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台風26号で注目された「特別警報」について理解しよう(2)

2013.10.31

市町村による住民への周知は「義務」

特別警報を発表する目的は、住民に最大限の警戒を呼び掛けることです。すなわち、特別警報が発表されたことは住民に必ず伝わらなければなりません。このため、特別警報の導入に際して、市町村に対する住民への周知義務が課されました。これまでの警報・注意報の場合、住民への周知義務があるのは気象庁やNHKなどに限られ、市町村の周知活動は努力義務にとどまっていました。この点も特別警報の大きな特徴です。

特別警報が発表されたことは、市町村の広報車や防災行政無線、テレビやラジオ、インターネットなどを通じて伝えられます。私たち住民としても、どのような手段で特別警報を入手できるかを事前に知っておく必要があります。市町村によっては、広報車や防災行政無線以外にも、携帯電話のメールサービス、ケーブルテレビやコミュニティFMによる配信や放送、消防団や自主防災組織メンバーによる口頭伝達など、多様な周知方法を用意してます。自分が住んでいる市町村がどのよう周知方法を提供しているのか、普段から確認しておきましょう。

特別警報が発表されたら、命を守る行動をとる!

特別警報が発表されたらどう行動するか――。防災気象情報を有効に活用するための最大のポイントは、この点にあります。防災気象情報は「災害から身を守るための情報」なのですから、何はさておき、わが身を守ることが最優先です。特別警報が発表されるということは、住んでいる地域で数十年に一度の災害、これまでに経験したことのない災害が発生する恐れが著しく高まっているということです。すぐに命を守る行動をとる必要があります。

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気象庁が作成した【上図】を参考に、住民がとるべき行動を確認しましょう。例えば、大雨の場合を想定してみます。災害発生の恐れが高まると大雨注意報が発表されます。気象情報に注意しながら、非常持出品や家の周囲の安全を点検したり、避難場所を確認したりしていざというときの避難に備えます。雨が降り続いて大雨警報が出されたら重大な災害が発生する恐れが高まった段階です。市町村は必要な地域に避難勧告や避難指示、避難準備情報を発令します。これらが発令された場合には直ちに避難しますし、そうでない場合にも早めの自主避難を検討します。さらに大雨が降り続くと、いよいよ特別警報が発表されます。避難所へ避難する、外に出ることがすでに危険な場合は家の中の安全な場所にとどまるなど、命を守るために必要な行動をとります。

命を守るための行動の具体例として、気象庁は【下図】のように場所別対応法を示しています。特にがけの近くにいる場合には、伊豆大島で発生したような土砂災害の危険があります。土砂災害は命にかかわる重大な災害になる可能性が極めて高いので、外に出ることが危険な場合には、がけからできるだけ離れた2階以上の場所に移動するか、近所の鉄筋コンクリート造の建物の上層階に避難します。一刻も早い判断と行動が命を守ることをくれぐれも忘れないでください。

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特別警報の発表第1号は9月の台風18号

特別警報が運用を開始したのは今年8月30日、発表第1号はそれからおよそ2週間後の9月16日のことでした。愛知県豊橋市付近に上陸した台風18号による大雨で、京都、滋賀、福井の3県では、48時間雨量が「50年に1度」の規模を上回った観測地点が74か所に上りました。特別警報発表基準のひとつが「50年に1度の水準になる地点が50か所以上」であるため、気象庁は16日午前5時過ぎ、これら3県に対して特別警報を発表しました。

その後の各メディアの報道によると、特別警報の発表を受けて桂川沿いの住民約27万人に避難指示を出した京都市における避難者は約2500人でしたが、それでも同市担当者は特別警報の発表によって避難指示を発令でき、「避難勧告よりも避難者が増えた」と評価しています(「産経新聞」9月16日)。ただし、運用が始まったばかりで混乱もあり、京都と滋賀の一部自治体は住民に周知していませんでした。特別警報に対する住民の認知が不足している現状で、特別警報の周知をすれば混乱を招くという判断があったのかもしれません。また、特別警報が出された3府県のなかでは被害が少なかった市町村もあり、現段階で都道府県単位に出される特別警報のあり方を市町村単位に見直すべきだと主張する首長も多くいます(「朝日新聞10月15日)。

伊豆大島では特別警報が出されなかった

一方、10月の伊豆大島の場合は特別警報が出されませんでした。これも特別警報が都道府県単位で発表されることに関連しています。記録的な大雨だったにもかかわらず、伊豆大島だけでは「府県(単位)程度の広がり」という基準を満たせなかったのです。

警報や注意報は市町村単位で発表されますが、特別警報の場合は当面府県程度の広がりを対象にしており、伊豆大島のような島しょ部では特別警報は出にくい実態が明らかになりました。気象庁は現段階で、特別警報を市町村単位で発表するのは技術的に難しいという立場です。そのため、今後島しょ部で記録的な大雨が降った場合には、気象庁が対象となる市町村に直接電話をして、特別警報級の現象が生じる可能性があることを伝達するとしています。

「特別警報が出されない=安全」ではない

近年、観測技術や機器の発達によって防災気象情報についても高度化、多様化しています。新しい知見を積極的に導入して、私たちの社会生活に役立てることは大変重要なことです。ただし、このことには技術的な限界が伴うことも、私たちは理解する必要があります。特別警報は重大な災害発生の切迫性を伝えるものですが、これが出されないからといって安全なわけではありません。また従来の注意報、警報を過少評価することも誤りです。

特に大雨による災害などは時間経過とともに危険度が増していくのは常識的に理解できるでしょう。気象庁の発表や市町村の避難勧告などが出されていない段階であっても、「自分の命は自分で守る」という防災意識を常にもって、早め早めの避難を心がける必要があります。