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被害を減らす各種対策―理解し、備える土砂災害(3)

2014.10.16

 「土砂災害防止法」は、土砂災害から住民の生命を守るために各種のソフト対策を規定している。土砂災害に関する報道等でよく目にする「土砂災害危険箇所」や「土砂災害警戒区域」といった用語は主に同法に関連しており、これらの意味を正しく知ることは土砂災害対策理解の近道でもある。土砂災害防止法については、広島市の土砂災害を受けて政府が14日、改正案を閣議決定した。今回は、土砂災害対策に関して知っておきたい主要な用語の意味や改正案のポイントを確認しながら、土砂災害対策の基本について理解を深めよう。

土砂災害危険箇所

 「土砂災害危険箇所」は土砂災害が発生するおそれのある場所のこと。国土交通省の調査要領に基づいて都道府県が調査(基礎調査)を実施する。土砂災害の種類別に「土石流危険渓流」「地すべり危険箇所」「急傾斜地崩壊危険箇所」の3種に分かれる。全国に約52万5,000か所が点在し、土砂災害危険箇所のない都道府県はない。都道府県別では土石流危険渓流と急傾斜地崩壊危険箇所は広島県が、地すべり危険箇所は長野県が最多となっている。

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土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域

 基礎調査により土砂災害のおそれがあると認められた区域は「土砂災害警戒区域」(通称・イエローゾーン)に指定される。このうち特に住民の生命等に著しい危害が生じるおそれがある区域は「土砂災害特別警戒区域」(通称・レッドゾーン)に指定される。いずれも土砂災害防止法に基づき都道府県が指定する。

 警戒区域に指定されると、市町村等によって災害情報の伝達や早期避難ができるように警戒避難体制等の整備が図られる。特別警戒区域に指定されると、宅地分譲などの開発行為には都道府県の許可が必要になるほか、建築物の構造が安全であるかどうか建築確認されたり、建物等の移転等が勧告されたりする場合がある。

 国土交通省によると、上記約52万5,000か所の危険箇所のうち、基礎調査が済んだのは約38万9,000か所、区域指定されたのは約35万6,000か所にとどまっており、警戒区域等の指定が完了しているのは青森、山梨、福井、栃木、山口、福岡の6県のみという(8月末現在)。

土砂災害警戒情報

 大雨警報が発表されている状態で土砂災害発生の危険度が非常に高まったとき、市町村長が避難勧告等を発令する際の判断や住民の自主避難の参考となるよう、対象となる市町村を特定して都道府県と気象庁が共同で発表する情報。2008年から全都道府県で情報が発表されるようになった。

 土砂災害は各斜面の状況や地下水の状況などに大きく影響されるため、個別の災害の発生場所・時間・規模等を特定することは困難。また、技術的に予測困難な斜面の深層崩壊、山体の崩壊、地すべりなどは情報の対象になっていない。

土砂災害防止法改正案のポイント

 広島市の土砂災害を受け、政府は土砂災害防止法の改正案作りを進めていた。改正に当たっては、(1)警戒区域等の指定だけでなく基礎調査すら完了していない(2)土砂災害警戒情報が直接的な避難勧告等の発令基準にほとんどなっていない(3)避難場所や避難経路が危険な区域内に存在するなど避難体制が不十分な場合があるーーなどを課題とした。

 そのうえで改正案では、(1)指定の前提となる基礎調査が進んでいない都道府県に対して国が早期実施を求め、あわせて調査結果の公表も義務付ける(2)土砂災害警戒情報については、都道府県に市町村と一般住民への周知を義務付ける(3)警戒区域がある市町村は、地域防災計画に避難場所や避難経路、学校等への土砂災害警戒情報の伝達などについて明記するーーなどの対策を盛り込んだ。いずれも、住民に対して土砂災害の危険性を認識してもらい、早めの避難を促すことが目的だ。