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地震の揺れを感知して通電を遮断する「感震ブレーカー」を導入しよう

2015.02.28

時代が変わると、地震火災も変わる

 地震による二次災害で最も恐ろしいもののひとつが火災だ。1923年に発生した関東大震災では死者約10万5,000人のうち約9万2,000人が火災による焼死だった。地震が昼食時に発生したため、かまど、七輪を火源とした火災が同時多発した。

 狭い範囲に多くの人口が集中する都市部では、大地震に襲われると火災が広がる危険性が高い。木造家屋が過密に集積している場所であれば、道路や広場などの空間は相対的に狭隘になる。そのようなところで火災が同時多発するとどうなるか。軒を連ねた木造家屋は次々と延焼して消防署などの常備消防力だけでは対処しきれなくなる。狭い道路に避難しようとする車両が殺到すれば、渋滞等によって被災地外からの消防の応援も火災現場に近づけない。

 このような「悪夢」は、20年前の阪神・淡路大震災でも神戸市内の木造住宅密集地で現実のものとなった。将来発生する首都直下地震においても、古い木造住宅が多い「木密地域」では同様の惨事が起こりうると危惧されている。現状の日本の都市は、宿命的に地震による火災に弱いのだ。

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 関東大震災でも、その後の阪神・淡路大震災でも火災は大きな脅威だった。ただ、時代の移り変わりに伴って発火源も変化している。関東大震災時の火災の出火原因調査を見ると、前述のように昼食時の煮炊きに使用していた「かまど」「七輪」が過半数を占めたほか、「火鉢」も1割弱ある(図1)。これらは当時の家庭で一般的に使われていた調理、暖房用品だった。これが平成に入ってからの阪神・淡路大震災になるとどう変わったか。阪神・淡路大震災では出火原因が確認された139件の火災のうち、「電気関係」が85件と全体の61%を占めた。「ガス・油器具」24件の3倍以上だ。2011年の東日本大震災でも事情は同様で電気火災は110件中71件(65%)に上っている(図2)。関東大震災では「電気」は出火原因全体のわずか1%に過ぎなかったから、この90年間で日本の社会は大いに電化が進んだことが分かる。

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地震と時間差で発生する「通電火災」の怖さ

 前置きが長くなったが、今回の本題は日本社会の電化の進展ではなく、通電火災の防止だ。この通電火災は阪神・淡路大震災の際に注目された。

 通電火災とは具体的にはこういうことだ。地震による大きな揺れが発生し、同時に広範囲で停電が起きる。家人は戸外に避難して自宅は無人となる。その後電気が復旧して「通電」すると、地震の揺れで倒れたストーブなどの家電製品や損傷した配線が発熱あるいは短絡(ショート)して発火する。宅内は無人で出火に気づく者はおらず、火災に至る。

 総務省消防庁の調査によると、阪神・淡路大震災では、電気機器や配線に関係する火災が地震発生2時間経過後の1月17日午前8時ごろから増加して同24時までに12件発生。翌18日以降も続発し、27日までに35件発生したという。

 このことから分かるように、通電火災は地震発生直後の停電中ではなく、電気が復旧した後に起こる。揺れによる被災を免れてようやく人心地ついたところを突かれる怖さがある。同震災の教訓から、以後「地震発生時は分電盤のブレーカーを落としてから避難する」が常識になった。

通電火災対策の切り札となりうるも、普及進まぬ感震ブレーカー

 もっそも、命を守るために一瞬を争って避難するのだ。動転していて、ブレーカーを落とすことを忘れてしまう場合もありうる。だから、こうした人為ミスを補って通電火災を防止する「感震ブレーカー」に寄せられる期待は大きい。

 感震ブレーカーとは、地震による揺れを感知して宅内の通電を遮断する装置だ。分電盤に内蔵されているタイプのほか、外付けしたおもりなどが揺れで作動してブレーカーを落とす簡易タイプ、揺れ感知装置がコンセントについたコンセント型など各種ある。

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 内閣府は今月、「震度5強の揺れでしっかり作動する」など感震ブレーカーの基準規格を盛り込んだガイドラインを公表した。漏電を感知して通電を遮断する「漏電ブレーカー」はすでに一般世帯の9割に普及しているというが、感震ブレーカーの設置率は非常に低い。内閣府の「防災に関する世論調査」(平成25年12月実施)によると、感震ブレーカーを設置していると回答した人は6.6%に過ぎない。同ガイドラインは、低い水準にとどまっている感震ブレーカーの普及を後押しする狙いがある。

 実際に利用者目線で感震ブレーカーの機能を考えてみると、いろいろ難しいものがあることがわかる。例えば、大きく揺れた瞬間に電気が落ちるのだとすると、夜間では照明が消えて避難に支障が出たり、逆に危険になったりすることもありそうだ。在宅血液透析など電動の医療機器を自宅で使用している場合には、停電は患者の生命に関わる。また人とは勝手なものだから、震度4程度でいちいち停電を強いられるのは叶わないとも感じるだろう。

 メーカーには利用者の多様なニーズにこたえる製品開発が求められている。私たち利用者側は、ガイドライン等を参考に製品の機能を見極める見識を学び、大規模地震時の火災発生を減らすために感震ブレーカーの導入をぜひ検討しよう。