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エルニーニョ現象が終息した今年、台風などによる豪雨に要注意

2016.07.30

 気象庁は29日、東北地方が梅雨明けしたとみられると発表した。梅雨のない北海道を除き、全国で梅雨が明けたことになる。熊本地震の被災地は大雨に襲われた一方、渇水が続く関東地方では空梅雨傾向だった今年の梅雨。自然の計らいとは、かくも人の思惑や期待とは無縁なのだ。

被災地を襲った豪雨、一方で関東地方は渇水が続く

 梅雨の大雨は各地に爪痕を残した。6月後半、活発な前線の影響で九州の広い範囲や中国・四国地方の一部で大雨の被害があった。無情な集中豪雨は熊本地震の被災地を容赦なく襲った。内閣府の6月27日現在のまとめによると、熊本県で土砂崩れなどで6人が亡くなり、福岡県で1人が行方不明になった。熊本県は7月15日、この大雨による土砂崩れで死亡した男女5人について、熊本地震に起因する死者に認定したと発表した。土砂崩れは地震で地盤が緩んでいたために発生したと判断、いずれも災害弔慰金の支給対象になるという。

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 一方、首都圏の水がめでは水不足が続いている。神奈川県を除く関東6都県に水を供給する利根川水系では、6月16日から10%の取水制限が始まった。栃木県と茨城県に水を供給する鬼怒川では、7月28日から20%の取水制限に引き上げられた。国土交通省関東地方整備局によると、30日0時現在、利根川上流の8ダムの貯水率は55%で、貯水量は1億9,041万立法メートル。1億5,000万立方メートルを下回れば、利根川水系でも20%の取水制限が実施される。取水制限30%になれば、時間を区切った断水などの給水制限を余儀なくされる地域も出てくるという。

今年の台風1号の発生は観測史上2番目に遅かった

 梅雨明けによって夏本番を迎えるが、これからの季節は台風などがもたらす大雨に注意が必要だ。台風といえば、今年は台風の発生数が少ないことが注目されていて、昨年とは大きく様変わりしている。

 昨年12月の台風27号の発生をうけて本ブログは、2015年は1月から12月まで毎月台風が発生していること、これは気象庁が統計を取り始めた1951年以来初めてのことであることを紹介した。さらにはその前年の6月から19か月連続で発生していることにも注目した。今年1月に台風は発生せず、連続月発生記録は途切れた。気象庁の統計を確認すると、19か月連続発生は、過去にも1度、1964年5月から翌65年11月にかけてあった。昨年12月までの連続月発生は過去タイ記録だったわけだ。

 今年に入ってからは台風が発生しない月が続いた。今年の台風1号は7月3日、米領グアム島の南のカロリン諸島で発生した。これは観測史上2番目に遅い台風1号の発生だった。気象庁の観測以上、最も遅かったのは1998年の7月9日発生、6月まで台風発生がなかったのは1973年と1998年に続き3度目のことだ。

発生数少なかった1998年だが、平年上回る4個が上陸

 今年、台風が日本の南の海上で発生しにくくなっているのはエルニーニョ現象の終息に関係がありそうだ。エルニーニョとは、ペルー沿岸から日付変更線付近にいたる太平洋東部の広い海域で海面温が高い状態が長期にわたって続く現象だ。最近では2014年の夏から過去最大規模で発生していた。

 気象庁は、今回のエルニーニョ現象は今年春に終息したとみている。エルニーニョが終息すると、今度はインド洋の海面水温が高くなり、インド洋から太平洋西部の赤道域で上昇気流が活発になる。台風の主な発生海域であるフィリピンの東の海上から赤道域へ大気が流れて下降気流を生じさせるため、フォリピン東方沖では積乱雲が作られにくくなり、結果として台風が発生しにくくなるという。台風の発生が遅かった1973年と1998年は、いずれもその前年はエルニーニョが猛威を振るっていた。

 台風の発生が遅く、通年での発生個数が平年より少なくなったとしても、まったく安心できない。実際、台風1号の発生が最も遅かった1998年の年間発生数は16個と過去で2番目に少なかったが、そのうちの4個が日本に上陸した。平年の上陸数2.7個を上回るものだった。

 しかも、この年の台風は日本列島に甚大な被害をもたらした。この年の8月末に接近した台風4号と停滞した梅雨前線では死者・行方不明者22人、静岡県に上陸した台風5号では死者7人、9月に近畿地方に連続上陸した台風8号と7号では死者・行方不明者19人、10月に鹿児島県に上陸した台風10号では死者・行方不明者13人の人的被害があった。エルニーニョ現象がおさまった今年、1998年のような災害が繰り返されないことを祈るのは当然だが、もしものときには適切に対応できるよう万全の備えを忘れてはならない。