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住民として知っておくべき避難の心得――見直された「避難ガイドライン(案)」に学ぶ(1)

2014.04.18

見直しの必要性が高まっていた平成17年策定のガイドライン

 内閣府はこのほど、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を見直し、新しいガイドライン案として公表した。水害、土砂災害、高潮、津波を対象に、市町村が避難勧告等の発令に備えて検討しておくべき事項をわかりやすく示しながら、「空振り」を恐れず早めに発令することが基本とした。ガイドライン案は今年度から試行を始め、運用実態や新たな技術・知見等を踏まえて見直していくという。

 ガイドラインは平成17 年に策定された。しかしその後も、避難の遅れなどによる犠牲者は後を絶たず、特別警報など新たに運用が始まった防災気象情報についても避難勧告等の判断にどう活用すればよいのか明確でないなどの課題があった。昨年10月の伊豆大島台風26号災害でもこうした諸課題は顕在化しており、ガイドラインの見直しは急務だった。

 新ガイドライン案は、基本的には避難勧告等の発令を判断する市町村向けに作られている。だが、住民が自主的に危険を判断して避難することの重要性を強調したうえで、住民が取るべき基本的、具体的な行動についても詳しく述べている。これは、旧版にはなかった新ガイドライン案の特徴だ。その意味で、私たち一般住民にとっても一読すべき、有益な内容となっている。

 今回と次回の2回に分けて、新ガイドライン案の概要を紹介していく。住民として知っておくべき「災害から命を守るポイント」を再確認することにもつながるはずだ。

災害から命を守るのは住民各人、市町村の役割は知識と情報の提供

 新ガイドライン案の第1章は「市町村の責務と各人の避難行動の原則」だ。ここでまず、災害対策基本法における市町村の役割として、「当該市町村の住民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、当該市町村の地域に係る防災に関する計画を作成し、実施する責務を有」し、「市町村長は、災害が発生するおそれがある場合等において特に必要と認める地域の居住者等に対し、避難勧告等を発令する権限が付与されている」と説明する。さらに、避難勧告に従わず被害を受けるのは本人自身であるから避難勧告等に強制力が伴わないことを指摘し、「一人ひとりの命を守る責任は行政にあるのではなく、最終的には個人にあるという考え方に立っている」と言及している。

 新ガイドライン案が冒頭でこの点を強調していることを、私たち住民もよくよく理解しておく必要があるだろう。新ガイドライン案は続けて、「住民の生命、身体を保護するために行うべき市町村長の責務は、住民一人ひとりが避難行動をとる判断ができる知識と情報を提供することであり、住民は、これらの情報を参考に自らの判断で避難行動をとる」と述べる。まさにこの一文に、災害時の避難のポイントは尽くされている。避難勧告等がいかに適切に確度高く発令されたとしても、避難するのは、ほかの誰でもない私たち住民自身だ。自分の命は自分で守る、この厳格な現実は動かしようがない。

 また同章では、水害のうち「平地を流れる小河川の洪水による氾濫を含む水深の浅い浸水」については、屋内の安全な場所に待避していれば命に関わることはほとんどなく、ゲリラ豪雨のような極めて短時間の局所的な大雨で発生する場合が多いとして、「避難勧告等の発令は困難で、基本的には各人の判断で危険な場所から退避する」べきだと述べている。そのうえで、「避難勧告等の意味、適切な避難行動のあり方、避難勧告等を発令する災害、発令しない災害があること等を普段から住民に周知徹底し、災害対応の訓練を重ねることが重要である」と市町村に促している。そうであれば私たち住民は、避難勧告の意味や適切な避難行動のあり方を理解し、市町村から避難勧告等が発令される場合とされない(できない)場合があり得ることを知り、日頃から市町村などが実施する防災訓練に積極的に参加すべきだということになる。

避難勧告等は空振りがありうると承知しておこう

 新ガイドライン案第1章は、各人の避難行動の原則として表1の項目を挙げている。ここに示されているのは、避難行動をとるべき住民自身が災害に真摯に向き合うべきであるという強いメッセージだろう。自分はどのような災害の危険性がある場所で生活しているのか認識しておくこと、テレビなどで気象注意報などに接したらその推移に強い関心を抱くこと、避難勧告の発令といった市町村の判断を待たずに危険を察知したら避難行動をとるべきであること、気象は急変する場合があることを理解し早め早めの行動を心がけること――。当たり前のことばかりではあるが、災害から逃げ遅れて犠牲になる人が絶えない現実を前にすれば、私たちは謙虚にこうした指摘を受け止めるべきだ。

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 表2は、避難行動に関するより具体的なアドバイスだ。これらの対応を基本とし、その時々に臨機応変に対応できるようにしたい。特に、避難勧告の受け止め方については(表中の番号5~7)、避難勧告は発令されない、発令できない場合もあり、避難勧告の発令を待つという「市町村任せ」の考えが仮にあるとすれば、非常に危険であることを理解しよう。同じ意味で、発令された避難勧告が空振りに終わる可能性が高く、被害がなければ幸運であったと認識すべきことも承知しておきたい。市町村が空振りを恐れて避難勧告を発令せずに被害が出たとすれば、それこそ最悪ではないか。

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