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火山の基礎知識ー火山防災を考える(1)

2014.11.21

 広島市の土砂災害を受けて、前回まで4回にわたって土砂災害対策の基本を確認してきた。近年まれにみる人的被害を出した土砂災害だったことが連載として取り上げた理由だが、連載の最中に今度は御嶽山が噴火した。内閣府の11月6日現在のまとめによると、この噴火による死者は57人、行方不明者は6人、負傷者は69人を数え、国内の火山災害としては戦後最悪の被害となった。日本は災害が頻発する国であることをつくづく実感する。

 洪水や地震などの自然災害に比べ、火山災害に対する一般国民の関心や理解は低いだろうと思われる。これはおそらく、火山災害の発生が洪水などと比べて低頻度であるうえ、これによる被害が多くの場合その火山の周辺に限られるからだ。だから火山周辺の住民以外は火山災害について普段それほど意識していない。

 だが、今回の御嶽山では登山客が噴火に巻き込まれた。全国に点在する火山には風光明媚な観光地が多く、多くの行楽客が訪れる。また、ひとたび大規模な噴火が発生すれば、降灰などで広範囲に悪影響があることも再認識されられた。日本に住む私たちは皆、火山災害に対する備えも忘れてはならないのだ。

 今回から再びシリーズとして火山防災を取り上げる。火山に対する基本的な知識、国内の火山防災の現状、御嶽山噴火から学んだ教訓などの要点をまとめながら、日本に住む者として必要な火山災害に対する備えを確認していこう。

世界の活火山の7%が集中する日本

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 火山は地球内部のマグマが地表に噴出することによって形成される。マグマは地球表面のプレートを突き破って吹き出すから、世界の火山はプレートの境界部に多い(ハワイ諸島のようにプレート内部の「ホットスポット」として吹き出す場合もある)。世界には約1,500の活火山があるが、プレートがひしめき合う日本にはそのうちの110火山が集中、世界の約7%を占めている。

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 ある世代以上の人にとって、火山の状態を示す「活火山」「休火山」「死火山」という用語はなじみ深いのではないか。だが現在、学問的には活火山以外の用語は使われていない。火山の活動は数千年の時を経て再開されることも珍しくなく、人間の歴史に噴火の記録がないからといって死火山などとは言い切れないからだ。何より、御嶽山の1979年の水蒸気爆発は、国内における火山の状態の定義に大きな影響を与えたという。御嶽山は歴史に残る噴火記録がなく休火山または死火山と思われていたが、1968年に噴気活動が確認され、79年には水蒸気爆発を起こした。これ以降、御嶽山は有史以来最も活発に活動していると評価されている。現在、火山噴火予知連絡会は「おおむね過去1万年以内に噴火した火山および現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義しており、その数が国内では上述の110火山ということになる。

大きな噴石、火砕流、融雪型火山泥流は極めて危険

 火山活動は時として、人間社会に影響を及ぼして災害を引き起こす。噴火によって火山の内部から噴出されるのは気体の火山ガス、液体の溶岩、個体の火山岩塊・火山灰などと多様だ。こうした火災噴出物による直接的な災害のほか、堆積した火山灰などが大雨で泥流や土石流となって被害をもたらすこともある。

 気象庁のサイトによると、災害の要因となる主な火山現象には「大きな噴石」「火砕流」「融雪型火山泥流」「溶岩流」「小さな隕石・火山灰」「火山ガス」がある。このうち特に、大きな噴石、火砕流、融雪型火山泥流については、「噴火に伴って発生し、避難までの時間的猶予がほとんどなく、生命に対する危険性が高い」と指摘されている。大きな噴石は「直径約50cm以上」で「風の影響を受けずに火口から弾道を描いて飛散して短時間で落下」する。人体を直撃すれば当然命に関わる。火砕流は「火山灰や岩塊、空気や水蒸気が一体となって急速に山体を流下」し、「速度は時速数十キロから数百キロ、温度は数百度に達」する現象だ。火砕流に襲われれば「身を守ることは不可能」だ。また融雪型火山泥流は「積雪期の火山において噴火に伴う火砕流等の熱によって斜面の雪が融かされて大量の水が発生し、周辺の土砂や岩石を巻き込みながら高速で流下」する現象で、「広範囲の建物、道路、農耕地が破壊され埋没する等、大規模な災害を引き起こしやすい」と説明されている。

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 国土交通省の資料によると、火山災害による過去の人的被害は、国内(過去400年)では「土石流・泥流」によるものが多く、「火砕流・岩屑なだれ」と「噴石・降下火砕物」によるものはほぼ半々になっている。これに対し、世界(1900-86年)では「火災流・岩屑なだれ」と「火災泥流・洪水」による被害が9割以上を占め、「降下火砕物・隕石」の被害は極めて少ない。今回の御嶽山では、犠牲者のほとんどが噴石による「損傷死」だった。日本に特徴的な火山噴火による人的被害だったと言えそうだ。