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わが家を守る首都直下地震の事前対策――内閣府の首都直下地震被害想定(2)

2014.01.15

住宅の耐震化はすべての対策の大前提

 首都直下地震に限らず、あらゆる地震に対して有効な対策は建物の耐震化だ。建物が地震の強烈な揺れに耐えて倒壊を免れれば、何より建物の下敷きになって死亡する最悪の事態を避けることができる。倒壊建物が減ることは、火災の延焼、避難者の増大、救助活動の妨げといった被害拡大要因を抑えることにもつながる。内閣府が公表した首都直下地震の新想定でも、耐震化の推進はあらゆる対策の大前提だと強調している。

 新想定は対策による減災効果についても示している(図1)。住宅の耐震化率は2008年現在で全国平均約79%、東京都約87%。この状態で想定する首都直下地震(都心南部直下地震)が発生すると、17万5,000棟が倒壊し、建物倒壊による死者は、冬の深夜のケースで1万1,000人に上ると想定されている。しかし、耐震化率を100%にまで高めることができれば、倒壊建物は2万7,000棟、死者は1,500人とそれぞれ約7分の1にまで減らすことが可能だという。

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 建物の耐震化は、1981年に改正された建築基準法に基いて建築されているかどうかが目安になる。大雑把に言えば、80年以前に旧基準で建てられた建物は新基準建物への建て替えか新基準並の耐震性を確保するための補強などが必要になる。しかし、実際に耐震改修するとなると多額の費用が掛かり、おいそれとできる対策ではない。国や地方公共団体は耐震診断や耐震改修などに際してさまざまな支援制度を設けている。古い住宅に住んでいる人は、まずは市区町村に耐震化について相談してみよう。

 もっとも、81年以降に建てられた住宅に住んでいるから安全だと油断はできない。築年数が経過するほど耐震性能が低下するのは当然だ。今後安心して住んでいくためにも、老朽化によって劣化した部分を補修するなどのメンテナンスが必要になると心得るべきだ。

家具類の転倒・落下防止対策をさらに進めよう

 賃貸住宅に住んでいるなど、建物の耐震性を自力で解決できないこともある。そのような場合でも、せめて家具類の転倒・落下防止対策は確実に実施しておきたい。東京消防庁の調査によると、近年地震でけがをした人の3~5割は家具の転倒・落下が原因だったという。家具類の転倒・落下はけがだけでなく、室内が混乱して避難の妨げにもつながる。ホームセンターなどで市販されている転倒防止器具などを利用すれば安価で効果の高い対策ができる。

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 家具等の転倒・落下防止対策実施率の現状は全国平均で約26%(内閣府調べ)、東京都では約59%(東京消防庁調べ)という。内閣府の新想定は、実施率が100%になった場合、屋内収容物の転倒や落下物などによる死者は1,100人から400人に、負傷者は6,400人から3,500人に減ると見ている(図2)。東京都の数値に示されるように、関東地域は全国に比較して対策の実施率は高めであるらしい。新想定は、家具類の転倒・落下防止対策を推進することにより、「死者数だけでなく重傷者数の低減により、緊急医療の需要の軽減につながり、重篤患者の救命にも資する」とも指摘している。ぜひとも、防災意識をより向上させてさらなる被害軽減を目指したい。

感震ブレーカーで大幅に減らせる火災による死者

 新想定では、火災による被害の拡大に特に注意を促している。実際、1923年に発生した関東大震災では、10万5,000人とされる死者の87%が火災による焼死だった。この時は、地震発生が昼食時に重なって火災が同時多発、おりからの強風にあおられて瞬く間に広がり、鎮火したのは2日後だったと言われている。古い木造住宅が密集した地域がいまだ多く残る都内などでは、地域を挙げた火災対策が急務だ。

 各家庭でも出火防止に取り組む必要がある。防炎・難燃の繊維製品を選んだり、対震自動消火装置を備えた電熱器具を使用したりして普段から火の用心の意識を高めておこう。都市ガスなどについては、強い揺れを感じるとガスの供給を遮断するシステムが普及しているが、電気の供給を停止する「感震ブレーカー」の設置も検討したい。これは「通電火災」を効果的に防ぐことができる。通電火災とは、地震後に電気が復旧した際、ブレーカーを落としていない状況で発生する。通電によって、地震で倒れたストーブが火元になったり、傷ついた電気コードがショートして発火したりする。阪神・淡路大震災で多く見られた。

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 感震ブレーカーには配電盤型やコンセント型などいくつか種類がある。数千円から数万円の費用がかかるというが、こうした電気関係の出火防止対策を進め、初期消火の成功率が向上した場合には、首都直下地震の火災による死者は1万6,000人から800人と20分の1に減らせるという(図3)。

 今回は、内閣府の新想定が例示した減災効果をもとに、わが家を首都直下地震から守る事前対策について紹介した。費用の問題など難しい面もあるだろうが、各家庭の状況に応じて、できることから取り組みたい。