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事業継続計画(BCP)の有用性が再確認された熊本地震

2017.07.31

今回は、前々回に続いて平成29年版「防災白書」の話題を紹介する。白書の巻頭特集で取り上げられた熊本地震における企業の事業継続の取り組みに関する話題だ。

内閣府は今年3月、被災地となった熊本県内の企業2,500社と、これら県内企業と取引のある全国の企業2,500社を対象としてアンケート調査を実施、それぞれ1,255社、756社から回答を得た。

白書に取り上げられているのは、この調査結果の概要版だ。調査全体の詳細に関しては、「企業の事業継続に関する熊本地震の影響調査報告書」として取りまとめられ、内閣府防災担当のサイトで別途公開されている。

熊本地震で一時的に大きく落ち込んだ県内経済

白書はまず、熊本地震が県内経済に与えた影響について概観している。

熊本県内における百貨店・スーパー販売額の対前年同月比の推移をみると、地震が発生した昨年4月は3割以上落ち込んだが、6月以降は-1.6%から5.8%の間で推移、ほぼ全国並みとなっている。

県内の有効求人倍率の推移をみても、一昨年10月から昨年8月までは1.1~1.3倍程度で全国平均を下回っていたものの、9月以降は1.4倍を超えて全国を上回る堅調な伸びを示している。

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これら2つのデータは、熊本県内の経済は地震によって一時的に大きく落ち込んだものの、その後は大きく持ち直したことを示している。

被災した県内企業の約半数は「営業を停止していない」

以上のような経済概況を踏まえたうえで、白書は企業の被災状況に関する調査結果を紹介している。

県内企業のうち、地震によって「何らかの被害(施設の損壊などのち直接被害、営業停止などの間接被害など)」を受けたと回答したのは約80%に上り、「被害なし」の約16%を大きく上回った。取引のある企業でも半数近い約46%は「何らかの被害」があったと回答した。

何らかの被害を受けたと回答した県内企業に営業状況について尋ねたところ、「営業を停止していない」が約53%、「地震後1週間以内に営業を再開」が約28%だった。以下、「1週間後~4月頃」「5~6月頃」「7~9月頃」などと続いた。0.4%と少数ではあったが、調査時(地震発生から約1年経過した今年3月)において「現在も営業を再開できていない」という回答もあった。

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売り上げにはどの程度の影響があったのだろうか。白書は、地震が発生した平成28年度の4月~6月(第1四半期)と10~12月(第3四半期)のデータを比較した。

何らかの被害を受けたとした県内企業の6割以上は対前年比で売り上げが減少したといい、このうち3割弱の企業は「20%超の減少」となったと回答した。被害がなかったと回答した県内企業のおよそ半数は、前年と「ほとんど変化なし(増減率-1~1%以内)」と回答した。

これが第3四半期になると、何らかの被害を受けた県内企業のうち、前年比で1%以上減少したとの回答は3割に、「20%超の減少」となったと回答した比率は8%にまで減っていた。

整理すると次のようになるだろう。

熊本地震では8割に上る県内企業が地震による何らかの被害を受けた。しかし、そのうちの8割の企業は地震後1週間以内に迅速に事業再開を果たしていた。前年比で20%以上も売り上げが減少した企業の割合も、地震発生から半年が過ぎたころには半分にまで減っていた。

BCPの策定率が高い大企業

アンケート調査では、事業継続計画(BCP)の策定状況は企業規模に大きく左右されることも明らかになった。

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「大企業(資本金10億円以上等)」のおよそ7割はBCPを策定していたが、「準大企業(資本金1億円以上、従業員100人以上等)」や「中堅企業(資本金1億円以上、従業員100人未満等)」では半数弱、「中小企業(これら以外)」では約1割の策定にとどまっていた。

地震の被害を受けた企業に、防災に関する事前の取り組みで熊本地震の際に効果的だったものを聞いたところ、「備蓄品(水、食料、災害用品)の購入、買増し」「災害対応担当責任者の決定、災害対応チーム創設」「安否確認や相互連絡のための電子システム(含む災害用アプリ等)導入」「火災・地震保険(地震拡張担保特約・利益保険等)加入」「避難訓練の開始・見直し」を、3割以上の企業が挙げた。

同様に今後の取り組みたいこととしては、「BCPの見直し」「代替要員の事前育成」「国土強靱化貢献団体認証の取得」などの回答が上位を占めた。組織内の防災態勢を一層強化させたいという企業側の意識がうかがわれた。

白書は最後に、被害のあった企業の多くが態勢の見直しに着手しようとしていることを指摘、「企業の事業継続には優先事項の洗い出し、被害想定の見直し、代替戦略の導入等が必要である」と指摘した。

今回の調査では、大規模地震が発生すれば、被災地ばかりでなく、被災地外の取引先企業も影響を受けることが改めて明確になった。そうした意味からも、国内のすべての企業、事業所がBCPを策定することは大切だ。中小企業だからと尻込みすることはない。内閣府が示しているガイドラインや今回の調査などを参考に、できる範囲で発災時の事業継続に向き合っていくことが重要だろう。