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草津白根山が突然の噴火

2018.01.31

草津白根山の前触れのない噴火、列島を襲う異常な低温・大雪――。今年も国内では、人々の予測を超えた、「想定外」のさまざまな災害が続発するのだろうか。年の初めから、そう思わせる災害事象が発生している。

噴石がスキー場に落下、死傷者が発生

草津白根山が1月23日午前9時59分ごろ、噴火した。気象庁は同11時5分、火山周辺警報を発表し、噴火警戒レベルをこれまでの1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に、同11時50分にはさらに噴火警戒レベル3(入山規制)に引き上げた。

気象庁によると、午前9時59分から、振幅の大きな火山性微動が発生し、約8分間継続した。噴火したのは本白根山の鏡池付近。東京工業大学の観測では、同池から1キロ以上飛散する噴石が確認されたという。

内閣府や総務省消防庁の発表によると、鏡池から数百メートルの距離にある群馬県草津町内のスキー場に噴石が降下した。訓練中だった陸上自衛隊員1人が噴石の直撃を受けて死亡、その他の隊員やスキー客など11人が重軽傷を負った。スキー場山頂付近にスキー客81人が取り残されたが、午後5時過ぎまでには全員が救助された。

降灰聞き取り調査の結果、本白根山から北東約8キロの群馬県中之条町で降灰が確認された。噴石等による住家への被害は確認されていない。噴出物調査の結果、今回の噴火は水蒸気噴火である可能性が高いという。

想定外だった本白根山の噴火

草津白根山は、群馬県と長野県の県境にある。白根山(標高2160メートル)、本白根山(同2171メートル)、逢ノ峰(同2109メートル)などの山々の総称だ。日本百名山のひとつに数えられ、登山客や冬のスキー客も多い。周辺には草津温泉、万座温泉があり、湯治客で常ににぎわっている。

気象庁の資料などによると、山頂付近には複数の火口が存在する。「湯釜」と呼ばれる最大の火口湖の直径は約300メートル、水深は約30メートル。火山活動による硫黄成分が湖水に溶け出し、pH値は1程度と世界有数の強酸性の湖という。魚は生息せず、白濁した美しいエメラルドグリーンの湖水の色で知られている。

近年の噴火では、水蒸気爆発によって火山灰や噴石を噴出してきた。1983年の湯釜の水蒸気爆発では、人の頭大の噴石を約600メートルの範囲に放出、降灰は約60キロ離れた渋川にまで達した。1970年代には、火山ガスによる死亡事故が発生している。

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こうした近年の噴火は白根山を中心に発生していた。気象庁などが観測を強化し、次に噴火が起こるのではないかと警戒していたのも湯釜など白根山頂の火口周辺だった(上の地図でいえば北側)。ところが、今回噴火したのは、有史以降の噴火活動が知られていない本白根山の鏡池周辺。鏡池は白根山山頂からは南側に2キロほど離れており、監視体制も白根山より手薄だった。本白根山の噴火として知られているのは約3000年前のもので、その際は溶岩流が発生し、南側約6キロの地点にまで到達したと考えられている。

近年活発な活動を示していた白根山山頂付近ではなく、3000年も噴火がなかった本白根山山頂で噴火したことは専門家にとっても想定外の出来事だったという。また、今回の噴火も、御嶽山の場合と同様に、前兆をとらえるのが困難な水蒸気爆発だった。火山活動を監視することの難しさが改めて浮き彫りになった。

引き続き同程度の噴火が発生する可能性

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今回の噴火を受けて、気象庁は25日、本白根山鏡池付近を監視強化することを発表。地震計など臨時の火山観測機器を増設し、監視カメラの映像を気象庁のホームページで公開を始めた。

噴火から1週間が経過したが、火山活動は予断を許さない状態が続いている。

気象庁が発表した31日午前10時段階の「火山の状況に関する解説情報」では、本白根山では、今後も23日と同程度の噴火が発生する可能性があるとして、以下の事項について警戒を呼びかけている。

  • ●本白根山鏡池付近から概ね2キロの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒が必要
  • ●噴火時には、風下側では火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るため注意。爆発的噴火に伴う大きな空振によって、窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意
  • ●引き続き、白根山湯釜火口から概ね500メートルの範囲ではごく小規模な火山灰等の噴出に注意
  • ●ところどころで火山ガスの噴出が見られる。周辺のくぼ地や谷地形などでは高濃度の火山ガスが滞留することがあるので注意

30日には、宮城・山形県境の蔵王山でも火山性微動が観測され、噴火警戒レベルが1から2に引き上げられた。小規模な噴火の可能性があるという。

御嶽山でもそうだったが、火山噴火は予測が極めて難しい。気象庁を始めとする専門機関の努力は当然のこととして、私たち住民も、わが身を守るために、火山防災について関心をもつ必要がある。火山周辺に出かける際には、最低限、事前に火山活動に関する情報を確認するなどしておきたい。