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石垣島の津波石が教える津波防災の重要性

2014.08.31

津波石として初めて天然記念物に指定

 東日本大震災の津波は東北地方沿岸部を中心に甚大な被害をもたらしたが、日本列島は過去に何度も大津波を体験している。周期的な津波の来襲は、四方を海に囲まれた地震国・日本の宿命だ。

 過去に発生した津波の威力をうかがい知ることができるものとして、「津波石」がある。津波石とは、津波の巨大なエネルギーによって海中から陸上に打ち上げられたり、海辺で移動したりした石のことだ。岩手県宮古市には1611年の慶長大津波の津波石、和歌山県串本町には1707年の宝永地震の津波の津波石、沖縄県石垣市などには1771年の明和大津波の津波石などが残されている。東日本大震災の津波でも発生事例が報告されている。

 このうち、沖縄県石垣市の津波石5個が2013年、「石垣島東海岸の津波石群」として国の天然記念物に指定された。文化庁の文化審議会は2012年11月、文部科学大臣に史跡等の指定等について答申し、「明和大津波の被害は、多数の古文書に詳細に記録されており近年世界的にも注目を集めている。被害の大きかった石垣島東海岸の各地に240年のときを越えて残され、津波の驚異を具体的に今に伝える津波石として初の指定である」と津波石群がもつ意義を述べている。

 明和大津波は、1771年4月24日午前8時ごろ、沖縄県の先島諸島近海で発生したと推定される地震により発生した。地震の揺れによる被害はなかったが、津波による被害は大きく、宮古・八重山両諸島で死者約1万2,000人、流失家屋約2,000棟に及んだ。特に石垣島東海岸の被害は甚大で、例えば白保村では当時の人口1,574人のうち1,546人が溺死したと伝えられる。この津波の最大遡上高は30メートル程度と見られ、遡上高としては2011年東日本大震災の津波、1896年の明治三陸地震津波に次ぐ規模と推定されている。

 天然記念物に指定されたこれらの津波石に間近に接すると、東日本大震災で脳裏に焼き付いた津波襲来のイメージが重なり、津波のエネルギーの巨大さ、怖ろしさを改めて認識させられる。

安良大かね(やすらうふかね)

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 石垣島北部の平久保半島の安良の浜辺にある。直径7.5メートル、高さ2.4メートル。火山岩の一種の流紋岩で、鉄分を多く含んでいるため赤く見える。明和大津波により、元々あったところから約55メートル北側に移動したと伝えられる。

バリ石

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 平久保半島の伊原間の浜辺にある。直径9メートル、高さ3.9メートル、推定重量216トン。世界最大の単一群体サンゴの津波石として知られる。明和大津波によって海中から運ばれたことが、放射性炭素年代測定により確定している。

あまたりや潮荒(あまたりやすうあれ)

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 石垣島中部の伊野田の海岸から約200メートル離れたサトウキビ畑の中にある。推定重量300トンのサンゴ石灰岩。「あまたりや」という浜にあった岩が内陸に打ち上げられたと古文書に記されている。

高こるせ石

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 石垣島南西部の大浜の牧場の一角にある。直径7.5メートル、高さ2.4メートル。大浜村の「こるせ御嶽(うたき=拝所)」に運ばれた石が明和大津波で北側に移動したといわれている。


津波大石(つなみうふいし)

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 大浜の崎原公園内にある。長径12.8メートル、短径10.4メートル、高さ5.9メートル、推定重量1,000トンの巨大なサンゴ石灰岩。地元の郷土史家・牧野清氏が「津波大石」と命名した。約2,000年前の先島津波で現在の場所に打ち上げられ、明和大津波の際に回転したと言われる。

宮古・八重山諸島では150~400年の周期で大津波が発生

 これらの津波石に関連して2013年8月、東京大学と東北大学の研究チームがサンゴの放射性炭素年代測定により、宮古・八重山諸島の津波発生周期を突き止めた。同チームによると、これらの島々では建物や人に被害をもたらす規模の津波が、150~400年の周期で過去2400年にわたって発生しているという。

 明和大津波については、詳細な古記録や伝承が残り、地元石垣島では長年語り継がれてきた。しかし、240年も昔の出来事であり、その記憶が風化しつつあったことは間違いない。東日本大震災の津波を体験して私たちの津波防災意識が覚醒したいま、同島の津波石を巡る活発な動きは意義深い。天然記念物の指定というお墨付きを得た津波石は、見る者の眼前に大津波の脅威を甦らせる。さらには、最新の解析技術がこの地方の津波周期を明らかにして、将来の発生に注意を促すのだ。大津波は将来、再び発生する。私たちの備えが問われている。