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災害を教訓にするということ――関東・東北豪雨と広島土砂災害

2015.11.16

中央防災会議作業部会が関東・東北豪雨の検証を始める

 今年9月9日から11日にかけて関東・東北地方で発生した豪雨を気象庁は「平成27年関東・東北豪雨」と命名した。次々と発生した線状降水帯による記録的な大雨は、死者8人、重軽傷者79人、住家の全壊76棟、半壊・一部損壊約4,700棟、床上床下浸水約12,700棟を数える甚大な被害をもたらした。

 今回の災害対応を巡ってはさまざまな課題が明らかになってきた。決壊した堤防強化などのハード対策については予算の優先付けなどの観点から検証が必要だろうから、決定打とも呼ぶべき対策を見出すことは簡単ではない。一方で、ハード対策を補うソフト対策の必要性はこれまでもたびたび提起されながら、避難指示発令の遅れなどの不手際がまたも繰り返された。防災にいかに真摯に向き合ってきたか、自治体にも住民にも反省すべき点は多かったように思う。

 関東・東北豪雨による災害を検証するため、政府の中央防災会議は有識者や自治体防災関係者らによる作業部会を編成し、11月10日に初会合を開いた。今後数回の会合で、人命保護や重要機能維持のために必要な避難・応急対策を検討するという。具体的には市町村の垣根を超えた広域的な避難を含めた避難のあり方などが検討項目に挙がっていると伝えられている。国土交通省も10月から、国が直轄管理する全国109河川流域の市町村長らを対象に、洪水に関する「トップセミナー」の開催を順次始めている。

 甚大な災害を教訓として対策を練り直すのは当然だ。検証項目によっては対策が不十分だったと反省を迫られたり、これまでの対策の実効性に疑念が投げかけられたりするだろう。防災に携わる者だけでなく住民にとってもこれまでの姿勢を問われる論点整理がなされるはずだが、発生した災害から教訓を正しく学び取るためには、こうした検証作業は欠かせない。その意味で作業部会による検討結果を注目して待ちたい。

広島土砂災害の教訓から避難準備情報の積極活用打ち出す

 関東・東北豪雨に先立つ今年6月、昨年8月に発生した広島市の土砂災害に対する検討結果が公表された。上記作業部会と同様に、中央防災会議に設けられた「総合的な土砂災害対策検討ワーキンググループ」が策定した「総合的な土砂災害対策の推進について」だ。

 報告書では、広島土砂災害など昨年発生した土砂災害を振り返り、次の4つの課題があるとした。

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 報告書は続けて、(1)土砂災害の特徴と地域の災害リスクの把握・共有(2)住民等への防災情報の伝達(3)住民等による適時適切な避難行動(4)まちづくりのあり方と国土保全対策の推進(5)災害発生後の迅速な応急活動―の5つの項目をあげてソフト・ハード両面にわたる具体的な対策を提言している。

 対策の前提として報告書が強調するのは、突発性が高く人的被害に結びつきやすいという土砂災害の特徴を市町村と住民が共有するという点だ。住民に対しては、自宅周辺の土砂災害の危険性を自ら確認し、どういう状況になったらどのような避難行動をとるのか平時から決めておき、訓練を重ねておくよう促した。行政に対しては、住民の立場にたって保有する情報をわかりやすく提供し、住民の適時適切な避難行動を支援するよう求めた。

 新しい切り口の具体的な提言としては、土砂災害における「避難準備情報」の積極的活用がある。一般に同情報は「避難に時間を要する要配慮者の避難を促す情報」と受け止められているが、土砂災害の危険がある場合には「土砂災害警戒区域・危険個所等に居住する住民に早めの自発的な避難を促す情報」として活用するよう提言している。

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自助の重要性の再確認を

 報告書は、「平成26年に発生した土砂災害においては、既存の制度や防災情報がまったく通用しなかったわけではなく、市町村等が既存制度等を充分に活用できていないケース が多かったこと、そして洪水等の他の水災害と比較して突発性が高く予測が困難であるという土砂災害の特徴を把握しきれていなかったこと」が問題であると指摘している。

 特に、防災情報を生かして避難につなげるというソフト対策に関しては、"特効薬"などというものは存在しないだろう。できることをしっかりやりきるしかないが、これを徹底することが難しい。行政まかせにしない「自助」が重要であることについては、私たちも今一度考え直してみる必要がある。