1. ホーム
  2. レポート
  3. 防災の現場
  4. 観光地・箱根で火山周辺警報が発表、噴火警戒レベル2へ

観光地・箱根で火山周辺警報が発表、噴火警戒レベル2へ

2015.05.17

 今年3月に公表された「火山防災対策推進への提言」を2回にわたって読み進めているさなか、またもやというべきか、箱根山が活発な火山活動を始めた。気象庁の観測によると、神奈川県の箱根山では4月26日以降、大桶谷(おおわくだに)付近を震源とする火山性地震が急増し、今月5日には箱根町湯本で震度1の地震を3回観測した。火山活動の活発化を受けて気象庁は6日、箱根山に火山周辺警報を発表、噴火警戒レベルをレベル1(平常)からレベル2(火口周辺規制)へ引き上げた。箱根山で噴火警戒レベルの運用が始まったのは2009年3月だが、噴火警戒レベルが引き上げられたのは今回が初めてという。

火山性地震が頻発、地鳴りなどの異変も

 首都圏に近い人気の観光地・箱根山の火山活動活発化は連日メディアでも取り上げられ、一般の関心も高い。この後、火山活動はどのように推移するのか、観光への影響も心配されて関係者は気をもんでいる。

 気象庁の6日付けの発表によると、箱根山では火山性地震が急増し、傾斜計によるわずかな地殻変動も観測。今後火山活動がさらに高まり、大涌谷周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるという。同庁は、噴火に伴い、大涌谷周辺では大きな噴石の飛来、風下側では火山灰や小さな噴石の降下の恐れがあるとして、危険な地域には立ち入らないよう呼びかけている。

 火山周辺警報が発表されて10日以上が経過した。気象庁は15日に471回の火山性地震を観測、国土地理院も15日までに大涌谷で最大12センチの地面の隆起を観測している。周辺では轟音のような地鳴りが強くなっているとの地元住民の報告も相次いでいるという。地鳴りや硫黄臭の発生が噴火等に直接関係するわけではないというし、地下のマグマ等の移動を示唆する火山性微動や低周波地震も現段階では観測されていないというが、予断を許さない状況が続いていることは間違いない。

3,000年前の噴火でできた大涌谷

 おそらく多くの人はこれまで、箱根山が危険な火山であるという認識はもっていなかっただろう。桜島や阿蘇山のような噴火を起こしたとはこれまで聞いたことがないし、大涌谷では地中から立ち上る噴煙に間近に迫ることもできるのだから。実際、過去に大きな噴火が発生したことはあるのだろうか。

 気象庁や地元・箱根町などの資料によると、箱根山は東西8キロ、南北12キロのカルデラ(火山活動により生成される巨大なくぼ地)をもつカルデラ火山だ。5万年前ごろから現在の神山の中央火口丘で活動が始まり、約3,000年前の噴火で現在の大涌谷や仙石原、芦ノ湖が形成されたという。

 有史以降の噴火記録はないが、12世紀後半から13世紀ごろに大涌谷付近で火砕物が降下する水蒸気噴火が発生しているほか、1786年には群発地震による山崩れで人家が破壊されたという記録が残っている。1953年には同様に群発地震による地すべりで死者10人を数えた。最近では2011年、東日本大震災の発生以降に、芦ノ湖付近、大涌谷北部などで地震活動が活発化したという。資料に当たってみれば、危険な火山ではないというのが単なる無知な思い込みだったことが分かる。箱根山は、ここ3,000年ほど大規模な噴火こそ起きていないものの、活発な火山活動を継続している、まぎれもない「活火山」なのだ。

今年3月に観光客の避難計画策定

20150517_01.jpg

 気象庁の6日付けの発表によると、箱根山では火山性地震が急増し、傾斜計によるわずかな地殻変動も観測。今後火山活動がさらに高まり、大涌谷周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるという。同庁は、噴火に伴い、大涌谷周辺では大きな噴石の飛来、風下側では火山灰や小さな噴石の降下の恐れがあるとして、危険な地域には立ち入らないよう呼びかけている。

 箱根町が2004年に作製した「箱根町火山防災マップ」(上図)には、大涌谷で水蒸気爆発(約2,000年前の爆発と同規模)が発生した場合の被害想定図が掲載されている。火口から700メートルの範囲では噴石が飛来する可能性が高く、爆発力が強いとさらに1.5キロの範囲まで噴石落下がある。火口から1キロ程度の範囲で10センチの降灰が、2キロ程度の範囲で1センチの降灰があるという。

 この間、地元では防災対策が進んできた。箱根町を始めとする周辺市町村や神奈川県などは2008年に「箱根火山対策連絡会議」を組織し、防災マップ等に基づく対策を進めてきた。登山客が被災した昨年の御嶽山噴火を契機にした昨年7月、同会議は気象庁や自衛隊の関係者を加えて「箱根火山防災協議会」へと組織変更、観光客の避難対策に特化した取り組み強化を模索している。

 今年3月には、「箱根山の噴火を想定した大涌谷周辺の観光客等の避難誘導マニュアル」を取りまとめた。マニュアルでは、「避難訓練等を計画的に実施して、避難誘導の実効性を高める」と述べている。今回の噴火警戒レベル引き上げへの対応も、こうした事前の準備が奏功してスムーズだったという。

 協議会は14日、小田原市内で緊急の会合を開き、噴火警戒レベルが3(入山規制)に引き上げられた場合の対応方針を決めた。報道によると、低周波地震や火山性微動が観測された場合、レベル3へ変更される可能性があるという。

 大涌谷周辺には観光施設も多い。水蒸気噴火が発生すれば、人的被害がなくとも、こうした施設が被害にあう恐れはあるだろう。できればこのまま何事もなく鎮まってほしいというのが関係者の切なる思いだろう。