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29項目の火山防災対策を提言--火山防災対策報告書を読む(2)

2015.04.30

 報告書は後半部の「火山防災対策推進への提言」に続く。具体的には、「火山防災対策を推進するためのしくみ」「火山監視・観測体制」「火山防災情報の伝達」「火山噴火からの適切な避難方策」「火山防災教育や火山に関する知識の普及」「火山研究体制の強化と火山研究者の育成」の6つの分野で29項目を列挙。各項目について「現状と課題」を述べた後、「実施すべき取組」を具体的に指摘している。

常時観測火山が50火山に

 いくつかの提言に注目してみよう。まず、常時監視が必要な火山の数が増えた。これまでの常時観測火山は、平成21年に選定された47火山だった。ところが同年以降、八甲田山(青森)、十和田(青森・秋田)、弥陀ヶ原(富山・長野)で顕著な異常現象が観測されたとして、報告書はこれらの3火山を新たに常時観測火山に追加するよう求めた。また今後、他の火山で異常現象が見られた場合には、速やかに火山噴火予知連絡会で検討して常時観測の必要性を議論していくべきだとした。

 御嶽山で注目された水蒸気噴火の観測体制についても提言があった。噴火の予測が難しく、火口近くに人がいれば甚大な被害がもたらされることが明らかになったからだ。水蒸気噴火の可能性がある火山においては監視カメラなどの観測機器を整備し、先行現象の検知に取り組むよう求めた。火山活動の変化の早期把握には、山小屋の管理人など日ごろ山を見ている人たちから寄せられる情報が大変有効であるとして、こうした情報提供者を「火山情報連絡員」に位置付け、気象庁や研究機関等との間で速やかに情報が伝達されるような仕組みづくりも重要であるとした。

多様な情報伝達手段を確保

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 観測体制の強化によって得られた情報を、いかに分かりやすく伝達していくのかも重要だ。平成19年に導入された「噴火警戒レベル」は噴火のリスクを5段階に分けて予報・警報を発表しているが、現行のレベル1のキーワードは「平常」。この表現は安全な状態を示しているように受け止められやすいとして、「活火山であることに留意」に変更するよう求めた(上図)。あわせて、噴火発生や噴火初期の変動が観測された際、登山者が緊急的に命を守る行動がとれるような「噴火速報」の提供についても提言。地方公共団体等の関係機関と連携し、噴火速報を迅速、的確に登山者に伝える多様な手段の検討を促した。

 情報伝達手段の多様化についても述べている。携帯電話やスマホなどの携帯端末は全国民が所持するほどに普及した。しかし、野外、特に山頂や山道などは、こうした携帯端末が最も「苦手」としている場所だ。総務省消防庁が実施した調査でも、山頂や山道における携帯電話の通信状況は万全ではない実態が明らかになっている(下図、図はいずれも報告書「別添資料」より)。報告書は、一つの情報インフラに頼るのではなく、防災行政無線、サイレン、緊急速報メール、登録制のメール、登山口やロープウェイ駅における掲示、山小屋や観光施設を介した情報伝達などの多様な伝達手段を組み合わせることを例示し、「情報の空白域」をなくすべきだと求めた。

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 消防庁の調査では、常時観測47火山のうち、避難壕(シェルター)が設置されているのは11火山、避難舎が設置されているのは4火山にとどまっている現状も示された。報告書は、こうした避難施設の整備促進に関する検討を勧めるべきだとした。

火山防災における「自助」

 防災においてはしばしば、自助、共助、公助の重要性が強調される。火山防災対策についても同じことが言える。ここまで報告書を読み進めてきて、提言の多くは公助に関わるものであることが分かる。ただ、考えてみれば、観測体制が強化され、火山防災情報が迅速・的確に伝達されたとしても、それを受け止める住民や登山者がこれらの情報を自らの身を守ることに結び付けられなければ効果は半減する。火山防災における自助の重要性について、私たち住民・登山者自らが考える必要がある。

 火山を抱える自治体のなかには、登山者に登山届の提出を義務付ける動きが出てきた。御嶽山の噴火でも、実際どのくらいの登山者がいたのか、地元の自治体などは正確に把握できなかった。登山届の提出が登山者数の把握や迅速な安否確認に役立つことは間違いない。報告書は登山届の必要性に関する検討を火山防災協議会などに求めているが、登山届を提出するのは私たち登山者の側だ。訪れようとする山の活動状況も含めて、火山というものを理解し、危険が予測される場合には登山計画を見直す、登山そのものを控える、登るときは登山届を提出して防災情報の入手方法を確認するなどの備えが求められている。