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ペットの災害対策ガイドラインが改訂(1)

2018.03.21

東日本大震災の発生から7年が過ぎた。節目に際し、わが家の災害対策を、あらためて見直そうと思い立つ人も多いだろう。

防災のポイントは、各家庭の事情に応じて備えること。犬や猫などのペットがいる家庭では、ペットをいかに災害から守るかの対策も欠かせない。

環境省はこのほど、災害発生時のペットの避難などに関する注意点をとりまとめた「人とペットの災害対策ガイドライン」を公表した。ペットを飼っている人には大いに参考になるガイドラインだ。

東日本大震災、熊本地震の経験を踏まえたガイドライン

大規模な地震と津波、それに伴う未曾有の原発事故が発生した東日本大震災。「想定外」の広域・複合災害は、被災地を混乱に陥れ、飼い主とペットをほんろうした。

飼い主は突然の避難を強いられた。自宅に取り残されたり、飼い主とはぐれたりした飼い犬や飼い猫も多かった。原発事故で立ち入りが制限された区域内では、無人のまちをさまよう、たくさんのペットの姿があった。飼い主とペットが一緒に避難できた場合でも、不特定多数の被災者が共同生活をおくる避難所では、ペットの取り扱いをめぐってさまざまなトラブルが発生した。

東日本大震災はさまざまな教訓を私たちの社会に与えたが、ペットの災害対策もそのひとつになった。環境省は平成25年6月、飼い主が責任をもってペットと「同行避難」することを基本に据えた「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を策定、地域での活用を呼び掛けた。

ガイドライン策定後に発生した大規模な地震災害が平成28年の熊本地震だ。

ガイドラインの提唱通りというべきか、熊本地震では実際、多くの被災者がペットと同行避難した。しかし、避難所に避難者があふれ、避難が長期化したことなど熊本地震の特異な特徴が影響したのだろう。避難所におけるペットの受け入れなどに関しては、改めてさまざまな問題が指摘されることになった。

このような熊本地震の経験も踏まえ、環境省はガイドラインを改訂することとした。これが今回、タイトルも一新して公表された新ガイドラインだ。

警戒区域等に多数のペットが残されたのが東日本大震災の特徴

東日本大震災と熊本地震――。ガイドラインの策定、改定に関わるふたつの大規模災害では、具体的にどのような問題があったのだろうか。

まずは東日本大震災におけるペットの被災状況から。

環境省の「東日本大震災における被災動物対応記録集」(平成25年6月)が、「被災地のペットの被災状況」について記している。それによると、狂犬病予防法に基づいて登録が義務付けられている犬については一定の被災報告があり、震災によって死亡した犬は「青森県で少なくとも31頭」「岩手県で602頭」「福島県で約2,500頭」とされている(その他は不明)。一方、登録制度がない猫については、どの自治体でも震災以前の飼育状況や震災による被災状況はほとんど分かっていないという。

同記録集はまた、原発事故によって福島県で警戒区域が設定され、住民がペットを「自宅に留置」、あるいは「屋外に放ったり係留したり」したまま避難せざるをえない状況になったことが、東日本大震災の大きな特徴だったと指摘。これらのペットは行政等によって保護活動が実施されたものの、正確な被災頭数を把握することは困難だったと述べている。参考値として、福島県内(郡山市、いわき市を除く)の記録から「放浪動物・負傷動物の保護頭数」をみると、平成23年3月から1年半後の24年9月までの間に、行政が警戒区域等から保護収容したのは犬637頭、猫462頭に上っている。

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「避難所にペットを入れてほしくない」が約35%

避難者が避難所に押し寄せ、避難生活が長期化した熊本地震では、避難所におけるペットの扱いが大きな問題になった。

内閣府の「平成28年度避難所における被災者支援に関する事例等報告書」(平成29年4月)によると、ペットを連れた飼い主が、乳幼児のそばを平気で散歩したり、排せつ物を放置したりするマナー違反があってストレスを感じたという声や、動物アレルギーをもつ人との間でトラブルになったという事例が報告されているという。

熊本地震の避難者に、避難所施設内にペットを連れて避難することについて聞いたところ、「避難所内には入れてほしくない」との回答は35.5%、「問題には感じるが仕方がない」が45.9%だった。「問題ないと思う」は14.1%に過ぎず、多くの被災者は共同生活の場にペットを連れ込むことに抵抗を感じたようだ。

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避難所内にペットを入れてほしくないと思う理由を聞いたところ、半数以上の人が「臭いが気になる」「泣き声や声が気になる」「ペットアレルギーなどが心配」と衛生面や生活面での不都合を訴えたほか、「怖い」「動物が嫌い」といったペットに対する拒絶反応を訴える人も2割程度あった。

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大規模災害は、ペットにも大きな被害をもたらす。直接的にペットの命が失われるだけでなく、その後の避難生活においてもさまざまな困難を抱えることになる。

以上、ペットの災害対策の必要性を再確認した。次回は、改定されたガイドラインに盛り込まれた対策のポイントを確認していこう。