1. ホーム
  2. レポート
  3. 防災の現場
  4. 地区防災計画に期待を寄せる「平成26年版防災白書」

地区防災計画に期待を寄せる「平成26年版防災白書」

2014.07.16

52回目の作成になる防災白書

 毎年この時期になるとさまざまな「白書」が登場する。英政府が議会に提出する報告書を「ホワイトペーパー」と呼び、日本でもそれにならって政府が作る報告書を「白書」と呼ぶようになったという由来はよく知られている。国立国会図書館によると、政府が発行する白書については、「事務次官等会議申し合わせ『政府刊行物(白書類)の取扱いについて』(昭和38年10月24日、平成13年1月6日改正)」によって定められているという。すなわち白書とは、中央官庁の編集する政府刊行物であって、政治、経済、社会の実態および政府の施策の現状について国民に周知させることを主眼とするものである。また、白書と呼ばれるものには「法律の規定に基づき国会に対して提出される報告書」「閣議へ提出される報告書」「その他、通称として白書と呼ばれるもの」の3種があり、法律に基づき国会に提出されるものを特に「法定白書」と呼ぶという。

 内閣府はこのほど、「平成26年度版防災白書」を公表した。6月20日に閣議決定され、国会に報告された。災害対策基本法に基づいて、毎年通常国会に報告することになっている法定白書である。作成は昭和38年に始まり、今回で52回目。前々年度において防災に関してとった措置、当該年度の防災に関する計画について概要を記述するほか、状況に応じたテーマで巻頭特集を組むのが基本的な構成となっている。今回は、災害対策基本法の改正など東日本大震災後に大きく変わった防災に関する制度等の記述が多いのが特徴だ(表)。

20140716_01.jpg

公助の限界が導く、自助・共助の重要性

20140716_02.jpg

 平成26年度版防災白書は、地区防災計画制度の施行を受けて、「共助による地域防災力の強化」を巻頭特集のテーマに取り上げている。特集中、何度も登場するキーワードは「公助の限界」と「自助・共助による『ソフトパワー』の重要性」だ。大規模・広域災害が発生すると、発災直後の応急活動にあたるべき行政そのものが被災する可能性が高い。事実、東日本大震災における岩手県大槌町では、庁舎が津波に破壊され、町長を含む多くの職員が犠牲になった。

 こうした公助の限界という現実を直視すれば、自助・共助の重要性は必然的に高まる。白書は、一般的な地域活動をしている人は防災活動にも取り組んでいる割合が高いという調査結果を紹介し、「一般的な地域活動(地縁活動)と防災活動の関係は深くなっており、一般的な地域活動(地縁活動)の活性化が、防災活動の活発化につながり、それが地域防災力の強化にもつながると思われる」と指摘している(図1)。また、消防団は団員数が減少傾向にある一方で自主防災組織は組織数が増加していること、事業者が災害に備えて地域と平時から連絡体制を構築する動きがみられることなどを示し、地域の防災を担う主体の広がりに期待を寄せている。

20140716_03.jpg

居住者が自ら作る「地区防災計画」

 そのうえで白書は、災害対策基本法の改正に盛り込まれた新しい「地区防災計画制度」を普及させていくべきだと訴える。地区防災計画とは、地域コミュニティレベルでの防災活動を促進するために、市町村内の一定の地区の居住者及び事業者(地区居住者等)が自発的に作成する防災に関する計画だ。

 地区防災計画の特徴は、地区居住者等が計画を作成し、それを市区町村の地域防災計画のなかに位置付けるよう求めることができる点にある(図2)。地域の事情に最も精通した居住者等が自ら作るため、地区の特性に応じた実効性の高い計画作成が期待できる。計画に基づいて活動を実践し、定期的に評価や見直しをしながら活動を継続することによって地域防災力の継続的な向上にもつながると見られている。

20140716_04.jpg

 白書は、地域コミュニティの活性化と地域防災力の向上が表裏一体の関係にあることから、地区防災計画制度の普及が進めば、「地域防災力の向上だけでなく、地域コミュニティの活性化を通して、地区の実情に応じたきめ細かいまちづくりにも寄与する可能性がある」と展望している。

 都市における人間関係の希薄化、地方における過疎化や高齢化など、地域コミュニティの弱体化は防災力向上をさまたげる主要な阻害要因だと見られてきた。地区防災計画制度はこの難題をクリアする切り札になる可能性を秘めている。白書が今回、巻頭特集のテーマとして取り上げた理由だ。