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全国地震動予測地図2016年版が公表された

2016.06.15

政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会は10日、今後30年以内に地震によって強い揺れに見舞われる確率や揺れの強さなどを示す「全国地震動予測地図」の2016年版を公表した。14年12月に公表した前回版から1年余が経過し、15年4月には新たな評価手法に基づく「関東地方の活断層の長期評価(第一版)」を公表したことから、この間に得られた多くの知見を盛り込んで地図を更新した。

「震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」、太平洋岸では上昇

全国地震動予測地図は、日本やその周辺で発生する地震によって各地点がどの程度の確率でどの程度揺れるのかを分布図として示した「確率論的地震動予測地図」と、特定の断層が特定のシナリオで発生した場合の震度分布を示した「震源断層を特定した地震動予測地図」の2種類からなっている。

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このうち、今後30年に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率論的地震動予測地図の2016年版と前回14年版を並べたのが図1だ。北海道から九州までの太平洋岸側で色が濃くなり、確率が高くなっている全体の傾向は14年版、16年版とも変わらない。両地図の変化を詳細に示した図2からは、北海道や東北北部、静岡県から高知県までの太平洋沿岸や長野県中部地域などで確率が高くなり、長野県北部地域などで確率が低くなっていることがわかる。

これらは根室沖や十勝沖、三陸沖北部、南海トラフなどの海溝型地震の発生確率が時間の経過に従って高まっていること、長野県北部から山梨県南部に伸びる糸魚川―静岡構造線断層帯に関する評価が見直されたことなどに伴う変化だという。都道府県庁が所在する代表地点における具体的な数値でみると、2016年版は静岡市で68%、津市で62%、和歌山市で57%、高知市で73%などとなり、14年版からそれぞれ2%高まった。一方、長野市では2014年の13%から5.5%へと大きく下がった。

全国どこでも地震で被害をうける可能性がある

全国地震動予測地図および地図作製に用いられたデータは、地域における地震防災対策や耐震設計、損害保険料率などの根拠として活用されている。何より、確率や震度の分布などを色分けしているから、一般市民にとっても自分の住んでいる場所の危険度を視覚的に把握できるメリットがある。今回の2016年版の公表にあたっても、地震調査委員会は「地図を見ていただき、我が国における地震の危険性を改めて認識し、地方自治体や国民の皆様の防災意識の向上とそれに基づく効果的な地震防災・減災対策を進めるための基礎資料として本報告書を活用していただきたい」(地震調査委員長見解)と呼びかけた。

ただし、どのような利点にも落とし穴はある。全国地震動予測地図を一般市民が活用する場合にも注意が必要だ。例えば上の図1では、震度6弱以上に見舞われる可能性が相対的に高い場所(赤色)と低い場所(黄色)がある。これを見て、自分が住んでいるのは赤色ではないから安心だと考えるのは大間違いだ。むしろ、日本中どこにも0%はない点に注目し、どこに住んでいても地震への備えを怠ることはできないと受け止めるべきだ。

この点について前述の地震調査委員長見解は、「活断層による地震は、平均活動間隔が長いために地震の直前においてさえも確率の値は小さく見えるが、ひとたび大きな地震が発生すれば強い揺れに見舞われる可能性がある。これらのことを念頭に、建物の耐震化や家具の固定等、地震に対する備えをしていただきたい」とくぎを刺している。

0.1%?3%未満は「やや高い」、3%以上は「高い」

2016年版の確率論的地震動予測地図によると、熊本地震が発生した熊本市が震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は7.6%となっている。この値、素人にとっては決して大きくは見えないが、熊本でどのような地震災害があったかは周知の通りだ。数値が小さいから、色が黄色だから安全であるとはまったく言えないことがわかるだろう。

地震調査委員会の資料は、「今後30年以内に数%」が決して無視できない数値であることをさまざまな身の回りの「確率」を示して強調している。すなわち、今後30年以内に起こり得る出来事として、「交通事故で負傷」24%、「空き巣狙い」3.4%、「火災で罹災」1.9%、「ひったくり」1.2%、「大雨で被災」0.5%、「火災で死傷」0.24%、「交通事故で死亡」0.2%、「航空機事故で死亡」0.002%などを挙げている。

今回の予測地図は今年の1月1日を基準としているため、4月に発生した熊本地震の結果は反映されていない。つまり、今年1月1日の段階で、熊本市が震度6弱以上の揺れに見舞われるのは、空き巣狙いに遭遇する確率の2倍以上もあったことになる。地震動の「超過確率」(ある値を超える確率)について、地震調査委員会は0.1%?3%未満を「やや高い」、3%以上を「高い」と評価していることは覚えておこう。