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土砂災害の基礎知識―理解し、備える土砂災害(1)

2014.09.20

 8月20日未明、広島市安佐南区、安佐北区で大規模な土砂災害が発生した。総務省消防庁の19日17時現在のまとめによると、この災害による死者は74人、住家の全壊133棟、半壊122棟などとなっている。国土交通省砂防部によると、人的被害数は「ひとつの土砂災害」としては昭和58年の島根災害以降最大、また、「1回の降雨で、かつひとつの市町村で発生した土砂災害」としては、昭和57年の長崎災害以降最大という。

 地震・津波と自然災害の多い日本ではあるが、土砂災害は毎年必ず発生し、多くの犠牲者を出している点で際立っている。阪神・淡路大震災や東日本大震災という例外的な災害を別にすれば、自然災害による人的被害の4割は土砂災害が占める。他の災害に比しても"身近な"災害である土砂災害について、正しい知識を身につけ、正しく備える必要がある。今回からシリーズで、私たちに必要な土砂災害対策を考えていく。まずは、土砂災害に関する基本的な知識を再確認しておこう。

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土砂災害とは何か

 土砂災害とは、山やがけなどの斜面で岩石や土が移動することによって引き起こされる災害のことだ。地形学的にはさまざまな分類があるが、「土砂災害防止法」では「急傾斜地崩壊(がけ崩れ)」「土石流」「地すべり」によって生ずる被害を土砂災害と定義している。一般的に土砂災害と言えば、これらの3つを指す。国土交通省によると、今回の広島市の土砂災害では、同市内で土石流等が107件、がけ崩れが59件発生したという。

 こうした災害の形態に基づく分類とは別に、斜面崩壊の形態に着目した分類として「表層崩壊」「深層崩壊」がある。表層崩壊が地下2メートル程度までの表層土がすべり落ちる現象であるのに対し、すべり面がより深い場所で生じた深層崩壊は表層土だけでなく深層の地盤まで含んで大規模に崩壊する。がけ崩れや土石流は表層崩壊、地すべりは深層崩壊に伴って発生することが多いとされる。

3つの土砂災害の特徴

がけ崩れ

 がけ崩れは、斜面が崩れ落ちる現象。土砂災害防止法では、「傾斜度が30度以上である土地が崩壊する自然現象」としている。降雨や融雪、地震などが誘因となる。崩れ始めてからの時間が短く、人家の近くで発生すると人命が失われる可能性が高い。

土石流

 土石流は、山腹や渓流にたまった土砂が水とともに下流に押し流される現象。岩や立木を巻き込みながら雪だるま式に大きくなり、時速20~40キロの速度で流れ下って瞬く間に人家や田畑をのみ込む。多数の人命を奪う大災害に発展する場合が多い。

地すべり

 地すべりは、斜面が地下水と重力の影響でゆっくりと下方に移動する現象。土砂災害のなかでも最も規模が大きく、広範囲にわたって人家や田畑、道路や鉄道に被害をもたらすことがある。

土砂災害の発生状況

 平成15年から25年までの推移をみると、国内では毎年約1,000件程度の土砂災害が発生している。平成16年は「新潟・福島豪雨」「福井豪雨」、相次ぐ台風襲来などによって土砂災害が多発した。

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 今年も多発傾向だ。この夏は全国的に雨が多く、「平成26年8月豪雨」(気象庁が命名)による被害が北陸、東海、近畿、中国、四国など広範囲に及んだ。8月31日現在の国土交通省の速報値によると、今年の土砂災害は889件発生(土石流258件、地滑り55件、がけ崩れ576件)に上り、昨年1年間の発生件数に迫る勢いだ。死者・行方不明者はすでに79人を数え、過去10年でも最悪レベルになってしまっている。

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 日本には土砂災害が多発しやすい条件がそろっている。国土の約7割が山地・丘陵であるために斜面や急流河川が多い。こうした山地を形成した活発な地殻変動によって、日本列島の地質は複雑で不安定だという。地球の0.3%に満たない国土でありながら、世界の活火山の1割が存在し、マグニチュード6以上の地震の2割が発生する。さらに、世界平均のおよそ2倍の年間約1700ミリの雨が降り、世界有数の豪雪国でもある。

 そもそも土砂災害が起きやすい自然条件であることに加えて、土砂災害を誘発しやすい気象条件も数多く抱えているということになる。