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現行の建築基準は熊本地震でも有効だった

2016.11.17

熊本地震の発生から7か月が経過した今月14日、熊本県内で建設が予定されていたすべての応急仮設住宅が完成したという報道があった。

県の資料をみると、16日11時現在の県内の避難所は西原村の避難所1か所の2人となっている。仮設住宅の整備完了にこぎつけたことで、最低限、避難者が身を寄せる場所を確保するという問題は、ひとまず解消されたということなのだろう。

最大で約18万人を数えた県内の避難者数だったから、ここまでの道のりは困難なものだったに違いない。いまだ復興途上の段階ではあるが、関係者の懸命な努力に敬意と感謝の気持ちを表したい。

有識者委員会が建築物被害を詳細に調査・分析

熊本地震の特徴のひとつは、度重なる強烈な揺れによって多くの住宅が被害にあったことだ。特に震度7を2度観測した益城町などの木造住宅の被害は甚大だった。

倒壊した住宅のなかに現行の耐震基準で建設されたものも含まれていたことが注目され、耐震基準のあり方も含めた検討の必要性が叫ばれた。

これについては国土交通省が先月5日、熊本地震の被害を踏まえた今後の対策方針を明らかにし、現行の耐震基準は熊本地震においてもその有効性が確認されたと結論づけている。9月にとりまとめられた国交省の有識者委員会の最終報告書を受けての結論だった。

この「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書」を読んでみた。

被害が甚大だった益城町で2,340棟(木造1,955棟、鉄骨造276棟、鉄筋コンクリート造52棟など)の住宅等について調査した(日本建築学会による悉皆調査、9月8日時点の暫定値に基づく)。

建築物の被害レベルを「無被害」「軽微・小破・中破」「大破」「倒壊・崩壊」に分けて、調査エリアにおける約57メートル四方のメッシュごとに被害の分布を見た。

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●倒壊率に関しては、県道の南側で50%以上のエリアが多く、調査エリアの北東の辻の城地域と、南側の秋津川に近い地域では倒壊率0%のエリアが多くなっていた=図1

●大破率に関しては、県道の北側~益城町役場周辺にも50%以上のエリアが広がっていた=図2

次に、国土地理院の治水地形分類図と倒壊建物が存在するエリア、倒壊率0%のエリアを重ねあわせた。

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●県道の南側では、倒壊・崩壊した建築物が段丘面に存在し、倒壊率0%のエリアが氾濫平野・旧河道に存在する傾向があった=図3、図4

この地図には、一見して違和感を覚えた。倒壊率0%のメッシュが、秋津川に沿って並んでいるように見えるからだ。川沿いは地盤が軟弱なのではないのか?

これについては、報告書にも「一般的に考えられている地盤と建築物の被害の関係と異なる傾向にあり、今後、地盤調査等による詳細な分析が待たれる」とあった。

さらに、宅地化の進展と被害の関係をみるために、1926 年の地形図と倒壊建物が存在するエリア、倒壊率0%のエリアを重ね合わせた。

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●倒壊・崩壊した建築物の位置は 20世紀初頭から住宅地であったエリアとよく一致する傾向にあった=図5、図6

やはり古い建物に被害が集中しているようだ。

新耐震基準の倒壊等は接合部が不十分だったことなどが原因

益城町中心部における木造住宅の建築時期別に被害状況を整理した。

建築時期は、新耐震基準が施行された1981年6月および木造の構造関係の基準が改正された2000年6月を分岐点として、「1981年5月以前」「1981年6月~2000年5月」「2000年6月以降」に3区分した。

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●新耐震以前の倒壊・崩壊は28.2%、新耐震以降2000年改正以前の木造の倒壊・崩壊は8.7%、2000年改正以降の木造の倒壊・崩壊は2.2%だった=図7

こうした被害の要因について、有識者委員会は、現地調査や入手した図面、構造計算等による分析をもとに概略以下のように整理した。

●2000年以降の建物で倒壊崩壊した7棟のうち、3棟は部材の接合部が不十分だったことが原因、1棟は敷地の崩壊が原因だった。残り3棟は原因不明だが、震源や地盤の特性から局所的に大きな地震動が作用した可能性が考えられる。

●前震で倒壊・崩壊したと確認された木造住宅に2000年以降のものは存在しなかった。昭和56年基準の木造住宅が5 棟あり、これらについては、不十分な接合部の仕様、隣接建物の倒壊等を確認した。

●住宅性能表示制度を活用した木造住宅は19 棟あり、このうち耐震等級が3だった16棟は14棟が無被害、2棟が軽微・小破の被害だった。大部分が無被害だったのは、壁量が多く確保されていることなど、より高い耐震性を確保したことによるものと考えられた。

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上述の通り、報告書を受けて国交省は建築物の倒壊等防止のための対策指針を決定した。方針は、10月5日の社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)建築分科会の建築物等事故・災害対策部会で報告された=図8

現行の耐震基準は有効であるから、現行基準が求める耐震性能の確保を目指していくことが重要だと述べている。