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熊本地震、4300回の恐怖

2017.04.18

平成28年(2016年)熊本地震から1年が経過した。

昨年4月14日21時26分に発生した前震と約28時間後の16日1時25分に続発した本震のいずれもが震度7を記録した。同一地震で2度の震度7は観測史上初めての出来事だった。

おびただしい数の余震、増え続ける関連死――。発生から1年の節目における地震被害を整理した。

1年間で発生した地震回数は4,296回

気象庁の観測によると、熊本地震の活動域では、昨年4月14日から今年4月13日までの1年間で震度1以上の地震が4,296回発生した。

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最大震度別にみると、震度7と6強が各2回、6弱と5強が各3回、5弱が12回などとなった。

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地震の発生は昨年4月に集中した。同月中に発生した地震は全体の7割にあたる3024回に達した。

その後は、次第に発生回数は減っており、これまでのところ震度5強以上の地震も昨年5月以降は発生していない。

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熊本地震の活動は、これまでの内陸型地震と比較しても段違いに活発だった。

上の階段状のグラフは、マグニチュード3.5以上の地震回数を時間経過に従って積み上げ表示したものだ。今回の熊本地震を巡る報道では頻繁に目にした。これが1年経ってどうなったか。

グラフは4月4日現在の数値を示しているが、熊本地震は339回を数えた。熊本地震と同様に震度7を観測した新潟県中越地震は200回台半ば、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)は100回をわずかに上回る程度だ。熊本地震の活動がいかに特異だったかがよくわかる。

政府の地震調査研究推進本部は11日、熊本地震に対する見解を明らかにした。

それによると、一連の地震活動は全体として引き続き弱まっているものの、「活動は継続しており、現状程度の地震活動は当分の間続く」という。熊本地方では過去にも、マグニチュード6程度の地震発生後、数年のうちに同規模程度の地震が発生した複数の事例があることを指摘し、住民に引き続き注意を促した。

人的被害、関連死は直接死の3倍強

政府の非常災害対策本部によると、熊本地震による死者は熊本、大分の両県で228人、重軽傷者は福岡、佐賀、宮崎を加えた5県で2,753人だった(13日18時現在)。

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熊本県が14日17時に発表した「被害状況について(第234報)」によると、地震による死者が確認されたのは県内の20市町村に及んだ。

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死者の内訳をみると、熊本地震の特徴が鮮明になる。

警察の検視によって確認された死者数。倒壊した建物の下敷きになるなど地震による「直接死」は50人を数えた。

目立つのは、避難生活によるストレスなどから間接的に亡くなった「震災関連死」の多さだ。14日時点で県内では170人となり、直接死を3倍以上も上回っている。

さらに昨年6月の豪雨による二次災害死が5人となっている。

直接死は、地震被害の甚大だった益城町、南阿蘇村に集中した。関連死を含めると熊本市の72人が最も多く、益城町37人、南阿蘇村27、阿蘇市17人などだった。

木造住宅の倒壊、1階はより危険

熊本地震の直接死とも関係して、警察庁が13日に注目すべき発表をした。熊本地震の家屋倒壊現場における警察の救出活動を分析した調査報告だ。

報告の概要は以下の通り。

熊本地震で警察が主導して救助活動した家屋倒壊現場は39か所あり、救助した60人のうち生存していたのは42人、心肺停止は18人だった(その後死亡確認)。

要救助者の年齢は、80歳代が20人で最多、次いで60歳代が12人だった。60歳代以上の高齢世代が全体の7割を占めた。

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要救助者が閉じ込められた場所は、1階居室が最も多く47人で全体の8割近くに上った。心肺停止だった人も16人いた。階層不明が8人おり、2階居室は1人に過ぎなかった。

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倒壊した倒壊家屋はいずれも古い木造2階建てだった。調査結果を総合すれば、古い木造家屋が倒壊すれば1階で閉じ込められる高齢者が多くなるということがわかったわけだ。

報告は、一般に高齢者ほど古い住宅に居住しており、体力的な事情などから1階を中心に過ごす生活スタイルをとる人が多いことが、このような特徴的な結果につながったのだろうと分析している。

これまでも「古い木造住宅では1階よりも2階のほうがより安心だ」とはよく言われてきた。実際の現場調査によって、このことが裏付けられた格好だろうか。

2度の震度7では多くの家屋が倒壊し、多くの人が閉じ込められた。その後も1年間で約4300回の揺れに襲われた。被災者はどれだけ恐ろしかっただろう。

数多く発生した地震は、熊本の土地や建築物を傷めつけたばかりでなく、人々の精神を恐怖に陥れ続けたに違いない。4300回とは人々が抱いた恐怖の回数でもあったのだと思う。