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「大規模地震防災・減災対策大綱」が強調するのも、やはり「自助」「共助」

2014.05.19

 国の中央防災会議(会長・安倍晋三首相)は去る3月、今後の大規模地震対策の枠組みを固め、「大規模地震防災・減災対策大綱」として明らかにした。今後30年以内に70%の確率で起こるとされ、仮に発生すれば国難とも呼べる事態に陥る可能性の高い南海トラフ地震と首都直下地震については、「南海トラフ地震対策推進基本計画」「首都直下地震緊急対策推進基本計画」を決定し、それぞれ対策を推進すべき市町村を指定した。首都直下地震に関しては、政府の中枢機能を維持するための「政府業務継続計画(BCP)」もあわせて公表した。

 これらはいずれも、行政が担うべき地震防災・減災業務を網羅しており、いわば「公助」の全体像を描いている。もっとも、東日本大震災という「想定外」の災害を教訓に見直しが進められたことから、公助がカバーできる範囲には限界があるとも明記。住民や地域、企業などが取り組む「自助」「共助」の重要性を強調し、社会全体の取り組みを促した。その意味で、行政だけの対策計画にとどまらず、日本に住む私たち全員が協力・連携して大規模地震に備えるための指針と位置づけるべき内容だ。

対策大綱が強調する「事前防災」

 国は従来、「東海地震」「東南海・南海地震」「首都直下地震」「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」「中部圏・近畿圏直下地震」の5つの想定地震ごとに対策大綱を策定していた。しかし、地震対策としては共通する施策も多いとして今回、既存の個別大綱を統合して一本化した。

 対策大綱では特に、「事前防災」の重要性に多くのページを割いた。建築物の耐震化、津波対策、火災対策、土砂災害・地盤災害対策、ライフラインおよびインフラの確保対策、長周期地震動対策、液状化対策、リスクコミュニケーションの推進、防災教育・防災訓練の充実、ボランティアとの連携、総合的な防災力の向上、地震防災に関する調査研究の推進と成果の防災対策への活用の12項目を挙げ、事前の備えを強調した。わが家の耐震性はどうか、長周期地震動や液状化の危険はあるか、火災を発生させない備えはできているか――私たち住民としても、今一度確認しておくべき項目も多い。

全国の4割の市町村が「南海トラフ地震防災対策推進地域」に

 南海トラフ地震では、茨城から沖縄までの29都道府県707市町村が「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定され、このうち沿岸部の139市町村は「津波避難対策特別強化地域」に指定された(地図はすべて中央防災会議資料より引用)。推進地域に指定された市町村は減災施策などの計画を策定する必要があり、指定地域内にある百貨店や病院など不特定多数が利用する施設では避難計画を策定することが新たに求められることになった。特別強化地域では、避難施設整備などにかかわる費用の国庫補助率が引き上げられる。

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 「南海トラフ地震対策推進基本計画」は、数値目標を示して対策を進めていくことを明記した。今後10年間の取り組みで、想定死者数を8割減、建物の全壊棟数を半減させるとし、具体策として、住宅の耐震化率を79%(平成20年時点)から平成32年に95%に高める、家庭での家具固定率を40%(平成25年度時点)から65%に高めるなどとしている。

 住宅の耐震化や家具の固定は、私たち個々人が自らの安全のために取り組むべき項目だ。まだ取り組んでいないという人は、今からでも遅くない。ぜひ対策を進めよう。取り組み方がわからない、アドバイスがほしいという向きは、積極的に居住する市町村に問い合わせてみてほしい。建物の耐震診断などには、公的な支援制度が用意されている場合もある。行政のサポートを上手に活用して、わが家の地震対策を進めよう。

首都直下地震でも建物耐震化などで被害を大きく軽減可能

 首都直下地震では、東京、神奈川など10都県310市区町村を「首都直下地震緊急対策区域」に指定、このうち、千代田、中央、港、新宿の都内4区については「首都中枢機能維持基盤整備等地区」とした。「首都直下地震緊急対策推進基本計画」では具体的な数値目標は示していないが、建物の耐震化率を100%にした場合には全壊棟数と死者数が約9割減少するなどの試算を示し、予防対策と円滑な応急対策で被害を大きく減少させると強調した。

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 「政府業務継続計画」では、総理大臣官邸が被災した場合には、官邸機能を内閣府、防衛省、東京都立川市の立川広域防災基地の順序で移すことなどを明らかにした。さらに過酷な事象に直面した場合には、東京圏外の政府代替拠点のあり方等も検討するした。

 住民の立場からしても、首都直下地震の対策と他の大規模地震とのそれは大きく異なるところはない。ただし、首都圏は巨大な人口を抱えており、膨大な帰宅困難者の発生がことのほか危惧されている。都心などで被災した場合、むやみに移動せず、まずは自らの安全を確保するといった対処の基本を家族とともに確認しておきたい。