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減少する火災VS増大する救急需要--『平成28年版消防白書』

2017.01.31

総務省消防庁は毎年の年の瀬に『消防白書』を刊行している。『平成28年版消防白書』も昨年12月20日に閣議で配布し、一般に公表した。

今回の白書、巻頭特集では、4月の熊本地震、8月の台風被害など昨年発生した大規模災害への消防の対応等を詳しく紹介した。

統計関係の記述では、過去10年で火災の発生はもっとも少なかった一方で、救急出動件数は過去最多を記録したことが目を引いた。

巻頭に5本の特集を掲載、消防団の活躍に焦点

『平成28年版』の巻頭特集には、「熊本地震の被害と対応」「平成28年8月の台風等の被害と対応」「消防団を中核とした地域防災力の充実強化」「消防における女性消防吏員の活躍推進」「伊勢志摩サミットにおける消防特別警戒の実施」の5本が盛り込まれた。

総務省消防庁が充実強化に注力している消防団に関しては、毎年のように特集で取り上げている。今年も、消防団の最新動向について詳しく紹介した。熊本地震や夏場の台風被害等の災害現場においても、消防団が消火活動、安否確認、救出活動、避難誘導、警戒活動等に活躍したことを伝えた。

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出火件数、火災による死者などは10年前から約3割減

毎年の消防白書に掲載される統計数値は前年のものだ。つまり、平成28年版には平成27年統計の確定値が載っている。

火災の統計で顕著なのは、このところの減少傾向だ。

出火件数ばかりでなく、建物焼損床面積、火災による死者数、損害額のいずれもが、この10年間で大きく減っている。10年前の平成17年の数値と比較してみた。

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総出火件数の3万9,111 件を出火原因別にみると、「放火」4,033 件(10.3%)、「たばこ」3,638 件(9.3%)、「こんろ」3,497 件(8.9%)、「放火の疑い」2,469 件(6.3%)、「たき火」2,305 件(5.9%)の順だった。

「放火」と「放火の疑い」を合わせると6,502 件(16.6%)となった。「放火」は19年連続で出火原因のトップだった。

救急出場件数が初めての600万件超え

確実に減少傾向を示してきた火災とは対照的に、増加する一方なのが救急車の出動だ。

平成27年中の全国の救急車による救急出動件数は初めて600万件を超え、搬送人員とともに過去最多となった。

最終的な確定報によると、平成27年中の救急車の救急出動件数は605万4,815件だった。前年と比べて6万9,894件(1.2%)の増加だった。搬送した人員は547万8,370人で前年比7万2,453人(1.3%)増だった。いずれも過去最多となった。

救急出動件数は1日あたり約1万6,589件で、約5.2秒に1回の割合で救急隊が出動し、国民の23人に1人が救急隊によって搬送されたことになるという。

過去20年間の5年ごとの推移を見てみた。

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出動件数は20年前の約328万件から約1.8倍に、搬送人員は約316万人から約1.7倍に増えた。

このほか、救急車が現場に到着するまでの所要時間は全国平均で8.6分、病院に収容するまでの所要時間は全国平均で39.4分だった。いずれも前年比では横ばいだった。

また、平成27年中に救急車で搬送された傷病者を傷病程度別にみると、軽症が270万5,974人(49.4%) 、中等症が222万29人(40.5%)、重症が46万5,457人(8.5%)などとなっていた。前年と比較すると、死亡・重症の割合は若干減り、中等症・軽症の割合は若干増えた。

軽症の場合の救急車利用は、必ずしもすべて否定されるわけではないが、救急車の適正利用は引き続き大きな課題として残されている。

防火対策の進展によって火災による被害は減っている一方、高齢化が進むなかで救急需要は高まっている。本当に必要な人に救急車がしっかりと手配されているのかどうか、私たち利用者は改めてこのことを考えてみよう。