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熊本地震で高まった県民の防災意識

2017.04.30

震度7を2度観測し、本震以降も数多くの地震が発生した熊本地震。

熊本の人たちは、どのような状況で地震に見舞われ、どのように行動したのだろうか。この未曾有の地震をどのように受け止めたのだろうか――。

熊本県が公表した熊本地震に関する県民アンケート調査の結果に詳しい。

郵送とネットで3,381件の回答を得たアンケート調査

アンケート調査は、県民の日頃の災害への備え、熊本地震の際の行動、防災に関する行政へのニーズなどを把握し、今後の防災体制の強化に活用することを目的に、昨年8~9月に実施された。

震度6強以上を観測した熊本市や益城町など10自治体の居住者を対象とした郵送調査、広く県民を対象にしたインターネット調査を実施し、3,381人(郵送1,177人、ネット2,204人)の回答を得た。

設問は全46問。前震および本震の発生直後の状況、その後の避難の状況、地震発生前後の地震への備えなど県民の防災に関する行動・意識について幅広く聞いた。

震度7の揺れのなかでは「身を守る余裕」さえない

前震、本震発生時の状況を聞いた。

揺れている際の行動として、「その場でじっとして様子を見ていた」との回答が前震で1,940人(57.4%)、本震で1,755人(51.9%)と最多だった。以下、「頑丈なものにつかまって身を支えた」「お年寄りや子供等を守ろうとした」などが続いた。

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前震と本震との比較で興味深いのは、本震で「屋外に飛び出した」が増えたこと。前震時の261人(7.7%)から561人(16.6%)と倍増した。本震は2度目の震度7だった。前震を経験後、前震と同程度の揺れに再び見舞われたのだ。多くの人は、家屋内にとどまることの危険と恐怖を感じたのだろう。

揺れを感じた際に「身を守るための行動がとれなかった」のは、前震2,445人、本震2,374人。その理由としては、「揺れが大きく、身を守る余裕がなかったから」が最も多く、前震1,321人(54.0%)、本震1,370人(57.7%)を占めた。「周りに身を守れるものがなかった」「パニックになり、どうすればよいか分からなかった」との回答もそれぞれ2割程度あった。

実際、震度7の揺れのなかでは立っていられないし、身動きをすることさえ困難になる。普段から家具の転倒・落下防止対策を進めたり、住宅の耐震性を高めたりすることの重要性が叫ばれる理由だ。

車中避難をした人は指定避難所に避難した人の2.5倍

度重なる余震に脅かされ、自宅から避難した人が多かったことも熊本地震の特徴だった。

回答者のうち、前震以降に実際に避難した人は2,297人おり、全体の67.9%を占めた。

「避難した場所」を尋ねたところ、最も多かったのは「自動車の中」の1,568人(68.3%)で、「市町村が指定した避難所(指定避難所)」615人(26.8%)の約2.5倍にも上った。

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自動車の中に避難した理由を聞いた。

「余震が続き、車が一番安全と思った」が1,240人(79.1%)と最も多く、「プライバシーの問題により避難所より車中避難の方がよいと思った」が551人(35.1%)いた。「小さい子供や体が不自由な家族がいた」246人(15.7%)、「ペットがいた」226人(14.4%)などの回答からは他の避難者に遠慮した実情がうかがえた。「避難所が満員で入れなかった」162人(10.3%)、「避難者が殺到して避難できないと思った」174人(11.1%)との回答もあり、物理的に車中避難を選択せざるを得なかった人も少なくなかった。

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熊本地震では、車中避難は人数や場所等が流動的で実態把握が難しいといった問題点が指摘された。狭い車内で長時間同じ姿勢でいるため、エコノミークラス症候群を引き起こしやすい危険性も改めてクローズアップされた。車中避難は、行政の地震避難対策に新たに突き付けられた課題になった。

地震前後で変化した県民の防災意識

熊本地震の経験は県民の防災意識を変えた。

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震災前、県民の地震への備えは心もとなかった。最も多くの人が取り組んでいた「飲料水・食料の備蓄」でさえ、38.1%(1,288人)と半数に満たなかった。「特になにもしていなかった」は18.0%(607人)いた。つまり、10人に2人は何もしていなかった。

震災後はどうなったか。「飲料水・食料の備蓄」は68.8%(2,327人)と7割に迫り、何もしていない人は7.7%(260人)に半減した。熊本地震によって、県民の防災意識は顕著に高まった。

災害が発生すれば住民の防災意識は高まり、被災から時間が経過すれば防災意識は次第に低下していく。

「忘れる」「慣れる」が人の性である限りこの傾向は変わるまい。だからといって嘆く必要もないだろう。災害発生の記念日ごとに、あるいは折に触れて思い起こし、備えを点検できればよいのだから。

県民アンケートの各設問に対する答えはいずれも重要な示唆に富み、興味深いものになっている。ここではそのなかのいくつかをピックアップして紹介した。アンケート調査の全文は熊本県のサイトにある。興味のある方はぜひ参照してほしい。