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世界に「防災の主流化」訴える『平成27年版防災白書』

2015.06.30

 政府は6月19日、『平成27年版防災白書』を閣議決定した。毎年タイムリーな巻頭特集を組む同白書の今回の特集テーマは「国連防災世界会議と我が国の国際防災協力」。今年3月に仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」の経過等を報告しながら、国家が実施するあらゆる政策に防災の視点を盛り込む「防災の主流化」の重要性を訴える内容となっている。

ネパールでは耐震性の低い建物の倒壊が被害を拡大

 会議直後の今年4月、ネパールでマグニチュード7.8の大地震が発生、近隣国を含めて約9,000人の人命が失われた。同地域はインドプレートがユーラシアプレートに衝突して沈み込んでおり、過去にも地震は繰り返し発生している。地震多発地帯でありながら、実際にはレンガを積み上げただけの建物が多く、これら耐震性の低い建物の倒壊が被害を大きくしたとされている。

 ネパールの地震に対しては、日本を含む各国が緊急支援活動を実施した。今月25日には首都カトマンズで復興国際会議が開かれ、約60の国や国際機関が総額44億ドル(約5,400億円)の支援を表明した。日本も学校や住宅などの公共インフラの再建、破壊された世界遺産の修繕などの支援を約束した。

4年に1度は自然災害の死者10万人以上

 ネパール地震が示した現実は、自然災害が発生する危険性があることはわかっていながら、耐震性を高める建物の改築など防災対策が進まない地域が世界には存在するということだ。

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 今回の防災白書特集には、世界の自然災害の現状に関する各種データが紹介されている。1970年、バングラデシュでサイクロン被害によって約30万人が犠牲になった。その翌年の71年、国連の災害救援調整官事務所が設立されて国際的な緊急援助体制が構築された。70年以降の世界の自然災害による死者数を示したのが上図だ。地震や津波、サイクロンによる高潮やアフリカの干ばつが、一度に多くの人命を奪っていることがわかる。世界で年間10万人以上が災害の犠牲になったのは、70年以降2013年までの43年間で10回にも及んでいる。4年に1度は世界で10万人以上が亡くなっている計算だ。

防災対策の程度が死者数に影響

 世界で発生した自然災害を死者数と被害額で分類していみるとどうか(下図)。1984年から2013年までの30年間で世界では247万人余りが自然災害で亡くなっている。このうちアジアが47.7%、アフリカが29.3%を占めた。被害額では、アジアが47.3%、南北アメリカが36.7%だった。日本の場合はそれぞれ1.1%、17.1%だった。

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 前図で見たように、アフリカにおける災害の脅威の最たるものは干ばつだった。干ばつ自体は建物や道路を破壊するわけではないから、経済的な被害は少ないのだろう。アジアの場合は人的被害と経済的被害のどちらも世界の約半分を占めているが、日本では経済的被害は多いものの人的被害は比較的抑えられている。ネパールとの対比で言えば、建物の耐震性など事前の備えの違いが人的被害の多寡に影響を与えていると言えそうだ。

防災白書の英語版を各国に配布

 前述の仙台市で開催された国連防災世界会議には187カ国が参加した。同会議では、2030年までの各国が取り組むべき防災対策を示した「仙台防災枠組」が策定された。枠組は、災害による死者を大幅に減らすなどの7つの目標を提示している。

 今回の防災白書は、白書としては初めて英語版が作成され、各国に配布されるという。日本の防災分野における国際貢献は着実に進展しているようだ。