1. ホーム
  2. レポート
  3. 防災の現場
  4. 熊本地震を受けて、住宅の耐震化方策の検討始まる

熊本地震を受けて、住宅の耐震化方策の検討始まる

2016.05.31

今回の熊本地震では、度重なる強烈な揺れによって多くの建物が被害をこうむった。住んでいる家が地震によって壊れないこと、すなわち住宅の耐震化こそが地震災害における最大の対策であることを私たちは再認識させられた。一方で、史上初めて同一地震・同一地域で震度7を2回観測した特異な地震活動は、住宅の耐震化を進めていく難しさも明らかにしている。

直接死の約7割が家屋の倒壊による死亡

20160531_01.JPG

総務省消防庁の5月27日14時現在のまとめによると、一連の地震による住家被害は、熊本県をはじめとする九州・山口の7県で全壊8,309棟(うち熊本県8,307棟)、半壊1万8,724棟(同1万8,672棟)、一部損壊7万9,736棟(同7万7,160棟)だった。また、熊本県が27日13時30分現在で県内の住家被害をまとめたところによると、全壊8,419棟、半壊1万9,319棟、一部損壊8万185棟となっている。

人的被害に関連しては、死者49人のうちの37人が家屋の倒壊によって亡くなっており、7人は4月14日の「前震」で、残る30人は16日の「本震」で犠牲になったという(5月1日付朝日新聞)。地震による直接的な死者の7割が住宅の下敷きになって死亡したというわけだ。

1981年と2000年に強化された耐震基準

20160531_02.JPG

甚大な住家被害は、現行の住宅耐震基準の妥当性にも再確認を迫っている。

建物の構造などについて最低限の基準を定めた建築基準法が制定されたのは1950(昭和25)年だった。その2年前には、震度7創設のきっかとなった内陸直下型の福井地震が発生していた。福井地震を教訓として耐震基準を見直した同法は、木造住宅においては、床面積に応じた必要壁量などを規定した。

その後、耐震基準が大きく見直されたのは81年。78年の宮城県沖地震を受け、必要壁量の強化などが盛り込まれた。建築基準法改正以前の耐震基準を「旧耐震基準」、改正後の基準を「新耐震基準」と称している。旧耐震基準は震度5強程度の中規模地震で「ほとんど損傷しない」ことを求めるのに対し、新耐震基準は震度6強?7の大規模地震で「倒壊・損傷しない」ことを求めている。

新耐震基準の有効性は、95年の阪神・淡路大震災でおおむね確認された。旧耐震基準で建てられた建物に被害が集中していたからだが、81年以降に建てられた建物にも一部、被害は認められた。その後の2000年に建築基準法は改正され、部材接合部の金具や壁のバランスよい配置などに関する規定を追加して耐震基準を強化した。

2000年以降の住宅にも倒壊事例

今回の熊本地震では、この新耐震基準の妥当性も焦点になっている。というのも、新耐震基準が厳格化された2000年以降建築の建物にも倒壊などの被害が出ているからだ。日本建築学会が5月14日に都内で熊本地震の被害調査速報会を開いた。報道によると、同学会が震度7を2回観測した熊本県益城町の役場周辺で2000年以降に建てられたとみられる木造住宅400?500棟を調査した結果、全壊は最小10棟、最大17棟あることがわかった。このうちの最大9棟が倒壊し、残りは大きく傾くなどしていた。接合部に必要な金具が使われていなかったり、壁の配置に配慮が足りなかったりした事例が確認されたという。

2000年に厳しくなった新耐震基準で建てられていても、決して安心できないことが明らかになったわけだ。そもそも新耐震基準は、「建築物の存在期間中に1度は遭遇することを考慮すべき極めて稀に発生する地震動に対して倒壊・崩壊するおそれのないこと」を求めているのであって、熊本地震のような複数回の「極めて稀に発生する地震動」は想定していない。設計や施工がずさんだったりすればなおさらだ。

ブログ子はこれまで、新潟県中越地震や東日本大震災の被災地を訪れて、現行の建築基準法で建てられた建物の「堅牢性」を実感していた。単なる一個人の皮膚感覚に過ぎないが、「現在の日本の建物は地震の揺れではそうそう倒れない」と思っていた。しかし、今回の熊本地震では、ダメージの様相が異なっているように見えた。それだけ地震の揺れが強大だったのだと思い知らされた。

国土交通省は5月26日、熊本地震における建築物被害の原因を分析する委員会の初会合を開いた。建築基準のあり方も含めて建物の耐震性の確保・向上方策を検討し、今年夏ごろをめどに結論をまとめる。日本建築学会も建物被害の調査を進め、報告書を取りまとめる予定だ。現行の耐震基準はどのように評価されるのか、議論の行方を注視する必要がある。