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火山災害、都市型水害を学ぶ--京都大学の連続講演会

2015.03.31

 京都大学の連続講演会「東京で学ぶ 京大の知」シリーズ17、「変動する社会と激変する自然災害」が東京都港区の京都大学東京オフィスで開かれ、全4回を終了した。前回に引き続き、今回は19、26日の講演会の概要を報告する。

「安全だ」といえる火山災害研究を目指して

 19日の講演会は、「火山災害の予測ーできて当然の火山・ハードルの高い火山ー」をテーマに、京都大学理学研究科の鍵山恒臣・教授が担当した。

 戦後最悪の57人もの人的被害を数えた御嶽山の噴火が起こったのは昨年9月。火山噴火の予知の現状はどうなっているのかと多くの人が関心をもった。今回の講演は、火山研究の最前線にいる専門家が、こうした一般の疑問に答えるもので、実に時宜を得た企画だった。

 鍵山さんはまず、有珠山の2000年の噴火について紹介した。日本の火山噴火予知が成功した象徴的な例として知られる。同年3月、度重なる火山性地震が観測されて気象庁が緊急火山情報を発表、最大で周辺住民1万5,000人あまりが避難した。実際に噴火が発生したものの人的被害はなかった。

 この噴火予知は日本の火山学の進歩を示したものだったのだろうか。鍵山さんは会場にそう問いかけた後、必ずしもそうでもなく、有珠山は噴火の予測が比較的容易な火山だったと説明した。有珠山については過去の噴火における豊富な観測経験があった。経験上、有感地震が群発すると、必ず噴火するという実績が認められていた。その意味で噴火そのものはある意味、日本の火山学にとっては予知できて「当然」だった。むしろ有珠山の場合、普段からの防災の取り組みが奏功し、事前に住民避難が完了していたこと、つまり「火山学からの情報発信に行政が初めて耳を傾けた」ことが画期的だったという。

 地震活動、地殻変動、熱異常、火山ガス異常、地磁気異常など、観測機器の機能向上などによって、現在では火山噴火の多くの前兆現象をとらえることができる。そして、こうした前兆現象をマグマの動きと関連付けて理解できる。火山噴火予知の現状について、鍵山さんはこう説明した。実際、過去30年間では、大部分の火山噴火の前兆をとらえているという。一方で、雲仙や三宅島など数千年ぶりの規模の噴火、異常は検知したが噴火しない、御嶽山などの水蒸気噴火などは噴火予知がうまくいかない局面であるという。

 印象に残ったのは、「危険だと警鐘を鳴らす研究者は多いが、私は安全だということをどこまで確かに言えるかを重視し、研究している」という言葉だ。門外漢ながら、その困難さを想像し、誠実に住民に向き合おうとする研究姿勢を感じた。

 また、講演の最後に鍵山さんが触れたカルデラ噴火についても記しておこう。1万年に1度程度発生するような巨大噴火で、火砕流と噴煙で日本全体が壊滅的な被害をうけるとされる。「国家存亡の危機となる。火山学だけの問題ではない。どうやって生存者を増やすのか、どのように国家を再建するのかなど、国民的、国際的合意が必要になってくる」と指摘した。

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地下空間では浸水深30センチの水流で歩行避難は困難

 シリーズ最終回となった第4回は26日、京都大学経営管理大学院の戸田圭一・教授が「都市水害ー地下と車に要注意ー」と題して講演した。

 都市は水害に弱い。都市開発は便利さをもたらすが、地表がアスファルトなどで覆われることで雨水の浸透・貯留機能が弱まり、下流への流出が早くなり、大きくなる。地下鉄、地下街など地下施設も多い。停電などでライフラインの機能が低下すれば、交通機能のマヒにもつながる。戸田さんは、1999年の福岡水害、2000年の東海水害、2012年8月豪雨宇治の水害など近年の都市水害の事例を引きながら、都市水害の概要を説明した。

 戸田さんは、地下空間における浸水シミュレーションの実験、自動車の水没実験など興味深い研究成果を紹介した。例えば、地下に流入してくる水流のなか人間がどの程度行動できるかを調べた。地上において30センチ程度の浸水深があり、これが地下の階段を流入してきた場合、成人男性は歩行避難が困難になる。子どもや高齢者では20センチ程度、成人女性では25センチ程度で歩行が困難になった。また、ドアの外に水深40センチの水があると、成人男性はドアを開けることが困難になる。同様に子どもや高齢者では30センチ、成人女性で35センチだった。水没すれば、車のドアの開閉にも困難をきたす。成人男性の場合、地上からの水深75?80センチが脱出限界だったという。

 こうした実験結果を示したうえで、戸田さんは「いつどこで都市水害が発生しても不思議はない。自分の身は自分で守る自助、地域で助け合う共助、地下の治水施設の整備促進などの公助をそれぞれレベルアップさせることが重要だ。危険をかぎわけ、危険を回避する判断力をぜひ身につけていただきたい」と呼びかけた。

 面白かったのは、はん濫時の自転車による避難実験だ。水路に水を流し、そのなかを自転車に乗った被験者が通行した。通常の人の歩行速度が1.3m/秒に対し、自転車では流速50センチ/秒のときに水深20センチ、流速25センチ/秒のときに水深30センチでそれぞれ歩行速度と同じになったという。そのうえで、「今回の流速の範囲では、水深30センチ程度で自転車での避難は限界となる可能性が大きい」とまとめた。以上を紹介して、戸田さんは「実際に水害時に自転車で避難する人などいないでしょうが、まあ自転車を使って避難してもほとんど意味がないことが分かりました」とお茶目な笑顔を見せた。研究者のあくなき好奇心に信頼感を抱いた。

 4回にわたって「京大の知」を学ぶことができた今回の連続講演会。講師の先生方は最新の研究成果を一般向けにわかりやく、丁寧に紹介してくれた。ブログ子も毎回楽しく聴講でき、本当に勉強になった。将来、またぜひ防災をテーマにしたシリーズを開催していただきたいと強く思った。