耳目を集めたのは2015年に続発した事件がきっかけだった。

この年の4月、放射性物質入りの容器が取り付けられたドローンが首相官邸の屋上に落下しているのが発見された。翌5月には、東京浅草の祭でドローンを飛ばすとインターネットで予告した15歳の少年が、祭の運営を妨げたとして威力業務妨害の容疑で逮捕された。

いずれも、まともな法規制がないまま、事実上ドローンが野放しになっている国内の現状を浮き彫りにする事件だった。首相官邸への侵入に衝撃を受けたのだろう。政府は法整備を急ぎ、同年9月には改正航空法が成立、同12月に施行された。

改正航空法では、空港等の周辺や人口が集中する地区の上空をドローン等の飛行禁止空域と指定するともに、「日中に飛行させる」など6項目の飛行に関するルールを定めた。

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全国の1割の消防本部がすでにドローンを保有

総務省が作成した資料「ドローンの現状について」をみると、国内のドローン関連市場の規模は、2015年の16億円から2020年には186億円、2022年には406億円へと拡大すると予測されている。ドローンの用途も多様化するといい、2015年には農薬散布が全体の70%を占めていたものが、同年以降は整備・点検、測量等の市場が大きく伸び、2018年には農薬散布の需要を上回る見込みという。

災害対策などの防災分野においてもドローンの活用は確実に増えている。冒頭触れた総務省消防庁の資料「消防防災分野における無人航空機の活用の手引き」によると、ドローンは、平成28年熊本地震では行方不明者の捜索、平成29年7月九州北部豪雨では道路閉塞状況や流木の状況確認、平成28年12月糸魚川市大規模火災では鎮火後の被害状況確認などに活用されたという。

災害現場では、人が立ち入ることが難しかったり、危険だったりする場面にしばしば直面するだろう。状況が困難であれば困難であるほど、ドローンが投入され、その活躍が期待される場面も増えてくるはずだ。

同手引きでは、全国の消防本部に対して実施したドローンに関するアンケート調査の結果も紹介されている。

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それによると、全国の732の消防本部のうち、すでにドローンを「保有している」のは70本部(10%)あり、延べ100機を保有していることがわかった。また、「保有予定がある」は32本部(4%)、「保有を検討している」が168本部(23%)に上り、全体の約1/4にあたる27%がドローンの保有に前向きだった。

保有していると回答した70本部に、ドローンの活用目的を聞いたところ、「現場状況等の撮影」との回答が最も多く、65本部(93%)に上った。そのほか、「ガス濃度等の測定」7本部(10%)、「物資、資器材等の搬送」9本部(13%)だった。「その他」の具体例としては、「水難救助現場におけるリードロープの展張」「行方不明者等の捜索活動」「救助隊の誘導」「サーモカメラによる人命検索」「残火処理時等の赤外線カメラの使用」「防災情報の伝達」などがあがった。

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一般的に、ドローンは高性能なカメラを搭載することで知られているが、現場では、高所からのカメラ機能を用いた状況把握等だけでなく、モノの搬送やガス濃度の測定といった危険作業への活用も想定しているわけだ。

保有するドローンの活用実績があると回答したのは28本部(40%)。保有目的で示された通り、捜索活動、消火活動、救助活動などに幅広く活用していた。活用実績のある本部にドローン活用の課題を聞いたところ、悪天候のなかでは使用できない、バッテリー容量の制約から活動時間が制限されるといった問題が指摘された。

同手引きによると、総務省消防庁は今年、雨天時等にも運用可能な情報収集活動ドローンを全国の主要消防本部に配備するほか、ドローンを活用した消防団の教育訓練などの事業を予定しているという。新しい技術を用いた消防の取り組みに要注目だ。