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防災の日、デジタルアーカイブで震災を学ぼう

2017.08.31

9月1日は「防災の日」。できれば、防災について家族で話し合ったり、備蓄品や室内の安全対策を確認したりする日にしたいものだ。

災害について思いを巡らせるよい機会でもある。最近は、インターネットのデジタルアーカイブという便利な「電子図書館」があり、災害をテーマにしたアーカイブも多い。デジタルアーカイブを巡回して災害の実相に触れることも、立派な防災への向き合い方になるだろう。

熊本県が運営する「熊本地震デジタルアーカイブ」

百聞は一見に如かず。手始めに、熊本県が今年4月19日に公開を始めた「熊本地震デジタルアーカイブ」を訪れてみてはいかがだろうか。

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同サイトは、震度7を2度観測するなど甚大な被害があった熊本地震について、「経験や教訓を記録し、被害の実情や復旧・復興の過程で得たノウハウ等を永く後世にのこすこと」が目的だ。

熊本地震に関する写真や映像、文書といった資料が閲覧でき、これらの資料は行政機関だけでなく、企業やNPOなどの団体、県民から幅広く提供されたものだという。公開時の資料数は約1,000点だったが、その後も新しい資料が次々と追加されている。

トップページには「地図検索」「時系列検索」「定点撮影」という3つの検索手段が紹介されている。実際に使ってみよう。

地図検索では、地図上から地域を指定して検索ボタンを押すことで、当該地域に関わる被害写真などの資料が一覧表示される。

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益城町役場周辺の地域を指定して検索すると、倒壊した木造住宅など、たくさんの被害写真がサムネイル表示された。

これらの写真は、撮影場所ごとに地図表示にしたり、撮影時間順にタイムライン表示にしたりすることができる。

「定点撮影」のコーナーでは、文化財被害、自然被害、住家被害、活断層、公共施設被害の5つのカテゴリーを設定して計20か所をピックアップして、熊本地震を挟んだ変貌のようすを紹介している。

熊本城であれば、被災前の美しい姿、被災後の痛ましい姿、復旧工事が行われている現在の姿を時系列で確認することができた。

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デジタルデータで記録された数多くの熊本地震に関する資料を、さまざまな切り口で並べ替え、表示することができる。同サイトは、このことによって熊本地震の被害を多面的に伝えようとしている。

「熊本地震の状況をこのサイトで感じていただき、家庭や地域、企業等の防災対策の充実、強化のため、ご覧いただければと思います」。

熊本県は、サイトを訪れる利用者に、こう呼びかけている。

「デジタル化された知的財産をインターネットで共有する仕組み」

デジタルアーカイブを直訳すると、「コンピュータで扱える形式のデータの書庫、記録保管所」となるだろうか。

総務省の「デジタルアーカイブの構築・連携のためのガイドライン」の定義によると、デジタルアーカイブとは「図書・出版物、公文書、美術品・博物品・歴史資料等公共的な知的資産をデジタル化し、インターネット上で電子情報として共有・利用できる仕組み」であるという。

パソコンやスマートフォンなどの情報端末やインターネットなどの通信環境が飛躍的に高度化し、普及したことがデジタルアーカイブの出現を可能にした。実際に図書館や博物館・美術館に出向くことなく、自宅などにいながらにして、インターネットを介してさまざまな文書や絵画、写真などを閲覧できるようになった。

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災害関連のデジタルアーカイブとしては、国立国会図書館と総務省が開発、東日本大震災の発生から2年後の2013年3月に公開された「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ」(愛称:ひなぎく)が知られている。

「ひなぎく」は、東日本大震災に関する音声・動画、写真、文書などの資料を公開している複数のデジタルアーカイブを一元的に検索・活用できるポータルサイトだ。今年2月現在、44のデータベースから約347万件のコンテンツが検索可能という(「政府広報オンライン」平成29年3月10日付記事より)。

検索対象となるデータベースは東日本大震災の記録が中心だが、阪神・淡路大震災のデジタルアーカイブである神戸大学の「震災文庫」などの災害資料も含まれている。

関東大震災の写真や映像を公開しているデジタルアーカイブもある

防災の日が9月1日になったのは、関東大震災に由来している。関東大震災が発生したのは1923年(大正12年)だからすでに1世紀近い年月が経っているが、関東大震災に関するデジタルアーカイブを利用することで被害をリアルに感じることができる。

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東京都立図書館の「Tokyoアーカイブ」には、「江戸・東京の災害記録」のコーナーがあり、安政の大地震や関東大震災に関する資料を検索、閲覧できる。

関東大震災に関しては、当時の東京府・東京市が作成した行政資料や、絵葉書や写真帳などが公開されている。多数の写真資料を閲覧することができるため、関東大震災の火災の凄まじさなどを視覚的に確認できるだろう。

京都大学デジタルアーカイブシステムのコレクションには、関東大震災の貴重な映像記録がある。関東大震災発生直後の都心の様子を大阪毎日新聞社が映画フィルムで撮影、その後京都帝国大学へ寄贈されたものらしい。2013年10月に京都大学の書庫から発見され、同大学のデジタルアーカイブで2014年7月から公開されている。

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燃えさかる火炎、路上にあふれた被災者など、鮮明な映像で関東大震災が記録されていることに驚かされる。これらの資料から関東大震災を体感すれば、来るべき首都直下地震等への備えの覚悟も新たになるはずだ。