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平成29年版「防災白書」、熊本地震の教訓を特集

2017.06.30

政府は16日の閣議で平成29年版「防災白書」を決定した。

今年の白書の巻頭特集は「熊本地震を踏まえた防災体制の見直し」。昨年4月に発生した熊本地震に関する政府等の対応を振り返りながら、首都直下地震や南海トラフ巨大地震など次なる大規模災害への向き合い方を展望している。

震度7が2回など、熊本地震の特徴を振り返る

特集は最初に、熊本地震の特徴と被害状況について簡潔に振り返った。

昨年4月14日の前震と16日の本震は、いずれも震度7を観測した。同一地域で震度7の揺れが2回観測されたのは、気象庁震度階級に「震度7」が追加された昭和24年以降初めてだった。この2回を含めて、震度6弱以上の地震が通算7回発生した。約6か月の間に震度1以上の地震は4,000回以上発生した。

多数の家屋倒壊や土砂災害による直接死、さらには関連死等による死者は合計228人、全半壊・一部損壊あわせた住家被害は約20万戸に上った(今年4月13日現在、総務省消防庁)。最大885か所に開設された避難所には、最大18万4,000人の避難者が身を寄せた。電気・ガス・水道のライフラインは大規模に被災し、道路、鉄道などの鉄道インフラも大きく破壊された。

行政とNPOの連携を図った「火の国会議」

特異な活動が甚大な被害をもたらした熊本地震。被災した県内の地方公共団体等は未曾有の災害にどう向き合ったのか。特集は次に、熊本地震に対する対応を、「被災した地方公共団体への支援」「避難生活」「応急的な住まいの確保」「支援物資輸送」「企業の事業継続」――の5つの観点から整理した。

このうち、特筆すべき取り組みとして評価されたのが、「熊本地震・支援団体 火の国会議」を中心としたNPO等の支援の取り組みだ。

同会議は、全国から集まったNPOや県内NPOがそれぞれ自発性・独自性をもって活動するなか、行政との連携のもとにNPO団体間で業務等の調整を図り、全体を見渡した支援活動を実現した。「行政とNPO等との連携としては我が国初の取り組み」でありながら、会議が立ち上がったのは4月19日と極めてスピーディーだったという。

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プッシュ型支援を初めて実施

もうひとつ、今回の熊本地震で「国内初」の取り組みがあった。プッシュ型の物資支援だ。

2度目の震度7の発生をうけて昨年4月16日未明にあった河野防災担当大臣(当時)と蒲島熊本県知事によるテレビ会議では、知事が国による物資供給を要請した。これをうけて国は、同日午前5時に非常災害対策本部事務局に物資調達・輸送班を設置し、物資支援を開始した。

まず取り組まれたのが、被災地の要望を待たずして物資を調達・搬送するプッシュ型物資支援だ。4月17日から22日までの間に、食料約185万食、下着・マスク・トイレ関連用品等の生活用品多数を供給した。

現地に物資が十分に行きわたったことを踏まえ、同23日からは避難者のニーズに応じて物資を送るプル型支援に切り替えた。

熊本地震における物資支援では、プッシュ型、プル型の支援をあわせて5月6日までに食料約278万食等を供給したという。

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特集は熊本地震における物資支援を振り返り、「東日本大震災等の過去の震災教訓を踏まえ、初めてプッシュ型支援を実施したが、当初対応として効果的であった」と評価した。

あらためて自助・共助の重要性を強調

特集は、今後の展開について論を進める。

熊本地震では、指定避難所ではなく車中泊避難をする被災者も多かった。こうした人々の動向や避難所における被災者のニーズ、物資の配送状況などは、把握するのが難しい情報だった。災害対応に役立つ情報を把握するには、国や地方公共団体、民間企業や団体等が把握している情報を円滑に共有する必要がある。それにはICTの活用が欠かせないという。

被災した地方公共団体が応援を活用できる防災体制(受援体制)を整備しておくことも重要だが、地方公共団体における受援計画の策定状況は芳しくない。都道府県で約4割、市町村で1割強に留まっている。大規模災害が相次ぐなか、受援体制の早期構築が喫緊の課題になっているとも指摘した。

地方公共団体の首長や職員に対する防災に関する研修の充実、平常時から発災を前提とした復興事前準備の促進などの具体例を例示しながら、白書が特集で最後に強調したのは自助、共助の促進だった。

首都直下地震や南海トラフ巨大地震のような巨大災害が発生すれば、公助の機能低下は避けられない。「公助を期待する待ちの姿勢」ではなく、「地域住民が一体となって減災に取り組む体制づくりが必要不可欠」だと指摘した。

自助、共助の重要性が指摘されたのは阪神・淡路大震災が最初だったろう。私たちの社会はその後、東日本大震災、熊本地震などを経験してきた。大地震を経験するたびに、自助、共助の重要性は再確認され続けている。

今回白書では、企業の事業継続についてもまとまった調査を実施し、結果を紹介している。これについては次回に稿を改める。