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盛りだくさんの巻頭特集―平成29年版消防白書

2017.12.30

総務省消防庁は19日、「平成29年版消防白書」を公表した。

消防白書は毎回、前年中の(今回であれば平成28年中)の火災や救急の現況などが紹介されることで注目されるが、今回は特集記事が特に充実していた。

今年の白書、冒頭特集が10本も

消防白書が暮れも押し詰まったこの時期に公表されるのは毎年のことだ。関係者にとっては、いわば年の瀬の風物詩ともいえる。メディアはさっそく、平成28年中の救急車の出動件数が過去最多だったことなどを伝えている。もちろん、興味深い内容なので、本ブログでも取り上げようと思ったが、白書の目次を見て今回は軌道修正することにした。

そう、目次を見て、驚いた。特集記事が10本もラインナップされている。ページ数を確認した。61ページもある。

消防白書は毎年読んでいるが、これほどの特集本数は覚えがない。これまではどうだったのか、ちょっと過去の目次を見比べてみた。

昨年の平成28年版、特集は「熊本地震の被害と対応」など5本、ページ数は37ページだった。平成27年版は、特集2本、トピックス4本というイレギュラーな構成で47ページ、平成26年版は特集3本、34ページだった。やはり今回の29年版は、特集のボリュームが圧倒的に多い。

10本のタイトルラインナップを並べてみる。

「平成29年7月九州北部豪雨の被害と対応」「糸魚川市大規模火災を踏まえた今後の消防のあり方」「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた対応」「消防の連携・協力の推進 ?第28次消防審議会答申を踏まえ?」「消防団を中核とした地域防災力の充実強化」「女性消防吏員の更なる活躍の推進」「消防本部におけるハラスメント等への対応策」「救急体制の充実」「災害時等における高齢者、障害者及び外国人の方々への情報支援策の充実強化」「全国瞬時警報システム(Jアラート)による情報伝達における課題と対応」――。

なるほど、いずれも消防庁にとって重要な対応であり、取り組みだった。平成28年中は、消防庁にとっては、大変多忙な一年だったともいえるのだろう。

最初の特集は、九州北部豪雨の消防機関の対応等を紹介

災害対応について取り上げた冒頭の特集2本を読んでみる。

特集のトップは、今年7月の九州北部豪雨の対応について取り上げた。被害の概要等を紹介した後、消防機関の対応について詳述しており、発災直後の緊迫した様子が伝わってくる。

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福岡県では、被害が甚大だった朝倉市、東峰村からの119番通報が相次ぎ、消防指令センターは、すべての通報には対応できない状態が続いた。この地域を管轄する甘木・朝倉消防本部。発災当初は、河川のはん濫や土砂災害による道路の寸断で、災害現場に近づくことができず、住民の救助や避難誘導は困難を極めた。

地元消防の苦境を県内外の消防機関が支援した。大分、福岡の両県で、協定に基づく消防応援が実施された。全国各地から緊急消防援助隊も駆け付けた。

大分県では、全国の消防が保有する各種機材が活躍した。中津市や日田市では、土砂災害などで孤立した地域の捜索・救助に水陸両方バギーが使われた。愛知県大隊の全地形対応車は、土砂が堆積した道路障害を乗り越え、孤立地域に侵入した。

この全地形対応車は、愛知県の岡崎市消防本部に全国で唯一配備されている「レッドサラマンダー」。無限軌道式で、60センチの段差を乗り越え、1.2メートルの冠水道路を走行できるという。日田市の後は、朝倉市にも投入され、捜索活動などに威力を発揮した。

東峰村では、内閣府の革新的研究開発推進プログラムで研究開発されているドローンが、孤立地域における安否確認作業等に用いられた。ドローンで収集した被災地の映像は、消防庁をはじめとした関係機関で共有、被害状況の把握に役立った。

特集は、常備消防の活躍とともに、地元消防団の地道な活動も取り上げた。福岡、大分の両県内では、各消防団が、住民を守る幅広い活動に従事した。彼らの活動は危険と隣り合わせだ。日田市では、巡回活動中の消防団員1人ががけ崩れに巻き込まれて亡くなった。消防団員数は全国的に減少するなか、団員の活動の安全をいかに担保していくのか。私たちに突き付けられた大きな課題だ。

糸魚川市大規模火災を踏まえた消防のあり方を報告

特集の2番目は、平成28年12月に発生した新潟県糸魚川市の大規模火災の記事だ。ラーメン店の大型コンロから出火した火は瞬く間に燃え広がり、約3万平米、147棟を焼いた。昭和51年の酒田市における大火災以来、40年ぶりの市街地大火災だった。

一帯は、古い木造建築物の密集地だった。折からの強風で大量の火の粉や燃えさしが飛び広がり、同時多発的に延焼が拡大、多くの部隊が転戦を余儀なくされるなど消火活動は困難を極めたという。

消防庁は、この火災を受けた今後の消防のあり方を検討、木造建築物密集地における強風下の火災では、どこでも同様の大火になり得るとして、必要な対策を全国の消防機関に通知している。

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