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日本学術会議が熊本地震発生3か月で報告会を開催

2016.07.18

4月16日の熊本地震本震からちょうど3か月となった16日、日本学術会議は東京都港区の日本学術会議講堂で「熊本地震・3ヶ月報告会」があった。5月の緊急報告会に続く熊本地震に関する2度目の報告会となった。幅広い分野の専門家が集まり、「熊本地震」「地震に関する情報」「被災状況と対策」「土砂災害・風水害と対策」「避難・救助・救援」「復旧・復興」の6つのテーマについて関して現段階における調査・研究の成果を報告した。

3か月間の知見を総合的、分野横断的に報告

日本学術会議は、人文・社会科学、自然科学を網羅した国内の科学者の代表機関で日本学術会議法に基づき1949年に設立された。東日本大震災発生後には東日本大震災対策委員会、東日本大震災復興支援委員会などを設置して、精力的に審議を重ね、その成果を社会に広く提言してきた。

報告会を共催した防災学術連携体は、東日本大震災後の日本学術会議における専門分野の枠を超えた取り組みを引き続き発展させていくことを目的に今年1月に発足した防災減災・災害復興に関わる50を超える学会のネットワークだ。熊本地震発生直後の4月18日には防災学術連携体として初めて共同記者会見を開催、建物の耐震性を高める重要性を訴え、さらなる大規模地震の発生への注意を呼びかけた。

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報告会は冒頭、熊本地震による犠牲者を悼み黙とう。続いてあいさつに立った日本学術会議の大西隆会長(豊橋技術科学大学学長、東京大学名誉教授)は「自然災害の予測から災害が起こった場合の避難や救援救助、さらには復旧復興までの長い時間的経過で災害を捉え、それに対して学の観点からのさまざまな提言をしていこうというのがこの会の特徴。3か月間の調査、研究の成果を総合的あるいは分野横断的に聞くことができるいい機会になる」と各学会の報告に期待を寄せた。

「主要活断層で発生したのは地震本部の取り組みの成果」

熊本地震の評価を一般にも分かりやすく紹介してくれたのは日本活断層学会の鈴木康弘・名古屋大学教授だ。鈴木教授は、本震の3日後に南阿蘇村に入り、複数台の自動車が揺れによって横倒しになっている前代未聞の光景を目の当たりにした。そこから4キロ離れた南阿蘇村役場の地震観測点では本震の最大震度は6強と発表されたが、「南阿蘇村のその場所では間違いなく震度7だったはず」と述べた。震度7が2度起こったことについて、「それは益城町限定のことで南阿蘇では前震は震度5強だった。震度7が2度あったから今回の被害になったというだけの捉え方は、ややもすると違った結論を導く可能性がある」と注意を促した。

30kmにも及ぶ地表地震断層の出現は1930年の北伊豆地震以来86年ぶりのことといい、「一生に一度見るか見ないかという地震が起こった」。地震調査研究推進本部が注目していた主要活断層で発生したことにも触れて「阪神・淡路大震災以降20年間の地震本部の取り組みに一定の成果があったと捉えるべき」と述べながら、「活断層の存在は知っていたけれども何を対策していいのかわからなかったと多くの人がおっしゃる。そこにひとつのポイントがある」として、「"活断層防災推進地域"のようなものを指定して、そこにはどういう対策が必要かというように考え方を切り替える必要がある」と提言した。

「強い揺れはどこでも起きるという言い方は震度6弱までのこと、震度7はどこでも起きるわけではない」「活断層地震の予測の不確実性というものは今後は乗り越えるべき課題になった」といった言葉も印象に残った。

「耐震基準の見直しには国民を巻き込んだ議論が必要」

震度7を2度観測した熊本県益城町では木造住宅に甚大な被害が生じた。同町の被害が集中した地域の建築物を調べた日本建築学会の高山峯夫・福岡大学教授によると、同町で被害が甚大だったのは、震度7の地震が連続して発生するなど建築基準法の想定を超える大きな地震動があったことや耐震性が不足した古い木造住宅が集中していたことに加え、地盤特性や断層運動に伴うズレによる被害などの要因が考えられているという。

耐震基準が強化された2000年以降に建設された木造住宅の半数以上は無被害だったものの、倒壊被害は3%、大破以上の被害は7%あった。高山さんは「震度7の地震があったにもかかわらずこの程度の被害で収まったと考えるのか、倒壊率はもっと低くなるべきだと考えるのかどうか。建築学会だけの問題ではなく、国民の議論を通した判断が必要だ。今後、断層近くの建物の建築基準をどうするかについては学会としても検討していきたい」と述べた。

直下型地震における緊急地震速報の効果に新たな視点を与えた言及もあった。大分県別府市に在住する日本第四紀学会の竹村恵二・京都大学大学院教授は、4月16日未明の本震の直前、緊急地震速報で目を覚ましたという。速報の20秒後、湯布院盆地を震源とする震度6弱の地震が発生した。「ふつう緊急地震速報は内陸型地震では役に立たないが、今回の場合は、熊本で起こった震度7の地震による緊急地震速報のおかげで、別府や湯布院の人は救われた」と振り返った。

興味深い発表が相次いだ報告会を聴講し、さまざまな分野の研究者がそれぞれの知見を持ち寄ることによってさらなる知見が生み出されていくだろうことが実感できた。研究者の分野横断的な取り組みは、熊本地震発生メカニズムの解明を進め、今後の直下型地震対策にも必ず生かされていくはずだ。