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「平成27年9月関東・東北豪雨」からもうすぐ1年

2016.08.17

 「平成27年9月関東・東北豪雨」の発生からまもなく1年になる。国や被災自治体などの関係機関は、同豪雨による被害の直後から災害対応の検証を進め、この夏までに検証結果をとりまとめた。検証結果からは、被災した自治体の防災対策の不十分さだけではなく、私たち住民の側の課題も見えてくる。

関東・東北豪雨の特徴は「建物流失、広域浸水、長期湛水」

 昨年9月7日から11日までの総雨量は関東地方で600ミリ、東北地方で500ミリを超えた。気象庁は10日に栃木県と茨城県、翌11日に宮城県に対して大雨特別警報を発表した。この豪雨により、関東・東北地方を中心に19河川で堤防が決壊し、67河川で氾濫等の被害が発生した。特に鬼怒川は大規模に氾濫した。常総市三坂町地先で約200mにわたって堤防が決壊し、常総市の面積のおよそ3分の1にあたる約40平方キロが浸水した。懸命の排水作業にもかかわらず、宅地等の浸水が解消するまでにおよそ10日間を要した。

 宮城・茨城・栃木の3県で8人が亡くなり、63人が負傷した。全国では11都県で80人が負傷した。住家被害も上記3県に集中し、茨城県では全壊54棟、半壊5,486棟を数えた。茨城県内の被害のほとんどは常総市におけるものだった。

 関東・東北豪雨の発生を受けて中央防災会議が設置したワーキンググループが今年3月にとりまとめた報告書は、常総市における鬼怒川の氾濫の特徴を「建物流失、広域浸水、長期湛水」と指摘した。

被災地で低かったハザードマップの認知度

 同報告書には、中央大学が昨年11月、常総市における浸水地域または避難勧告等が発令された地区の住民を対象に実施したヒアリング調査の結果が掲載されている。

 516件の回答中、自宅が「床上浸水した」は約44%、「床下浸水した」は約24%で、全体の7割が自宅の浸水被害にあっていた。災害時に自宅にいた人のうち、「避難所へ避難した」約29%、「避難所ではないが自宅以外の安全な場所へ避難した」約30%で、約6割が自宅以外の場所へ避難していた。一方、「避難所等へは避難せず自宅にいた」は約42%だった。自宅が浸水した人のうち、今回の豪雨で自宅が「浸水すると思った」は約17%に過ぎず、8割の人は浸水するとは考えていなかった。浸水しないと思った理由は「浸水を経験していない」約49%、「浸水したことがあると聞いたことがない」約28%の順となり、多くの人が自己の経験に基づいて浸水の危険性を判断していた。

 同調査で目を引いたのは、ハザードマップの認知度の低さだ。「ハザードマップを知らない、見たことがない」が61%と突出して高かった。「家族でハザードマップの内容を確認している」は7%、「ハザードマップを見て自分の家がどの程度浸水する可能性があるかわかっている」は約6%にとどまった(複数回答)。今回の災害発生時にハザードマップを見たかとの設問には、「見ていない」が約94%と圧倒的で、「見て確認した」は約5%に過ぎなかった。

 常総市が設置した「常総市水害対策検証委員会」が6月に公表した検証報告書でもハザードマップの問題は指摘されている。「常総市洪水ハザードマップ」は事前に作成され、全戸配布されていた。にもかかわらず、6割は「知らない、見たことがない」と答えた。検証報告書は「それを活用し、水害の際にはどう行動するかということの共通理解は、ほとんどなかった」と指摘した。高齢者にとっては理解しにくいとの住民の声も紹介し、「身近な地域毎に、より具体的でわかりやすいハザードマップを作ることが必要なのかもしれない」と行政側に善処を求めた。

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国民の半数は水害による「被害を受けるとは思わない」

 国民の水害に関する意識はどうだろうか。内閣府が今年2月に実施した「水害に対する備えに関する世論調査」によると、自宅が「今後10年以内に台風や集中豪雨により、洪水、高潮、土砂崩れなどによる水害の被害を受ける可能性があると思うか」との設問に、「あると思う」は約45%、「ないと思う」は約52%だった。

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 同様のことを聞いた平成22年1月調査では「被害を受けるとは思わない」約51%、平成17年2月調査では「被害は受けないと思う」約34%だった。過去約10年における国民の水害に対する危機感は、横ばいもしくは低下しているようだ。

 水害統計によれば、平成16年から25年までの10年間に河川の氾濫などによる水害が一度も発生していないのは55市区町村(約3%)に過ぎず、残りの1,687市区町村(約97%)では1回以上発生し、このうち925市区町村(約53%)では10回以上の水害が発生している。

 もちろん、全国の97%の市区町村で水害が発生しているからといって、そこにあるすべての住宅が浸水しているわけではないから、自宅の被害について「楽観的」であることが必ずしも認識不足だとは言えない。洪水ハザードマップで確認のうえ、被害の可能性がないと判断しているのであれば、ひとまず問題はないだろう。ただし、その理由が自己の経験のみに基づくのであれば気を付けた方がいい。ハザードマップを「知らない、見たことがない」のであればなおさらだ。