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台風21号と黒潮大蛇行

2017.10.31

先週末、先々週末と、日本列島は2週続けて台風の影響を受けた。

28日から30日にかけては台風22号が列島の太平洋側に沿って進行し、九州から東日本までの広い地域に大雨と強風をもたらした。

その前の週は超大型の台風21号が本州に上陸、22日の衆議院議員総選挙投票日を直撃した。

各地で記録的な大雨を降らせた台風21号

被害が大きかったのは台風21号だ。

16日に西太平洋のカロリン諸島で発生した台風21号は、21日から22日にかけて沖縄の東の海上を発達しながら北上した。21日午前3時には、中心気圧925ヘクトパスカル、最大風速50メートルを観測して「非常に強い」台風に発達、同日午後3時には風速15メートル以上の強風域が半径950キロ(台風の南側)に拡大して「超大型」になった。23日に入って中心気圧と最大風速が若干弱まったものの、「超大型」の勢力を保ちながら同日午前3時ごろ静岡県の御前崎付近に上陸した。台風はこの後、広い強風域などを伴ったまま北東に進み、同日午後3時に北海道の南の海上で温帯低気圧に変わった。

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台風に伴う活発な雨雲と本州付近に停滞した前線の影響により、西日本から東日本、東北にかけての広い範囲で記録的な大雨が降った。また、沖縄から北海道までの全国各地で風速20メートルを超える非常に強い風を観測、一部では風速30メートルを超える猛烈な風が吹いた。

人的被害、住家被害も大きかった。総務省消防庁の30日現在のまとめによると、この台風による死者は全国で8人、重軽傷者は200人を超えた。住家の全壊は5棟、半壊は13棟、一部損壊は515棟だった。床上浸水は2,390棟、床下浸水は3,186棟に上った。

超大型の台風が上陸するのは初めて

台風21号にはいくつかの特徴があった。

まずは、その大きさだ。台風の勢力を示す目安のひとつに「台風の大きさ」があり、風速15メートル以上の強風域の半径が「500キロ以上~800キロ未満」の場合は「大型(大きい)」、半径「800キロ以上」の場合は「超大型(非常に大きい)」と区分されている。

気象庁の観測によると、今回の台風21号の強風域半径の最大は、東側1300キロ、西側750キロなどだった。直径では優に2000キロを超え、本州全域を覆うほどの巨大さだった。23日にメディア各社が伝えたところによると、超大型の台風が日本に上陸するのは気象庁が現在のような解析を始めた1991年以降初めてのことという。

上陸したのが秋も深まった10月下旬と遅かったことも、顕著な特徴だ。

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気象庁が作成した「上陸日時が遅い台風」のリストは上記の通り。今回の台風21号の「10月23日」は、これまでで3番目に遅い上陸だったことになる。

黒潮の大蛇行が高潮被害を拡大する恐れ

もうひとつ、今回の台風21号との関連で注目された話題がある。

12年ぶりに現象が確認された黒潮の大蛇行だ。

黒潮は東シナ海を北上したあと太平洋に入って日本列島の南側を流れる世界有数の海流だが、今年8月下旬から紀伊半島沖で流路を大きく南向きに変える状態が続いているという。

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気象庁サイトで毎日更新されている黒潮の流れを示す海流図を見ると、黒潮が紀伊半島沖から大きく南側に蛇行したあと、伊豆半島付近に戻っている様子が確認できる。

気象庁の9月29日付の報道発表資料によると、黒潮の大蛇行が確認されたのは観測が始まった1965年以降6回目で、前回の2005年8月以来12年ぶりのことだ。

大蛇行が発生すると、漁場の位置が変わって漁業に影響を及ぼす可能性があるほか、沿岸の潮位が上昇して高潮被害が発生しやすくなる恐れがある。実際、1979年10月の大蛇行中に台風が通過した際、東海地方で高潮被害が発生したという。

このため気象庁は、「台風や低気圧が接近した場合はさらに潮位が高くなる。一層の注意が必要だ」と警戒を呼び掛けていたが、これが的中した。台風21号による高潮や高波の影響で、神奈川県や静岡県の沿岸では、海岸近くの住宅が浸水したり、ヨットやボートが横倒しになって壊れたりする被害が発生した。

死者・行方不明者5000人余を数え、台風災害としては最悪の人的被害があった伊勢湾台風(1959年)では高潮によって多くの犠牲者が出た。高潮は、津波や地震と並んで多くの人的被害が発生しやすい災害であることを忘れてはいけない。

今回の大蛇行について、気象庁は今後少なくとも1か月は継続すると見ている。過去5回の大蛇行は、いずれも1年を超えて継続しているし、温暖化の影響で台風の強大化も指摘されているところだ。この後も台風が日本に接近した場合には、沿岸での高潮に十分な警戒が必要だ。