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長周期地震動で超高層ビルの倒壊の恐れは低いが、最上階は脅威的な揺れ

2013.12.15

南海トラフ巨大地震の長周期地震動を想定して破壊実験

独立行政法人「防災科学技術研究所」と大手ゼネコンなどの研究グループはこのほど、兵庫県三木市にある大規模実験施設「E?ディフェンス」で、高層ビルがどの程度の「長周期地震動」に耐えられるのか確かめる実験をしました。高層ビルの模型を実際に壊れるまで揺らす大がかりな実験です。

各種メディアによると、実験に用いた模型は高さ25mの鉄骨造り。実際の3分の1の模型で、高さ75m、およそ20階建ての超高層ビルに相当します。この模型を実際に揺らしてみた結果、マグニチュード(M)8.7で梁や柱が損傷しましたが、倒壊することはありませんでした。これはM9クラスの南海トラフ巨大地震発生時に東京や名古屋などで想定される、耐震基準の2倍余りの強さの揺れでした。その後、想定される地震動の3.8倍の揺れで模型は崩壊しました。このことから、1980年代以降の耐震基準で建築されたビルであれば、南海トラフ巨大地震の長周期地震動に耐えられると考えられるそうです。

「超高層ビルは南海トラフ巨大地震でもひと安心」――と考えるのは早計です。なぜなら実験結果が示しているのは、建物が倒れる可能性は低いということだけだからです。実際には、高層階では大変な揺れに見舞われ、極めて危険な状況になるでしょう。実験でも、模型最上部の水平方向の揺れ幅は約60cmを示しました。20階建てビルの最上階では3倍の約1.8mになる計算です。

東日本大震災でも発生した長周期地震動

長周期地震動とは、通常の地震の震動とは違い約2~20秒という長い周期でゆっくり揺れる振動です。南海トラフで発生するM8級の大地震の際には、この長周期地震動が生じやすいとされています。このような長い周期の震動は、超高層ビルの震動と一致しやすく、低層、中層建物ではほとんど揺れを感じないのに、超高層ビルは共振して大きく揺れる場合があります。

東日本大震災でも観測されています。長周期地震動によって東京の「新宿センタービル」(54階建て、高さ223m)は約13分間にわたって揺れ、最上階では1mを超える横揺れがありました。震源から約770キロ離れた大阪府の「咲洲庁舎」(55階建て、高さ256m)でも約10分間揺れ、最上階付近の揺れ幅は最大約2.7mに達したといいます。これほどの長時間、これほどの揺れ幅で揺られるのは、まさに生きた心地がしないほどの恐怖でしょう。

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必ずしも超高層ビルではありませんが、東京消防庁は東日本大震災における高層住宅の室内の状況について調査しています。東日本大震災の地震の際、家具類の転倒・落下・移動(60cm以上の移動)の状況がどうだったのかを都内の共同住宅で調べました。その結果、高層になるほど転倒等の発生割合が高くなっていたことが分かりました。【右グラフ】1~2階では移動割合は16.8%にすぎなかったものが、11階以上では47.2%と3倍近くに跳ね上がっていました。


国土交通省によると、高さ60m以上のオフィスビルやタワーマンションなど超高層ビルは全国に約2500棟あり、その9割が首都圏、大阪、名古屋に立地しているそうです。こうしたビルの高層階では、キャスター付き家具の移動対策としてキャスターロックを掛けておくなど、家具類の転倒防止対策を必ず実施しておくべきでしょう。


速報を試験運用、実用化目指す

気象庁は今年3月から、「長周期地震動に関する観測情報」の発表を試験的に始めています。全国を188の地域に分け、地震の揺れの大きさを4段階で評価した「長周期地震動階級」として、発生10分後をめどに気象庁のサイトに掲載しています。【表】4段階の階級が示す状況は、「気象庁震度階級関連解説表」に準じた表現となっており、最大となる「長周期地震動階級4」では、人は「立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れに翻弄される」、室内の状況は「キャスター付き什器が大きく動き、転倒するものがある。固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある」とされています。

20131215_02.jpgのサムネール画像のサムネール画像

この情報は、現在のところテレビやラジオでは速報されていません。主に対象となる超高層ビルの棟数が限られる上、情報が錯そうして混乱することを避けるために、津波警報など緊急を要する情報を優先して伝達するためです。将来的には、緊急地震速報のように、揺れが届く前に伝達する速報として導入したいとしており、気象庁が検討を進めています。