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東海地震の防災対応を見直しへ

2017.09.30

政府の中央防災会議は今月26日、地震予知を前提にしてきた東海地震の対応を大きく見直すことを決めた。同会議の有識者会議がこの日取りまとめた報告書「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応のあり方について」で、「東海地震の予知はできず、対応の見直しが必要」と提言したことを受けた。

東海地震に限って定められていた「警戒宣言」という対応は事実上なくなり、11月からは南海トラフ全域を対象とした警戒情報の運用を始めるという。

8月に「地震の発生を予測することはできない」と明言

地震予知はできるのか、できないのか――。日本の地震防災においても、このことは長らく論争の種であり続けた。

地震国・日本は地震研究も盛んだが、地震の発生を事前に予知した経験はない。現在の地震学は、地震の発生メカニズムを説明することはできるが、「いつ、どこで、どのくらいの地震が発生する」と予知できる段階にはない。将来予知できるようになるかどうかもわからない。

このように地震の予知は極めて困難だが、駿河トラフを震源としてマグニチュード8クラスで発生するとされる想定東海地震に関してだけは、充実した観測体制によって予知に成功する可能性があるとされてきた。

地震予知について、有識者会議が設けた調査部会は今年8月、「地震の発生時期や場所、規模を確度高く予測する手法はなく、地震の予測はできない」と明言した。東海地域に限定しても同様であるとして、東海地震の予知もできないとした。これにより、地震予知の可不可に関する長年の論争に、ひとつの区切りがついた。

大震法の東海地震対応は地震予知が前提

東海地震をめぐるこれまでの動きは、ざっと以下の通りだ。

1976年(昭和51年)8月の地震予知連絡会で発表された「駿河湾地震説」は、駿河湾を震源とする大規模地震がいつ発生してもおかしくないとするものだった。

根拠のひとつになったのは、大規模地震が同じ場所で繰り返し発生しているという歴史的な事実だ。

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日本の南の海底に伸びる南海トラフでも、マグニチュード8クラスの巨大地震がおおむね100?200年間隔で繰り返し発生していることが分かってきていた。前回の東南海地震(1944年)・南海地震(1946 年)の際には、南海トラフ沿いの岩盤だけが破壊されて駿河トラフ沿いは破壊されずに残ったことから、駿河トラフ周辺の岩盤は長年にわたってひずみを蓄え続けた状態にあるとも考えられた。この説は、多くの地震学者の支持を集めた。

こうした時代の空気のなかで1978年(昭和53年)、大規模地震対策特別措置法(大震法)が制定され、地震が予知された場合の対応が定められた。

大震法に基づいて、東海地震が発生した際に著しい被害が生じる恐れがある地域は「地震防災対策強化地域」に指定された。「東海地震予知情報」が発表された場合には内閣総理大臣が「警戒宣言」を発令、あらかじめ定められた防災対応が実施されることも定められた。

警戒宣言が発令されたら、強化地域内では鉄道が原則として運行休止になったり、学校は状況に応じて児童・生徒を保護者に引き渡したりする対応がとられることになった。

「南海トラフ地震に関連する情報」を新設

報告書は前述の通り、地震の予知はできないから、大震法に基づく現行の応急対策は改める必要があると提言した。これにより予知を前提とした警戒宣言は事実上出せないことになったが、代わりに新たな情報発信の仕組みが導入されることになった。

気象庁は、新たな防災対応が決まるまでの当面の間、南海トラフ沿いで異常な情報が観測された場合に「南海トラフ地震に関連する情報」を発表することを決め、今年11月1日から運用を始めることを公表した。

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あわせて、同情報の発表にあたって有識者が助言する「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開催することも決めた。評価検討会は、従来の東海地域を対象とした地震防災対策強化地域判定会と一体となって検討を行うという。

「南海トラフ地震に関連する情報(臨時)」は、南海トラフ沿いでマグニチュード7以上の地震が発生したなど異常な現象が観測され、それが大規模地震と関連するかどうかを調査開始した場合などに発表される。

同情報が発表された際は、国は関係省庁の職員を招集して「関係省庁災害警戒会議」を開催、国民に対しては家具の固定などの今後の備えについて呼びかけるという。

警戒宣言のような大掛かりな事前対応は取られないものの、これまで整備を進めてきた観測体制によってとらえられた情報については、存分に防災対応に活用するということだ。政府は今後、静岡、高知両県と名古屋市など中部経済界をモデル地区に指定し、住民の事前避難や情報発信などの課題を探るという。私たち住民も、東海地震の防災対応の変更については、引き続き注視が必要だ。