1. ホーム
  2. レポート
  3. 防災の現場
  4. 「避難準備情報」→「避難準備・高齢者等避難開始」に名称変更

「避難準備情報」→「避難準備・高齢者等避難開始」に名称変更

2017.01.19

内閣府は先月26日、市区町村が高齢者や障がい者などの要配慮者に早めの避難を促す「避難準備情報」の名称を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更した。この日公表された有識者会議の報告を受けて変更を決定、同日付で都道府県に通知した。

施設管理者は避難準備情報の意味を知らなかった

昨年8月の台風10号では東北や北海道で多数の水害が発生し、死者・行方不明者27人を数えるなどの甚大な被害が出た。特に、岩手県岩泉町では台風による大雨で小本川がはん濫し、近くの認知症高齢者グループホームに水が流れ込んで入所していた男女9人の生命を奪った。

20170119_01.png

同水害の発生を受け、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドラインに関する検討会」が内閣府に設置され、避難に関する情報の在り方などについて改めて検討を重ねてきた。議論の結果が先月26日、「平成28 年台?第10 号災害を踏まえた課題と対策の在り?(報告)」と題する報告書に取りまとめられ、公表された。

岩泉町の水害では、避難に関する情報に関して、市区町村側の提供の仕方が適切ではなかった、住民側の情報の意味に対する理解が不足していたといった問題が指摘された。

明らかになった事実関係は次の通りだ。

●水害の発生の危険性が高まったと判断した岩泉町は、川がはん濫する前に町内全域に避難準備情報を発令していた。

●しかし、発令時に町は、避難準備情報が「高齢者などの要配慮者が避難すべき段階であることを知らせる」情報であることを伝達できていなかった。

●被災した高齢者施設の管理者は、川がはん濫する前に避難準備情報が発令されていることを認識していた。

●しかし、管理者は、避難準備情報が「高齢者などの要配慮者の避難開始を知らせる」情報であるとは認識していなかった。

報告書は、今回の水害で被災した施設の管理者が避難準備情報の意味を理解していなかった事態を重視した。「避難準備情報」という名称については、「『要配慮者が避難を開始すべきである状況にある』ということがわかりにくい」と述べ、名称変更を促した。

「避難準備」という言葉は、ある程度浸透していると判断

市区町村が出す避難情報には、状況の危険度の高いほうから、「避難指示」「避難勧告」「避難準備情報」がある。

これまでも大きな災害が発生するごとに、これらの情報の意味などについて住民の理解が不足しているとの指摘は繰り返されてきた。

最近はどうなのか?

報告書は、避難情報の認知度に関する2つのアンケート調査の結果を紹介している。いずれも昨年の台風10号災害の後に実施された調査だ。

静岡大学防災総合センターの牛山素行教授が実施した調査では、避難準備情報という名称を認知している人は80.1%に上った。このうち、「今年に入ってから知った」という回答は、避難勧告や避難指示に比べてやや多かった。グラフにはないが、避難準備情報の意味を認知している人も6割を超えていた。

20170119_02.png

CeMI環境・防災研究所による調査では、避難準備情報が「発表されること」も「求められる行動」も知っていると回答したのは44.6%で、避難勧告や避難指示に比べると認知度が低いことがわかった。

20170119_03.png

これらの結果を踏まえ、報告書は「避難準備」等の名称は住民に浸透しつつあると判断、新しい名称を検討するにあたっては以下の考え方を示した。

名称はできるだけ短くすることが望ましい

浸透しつつある「避難準備」の単語は残すべき

各情報が持つ意味を名称に付記することや、すでにメディア等で使われている表現も参考にすべき

「要配慮者」を「?齢者等」と表現する等、直感的にわかりやすい表現となるよう?夫すべき

要配慮者のためだけの情報だと誤解されないようにすべき

名称変更にあたっては、「できるだけ短く」を目指した

報告書のアドバイスを受けて、内閣府は、

(1)できるだけ短く

(2)「避難準備」という言葉は残しつつ

(3)情報が持つ意味を名称に付記

の3点を考慮しつつ、「避難準備情報」を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更、また「避難指示」については、より緊急性が伝わるように「避難指示(緊急)」とした。「避難勧告」は変更しなかった。

20170119_04.png

名称変更にあわせて、地方公共団体向けにハザードマップなどへの記載イメージも示した。

20170119_05.png

内閣府は今月中にも「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」(平成27年8月)を改訂し、名称変更や報告書の提言内容を反映させるという。

今後、災害の危険性が高まれば、市区町村は「避難準備・高齢者等避難開始」を発令することになる。個人的には名称が長く感じられて運用面での若干の不安を抱かないでもないが、新名称が一日も早く、混乱なく定着してほしいと願っている。