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東日本大震災を教訓に被害想定を見直し――内閣府の首都直下地震被害想定(1)

2013.12.30

死者2万3,000人と前回(2004年)想定の2倍に

東日本大震災を教訓に首都直下地震の被害想定の見直しを進めていた内閣府は12月19日、新たな被害想定結果を公表した。今後30年以内に70%の確率で発生するとされるマグニチュード(M)7クラスの地震では、最悪の場合、死者2万3,000人、建物の全壊・焼失61万棟、経済被害95兆3,000億円に上るという。想定結果を受けて、政府は今年度中にも対策のマスタープランとなる地震対策大綱を改定し、これを実現するための具体策などを定めた地震防災戦略の策定を急ぐ。

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政治・経済といった国の中枢機能が集中する東京を巨大な地震が直撃すれば、国の存亡にもかかわる甚大な被害が生じかねない。首都直下地震は、南海トラフ巨大地震と並んで国の防災対策上の大きな課題になっており、すでに2004年に国の被害想定が示されて各種対策が進んでいた。東日本大震災の発生後、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大地震・津波」を検討すべきとの考え方が示されたことから、中央防災会議の作業部会が改めて検討していた。

新想定と2004年の前回想定にはいくつか大きな違いがある。まず、前回想定では荒川河口付近で発生するM7.3の「東京湾北部地震」を対象に、死者1万1,000人、建物全壊・焼失85万棟、経済被害112兆円としていた。新想定では、首都機能へのダメージが大きいとして東京都大田区付近を震源とする「都心南部地震」(M7.3)に変更した。前回想定以降、耐震・不燃化が進んだために建物・経済被害は減ったが、火災からの逃げ惑いによる人的被害を多く見積もったことで死者は2倍に増えた。

また今回は、首都直下で発生する地震に加え、相模トラフ沿いで発生するM8クラスの海溝型地震も含めて検討し、死者7万人、建物全壊・焼失133万棟、経済被害は160兆円に上ると試算した。当面の発生可能性は低いものの長期的な対策の対象として考慮するよう求めた。

同時多発する火災から逃げ惑い、木造住宅密集地では死者が増える

都心南部直下地震が発生すると、多くの区部で震度6強以上の強い揺れに見舞われる。多数の古い木造家屋が倒壊し、家屋の下敷きになってなくなる人が多数発生する。揺れによる全壊家屋は17万5,000棟、建物倒壊による死者は約1万1,000人に上るという。

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地震発生直後から各所で火災が同時多発し、環状6号線から8号線の間に広がる木造住宅密集地域では大規模な延焼火災が発生する。四方を火の手で取り囲まれたり、「火災旋風」が発生したりして、逃げ惑ううちに大量の人的被害が生じる恐れがあるとした。地震火災による建物の焼失は最大41万2,000棟、火災による死者は最大1万6,000人に及ぶ。火災旋風とは、同時多発する火災によって局地的に上昇気流が起こり、炎を伴う旋風が発生して竜巻のようにとぐろを巻いて移動する現象だ。中心部は秒速100mを超える炎の旋風で、関東大震災で発生したときには人や大八車を空中に吹き飛ばしたという。

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巨大過密都市・東京を襲う被害の様相は深刻だ。環状8号線の内側を中心に道路交通は著しく麻痺する。火災や倒壊家屋から逃れた膨大な数の避難者が避難場所に押し寄せる。避難所には近隣住民ばかりでなく、事業所の従業員、外出者の一部が移動し、収容能力を超える避難所が出る。避難所から溢れた人たちが公園や空き地に滞留、野宿せざるを得ない状況も生じる。物流機能が低下することによる物資不足、電力供給の不安定化、情報の混乱、復旧・復興のための土地不足が顕著になる。

事前防災の重要性を強調し、発災時の3段階対応を求める

新想定では今後の対策の方向性も示し、被害を減らすための事前防災の重要性を強調した。首都機能を守るために、政府全体としての業務継続体制の構築、執行体制・執務環境の確保、企業の事業継続のための備えなどを求めた。また、建築物・施設の耐震化にこれまで以上に取り組み、出火防止や延焼被害の抑制対策もさらに充実させるべきだとしている。

また発災時には、(1)発災直後の対応(概ね10時間)(2)発災からの初期対応(概ね100時間)(3)初期対応以降――の時間経過による3段階に分けた対応が必要とした。(1)では国の存亡にかかわる初動として、災害緊急事態の布告、国家の存亡にかかわる情報発信、災害応急対策実施体制の構築などを求めている。(2)では「命を救う」を目的に救命救助活動、災害時医療、火災対策を展開、(3)では生存者の生活確保と復旧を目指すとしている。

都心南部直下地震の震度分布図、ライフラインの被害、生活に与える影響など、内閣府の被害想定の概要をまとめた図表を掲載した。次回は、新しい想定で取り上げられた対策のうち、個人として取り組むことができる諸対策を中心に紹介する予定だ。