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九州北部豪雨を教訓にした検討会が結果を取りまとめ

2017.12.19

今年7月に発生した「平成29年7月九州北部豪雨」。観測史上例のないような豪雨が北部九州を襲い、死者・行方不明者は41人に上った。

同豪雨を教訓にした大雨時の住民の避難などについて検討していた内閣府は8日、検討結果を取りまとめて公表した。同日付で全国の都道府県にも通知し、取りまとめに盛り込まれた内容を具体的に推進するよう要請した。

九州北部豪雨を踏まえた避難に関する検討会を設置

九州北部豪雨災害の発生を受け、内閣府は専門家や関係省庁でつくる「平成29年7月九州北部豪雨災害を踏まえた避難に関する検討会」を今年10月に開催した。被災地の住民や自治体等を対象にした調査やヒアリングで得られた情報をもとに、住民の避難行動や市町村の防災体制など、今後求められる対応について検討を進めた。

検討の結果、取りまとめでは、今後の豪雨災害への対応を「地域の防災力」「情報の提供・収集」「避難勧告等の発令・伝達」「防災体制」の4つの観点から整理。水害・土砂災害からの防災・減災対策を加速化するため、関係省庁が連携してこれらの観点に基づいた取り組みを進めていく方針を打ち出した。

現地調査から明らかになった推進すべき点、教訓とすべき点

検討会が現地調査・ヒアリングを実施したのは9月下旬。福岡県朝倉市、同県東峰村、大分県日田市を訪れ、地元自治体や住民に被害状況や地域における防災・減災のための取り組みなどについて聞いた。

現地調査・ヒアリングの結果、明らかになったのは以下のようなことだ。

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注目すべきは、今回の被災地が、「平成24年7月九州北部豪雨」でも災害を経験していたことだ。このため、いずれの自治体でも、行政と地域住民が一体となって住民の防災意識の向上に取り組んできた。

例えば、朝倉市では、行政と住民が協力して「自主防災マップ」をすべての地区で作製し、地域の危険個所などを確認している。東峰村では、避難行動要支援者名簿を平時から地域の支援者に提供し、名簿をもとに実効性のある支援計画を作成している。日田市でも、自主防災組織ごとにハザードマップを作製したり、要支援者への支援方法を決めたりしているという。

こうした取り組みを通じた防災意識の高まりは、今回の災害でも被害の軽減に役立ったようだ。住民に対するヒアリングでは、近所の人に避難を促す声がけをしたことが、実際の避難に結びついた例などが確認されている。

取りまとめでは、これらは「住民の迅速な避難行動を促すための自助・共助の取り組みの効果的な事例」であると評価、広く周知して、この種の取り組みを推進すべきであると提言した。

その一方で、教訓とすべき点も多かった。

避難を呼びかける情報が届いていたにもかかわらず、避難行動に結びつかず被災した事例も見られた。

前回の豪雨災害の経験から自宅は安全だと判断してしまったり、避難しようとしたときにはすでに河川のはん濫が始まっていたりしたことが理由であると考えられた。

前回の被災経験に「正」と「負」の側面

現地調査を踏まえて打ち出された具体策が、前述の通り、「地域の防災力」「情報の提供・収集」「避難勧告等の発令・伝達」「防災体制」の4つだ。

地域の防災力では、住民自らが水害・土砂災害から身を守るための手引書を作成したり、住民・行政・専門家等がワークショップ等を通じて地区防災計画を作成したりすることの有効性が強調された。

情報の提供・収集については、山地部の中小河川では、行政・住民ともに水害への理解が不足している実態があることから、水位計や監視カメラの設置促進、気象台や河川管理者からの助言であるホットラインの一層の促進などが示された。

洪水予報河川・推移周知河川以外の河川についても避難勧告等の発令基準を策定することが重要であるなどと言及されたほか、災害対策本部機能の一層の強化にも引き続き取り組んでいくことも明記された。

九州北部豪雨の被災地では、前回の豪雨災害の教訓が生かされた部分もあった。被災地では自主防災マップを作製し、避難訓練を繰り返していた。今回、確かに甚大な被害が生じたが、教訓が生かされていなければ、さらに被害は大きくなった恐れがあったということだ。

その半面、前回の経験に引きずられて被害に巻き込まれた例があった可能性も示された。現地調査のまとめでは、「平成24年7月九州北部豪雨による被災経験が避難行動の要否の判断基準となり避難行動をとらなかった可能性も考えられる」と記された。「前回も大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」などといった判断があったのではないかということだ。

被災経験の「正」と「負」の側面とでも形容すべきだろうか。経験に学ぶのは大事だが、経験だけにとらわれるのもよくない――。防災は、つくづく難しい。