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熊本地震と避難所(その1)

2017.05.18

内閣府は4月25日、「平成28年度避難所における被災者支援に関する事例等報告書」をとりまとめ、公表した。昨年発生した熊本地震に関わる自治体や被災者などに対する各種アンケート調査の結果などをもとに、避難所における被災者支援の実態や課題などについて整理した。

報告書は、「平常時の避難所運営体制」「発災時の運営の実態・課題」「被災者ニーズへの対応」の3部構成。地方自治体にとっては災害時の避難所運営に活用することができるほか、一般住民にとっても熊本地震の避難所の実態を具体的に理解できる有用なレポートとなっている。

同報告書を2回にわたって紹介する。

指定避難所は全国で9万件余、2年前からほぼ倍増

報告書によると、昨年10月1日現在の全国の避難所設置数は9万2,561件であり、これは2年前の調査から4万4,547件増加した。福祉避難所は2万185件で、同様に1万2,538件増えた。

避難所数が最も多かったのは北海道の5,871件、最も少なかったのは鳥取県の802件だった。福祉避難所の設置数が最多は東京都の1,353件だった。

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避難所に指定されているのはどのような施設だろうか。

全国の自治体を対象にしたアンケート調査(複数回答)によると、「小中学校・高校」を避難所に指定していると回答したのは95.4%、ほとんどすべての自治体が学校を避難所として指定していた。続いて多かったのが「公民館」の78.6%だった。

学校や公民館ばかりではない。「その他社会福祉施設」「高齢者施設」「児童福祉施設」「公的宿施設」「障害者施設」「特別支援学校」など、さまざまな施設が避難所に指定されていた。

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福祉避難所は要配慮者のための避難所

高齢者施設などの福祉施設の多くは、福祉避難所として指定されているのだろう。

福祉避難所とは、災害時に特別な配慮が必要となる高齢者や障害者などの「要配慮者」を対象にした避難所だ。一般の避難所や在宅では避難生活を送ることが困難な人を受け入れる。多くの場合、地方自治体と民間の福祉施設が協定を結び、それぞれの設を福祉避難所として指定している。

福祉避難所を巡っては熊本地震でも問題になった。一般の避難所との違いが十分に知らされていなかったために、要配慮者ではない一般の避難者が福祉避難所に避難してきたケースが相次いだという。

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福祉避難所があることを平常時から住民に「周知している」自治体は全体の66.9%、「周知していない」は28.4%だった。7割近い自治体がふだんから周知しているものの、その手段としては自治体の広報やホームページへの掲載が一般的だ。熊本地震では福祉避難所に対する認知度が低かったことを考慮すれば、こうした周知方法では十分でない恐れがある。

福祉避難所の広報活動について、報告書はより一層の徹底が必要だと指摘した。具体的には、要配慮者が使うことを意識して、点字版・音声版・拡大文字盤などの広報媒体の種類を増やしたり、当該施設そのものに福祉避難所である旨の表示をしたりする工夫が有効であるとした。

避難所運営マニュアル、熊本県内の作成率は全国以下

内閣府は平成28年4月、地方自治体向けに「避難所運営ガイドライン」など避難所に関する3つのガイドラインを公表した。自治体ごとの避難所運営マニュアルなどの整備に、これらのガイドラインを役立ててほしいと呼びかけている。

報告書では、避難所運営マニュアルの作成状況についても聞いた。

「作成済み」と回答したのは全国で50.2%だったのに対し、熊本県内の市町村では40.6%と下回っていた。その一方で、「作成していない」との回答は熊本県内で31.3%に上り、全国平均よりも20ポイント近く高かった。

地震に対する備えが他の地域よりも不足していたのではないかという厳しい反省は、避難所運営に関わる事前準備においても残念ながら該当していたと言えそうだ。

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大規模災害が発生すれば、地域のあちこちに避難所が開設されることになる。その際の混乱を最小限に抑えるには、事前の準備が欠かせない。避難所運営マニュアル等を策定して訓練で問題点を検証するなど、日頃から関係者間で認識を共有しておくことが重要だ。

報告書は、上記ガイドラインの有効活用を改めて強調、「災害時に適切な避難所の運営が実施できるよう取り組みを進めてほしい」と自治体担当者らに呼び掛けた。

次回は、被災者視点のアンケート調査結果などから見える避難所の現状について見ていこう。