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地方公共団体が策定する業務継続計画に関心を持とう

2016.02.15

 東日本大震災の発生から来月で5年を迎える。東日本大震災の被害特徴のひとつに、津波で自治体庁舎が破壊されたことなどによる行政機能の喪失があった。災害発生時、地方公共団体は自らの被害を最小に抑え、応急対策に確実に取り組むことが求められている。地方公共団体の備えの核となるべきものが各団体が作成する「業務継続計画」だ。総務省消防庁はこのほど、地方公共団体の業務継続計画策定状況に関する調査結果を公表した。

大規模災害では行政自体が被災する

 東日本大震災の際の地方公共団体の被害はどのようなものだったのか。世界銀行のレポート『大規模災害から学ぶ:東日本大震災からの教訓』の簡便なまとめによると以下の通りだ。

●本州の北東6県(青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉)で合計62の自治体が津波被害
●このうち、最も甚大な被害のあった3県(岩手・宮城・福島)の28自治体で、庁舎に被害が発生
●さらにこのうち16自治体では、行政機能を他の建物か暫定事務所に移転する必要が生じた
●一部の自治体ではコンピュータ・サーバーが甚大な損傷を受けたり破壊されたりして、住民に関する情報や自治体業務に不可欠な重要データが失われた
●先の甚大被害のあった3県では17自治体で職員221人が死亡もしくは行方不明
●なかでも岩手県大槌町では、総勢139人の職員のうち、町長と管理職7人を含む32人が死亡もしくは行方不明
●同じく岩手県陸前高田市では295人の市職員のうち68人が失われ、宮城県南三陸町でも240人中39人が亡くなった

業務継続計画、策定済み市町村はまだ4割に満たず

 内閣府が作成した「市町村のための業務継続計画作成ガイド」(平成27年5月)でも、近年の地方公共団体の被災事例として東日本大震災で「本庁舎が使用できなくなった市町村は28自治体。庁舎内の重要データが失われた市町村も多数あった」と紹介されている。

 同ガイドによると、地方公共団体における業務継続計画とは、「災害時に行政自らも被災し、人、物、情報等利用できる資源に制約がある状況下において、優先的に実施すべき業務(非常時優先業務)を特定するとともに、業務の執行体制や対応手順、継続に必要な資源の確保等をあらかじめ定める計画」とされている。また、同計画を策定することは、「行政が被災するような大災害時にも適切かつ迅速に非常時優先業務を遂行できるようになり、住民のニーズに応えられる」として、地方公共団体に積極的な策定を呼びかけている。

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 その策定状況に関する総務省消防庁の調査は、昨年12月1日現在の全国の47都道府県、1741市町村を対象にした。都道府県では42団体が策定しており策定率は89.4%、前回平成25年8月に比較して策定団体が14団体増えた。市町村の策定済みは635団体、策定率は36.5%にとどまった。市町村の策定状況はいまだ芳しくないが、それでも前回比では407団体増えた。

 未策定の団体でも、都道府県の残り5団体はすべて平成27年度内に策定予定とした。市町村の未策定団体では、平成27年度内に146団体(8.4%)、平成28年度内に291団体(16.7%)が策定予定と回答した。669団体は平成29年度以降に策定予定という。

自治体サイトで業務継続計画を確認しよう

 前述の作成ガイドは、業務継続計画には特に重要として、「首長不在時の明確な代行順位及び職員の参集体制」「本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定」「電気、水、食料等の確保」「災害時にもつながりやすい多様な通信手段の確保」「重要な行政データのバックアップ」「非常時優先業務の整理」の6要素を挙げている。

 消防庁調査ではこうした重要要素が計画中に盛り込まれているかどうかについても詳細な結果を示したほか、策定した業務継続計画をホームページ等で公開しているかどうかも調べている。

 ささいなことのようだが、地方公共団体が策定したる業務継続計画を広く公開することには大きな意味がある。それは地域住民に対して、「行政も被災する」という当り前の事実を知らせることにつながるからだ。今後策定を予定している団体はもちろん、すでに策定済みの団体も未公開の場合はぜひ公開を検討してほしい。

 私たち住民も居住する自治体がどのような計画をもっているのかを知っておきたい。災害時、行政にはどのような課題があり、その課題さにどう対処しようとしているのか。そのうえでどのような応急対策や災害時の行政サービスが提供されるのか。これらを事前に具体的に知っておくことは、大きな備えになるはずだ。