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台風26号で注目された「特別警報」について理解しよう(1)

2013.10.29

今月、台風が相次いで日本列島に接近し、各地に深い爪痕を残しました。特に伊豆大島では、台風26号による大雨で土石流が発生して集落を襲い、多くの死者・行方不明者を出しました。行方不明者の捜索が続くさなか、今度は台風27号が接近、全島に避難勧告が出されるなど緊張が続きました。

大きな被災を経験するたびに、私たちには反省点、教訓点が残されます。今回の伊豆大島の被災についても同様で、いくつかの課題が浮き彫りになりました。26号の接近時、島内では避難勧告等が発令されず、今夏運用が始まったばかりの「特別警報」も伊豆大島には出されませんでした。防災気象情報と避難行動のあり方に関する議論は大規模被災のたびに繰り返されます。

今回の伊豆大島災害において、防災行政上の問題点は明らかでした。自治体の首長が避難勧告を発令する際には、気象庁が発表する防災気象情報を有力な判断材料として活用します。しかし特別警報のような新しい情報が次々と登場するなかで、各種情報と避難勧告発令判断との関係が整理されていないとすれば、これは直ちに手を着けるべきでしょう。後に述べますが、特別警報の運用についても改善を求める要望が出されています。

とはいえ、どんなに防災気象情報の確度が向上し、防災行政が完璧に対応したとしても、最終的に重要なのは私たち住民側の災害に向き合う意識です。警報が出され、避難勧告が発令されていても、肝心の住民の避難行動に結びつかなければ意味がありません。反対に、警報や避難勧告がどうであれ、住民が自発的に安全な場所に避難すれば被災を免れることができるでしょう。防災気象情報を適切に活用しながら避難の判断基準を明確にしておくことは、行政だけの問題ではなく、私たち自身の問題でもあります。

今回の被災を教訓に、新しい防災気象情報である特別警報について理解すべく、その要点をまとめてみました。

「注意報」「警報」の上位に「特別警報」を新設

各種の注意報や警報、台風や洪水に関する情報など、防災気象情報にはさまざまな種類があります。これらは、天気予報のような「くらしに役立つ情報」とは異なり、「災害から身を守るための情報」です。私たちが防災気象情報を理解しにくいと感じるのは、このように気象庁が発表する情報の種類の多さによるところが大きいかもしれません。

各情報にはそれぞれ重要な意味と役割があるので軽視するわけではありませんが、災害から身を守るための情報体系の基本は「注意報」と「警報」です。注意報とは「災害が起こるおそれのあるとき」に、警報とは「重大な災害が起こるおそれのあるとき」にそれぞれ発表されます。警報には「大雨」「洪水」など7種類、注意報には16種類あります。

この基本的な構造に大きな変更がありました。それが今年8月30日から運用が始まった「特別警報」です。読んで字のごとく、「警報の発表基準をはるかに超えるような数十年に一度の大災害の発生が予想される場合」に発表されます。でも考えてみれば、重大な災害が起こるおそれがあるときには警報が発表されるのでした。既存の警報に加えて特別な警報を導入するのは、屋上屋を架すようなことにはならないのでしょうか。

特別警報は「気象庁の危機感を伝える」特別な災害事に発表される

気象庁は特別警報の導入にあたって、東日本大震災と平成23年台風12号を例として次のように説明しています。つまり、東本大震災では大津波警報を出したものの住民の迅速な避難行動には結びつかなかった。平成23年台風12号による紀伊半島を中心にした大雨でも、警報により重大な災害への警戒を呼びかけていながら、関係自治体による適時的確な避難勧告等の発令や住民の迅速避難には至らなかった。これまでの防災気象情報には「災害発生の危険性が著しく高いことを有効に伝える手段」が欠けており、「重大な災害の危険性を正しく伝達するために」特別警報の導入が必要である、と。さらに気象庁はこう述べます。「災害に対する気象庁の危機感を伝えるために、この『特別警報』を創設しました」

この説明で示された災害のほかにも、気象庁は特別警報発表例として「昭和34年の伊勢湾台風(大雨、暴風、波浪、高潮」「平成12年の三宅島噴火(火山噴火)」を挙げています。こうした災害例からも分かるように、特別警報が出されるのはやはり特別な災害の場合です。これまでの警報や注意報の意味や位置づけが変わるのではなく、あくまでも東日本大震災のような大災害を想定していることに留意しましょう。

気象、地象のさまざまな災害に対応した特別警報

特別警報は、「大雨、暴風、高潮、波浪、大雪、暴風雪」警報の基準をはるかに超える危険度の高いものを「○○特別警報」として発表します。警報7種類のうちの「洪水」だけは特別警報の設定はありません。洪水については治水施設の整備状況やその操作状況といった要因も絡むため、全国の400河川に設定された「指定河川洪水予報」という既存情報を引き続き適切に運用するとしています。

こうした気象に対する特別警報のほかに、「地震、津波、噴火」という地象に対する特別警報もありますが、これらについても既存の情報をそれぞれの特別警報に位置づけました。情報の名称も例えば「地震特別警報」とはならず、従来通り変わりません。つまり、地震については「緊急地震速報の震度6弱以上の揺れを予想したもの」、津波は「大津波警報(津波の高さが3mを超えると予想される場合に発表)」、噴火は「噴火警報(居住地域)」もしくは「噴火警戒レベル4以上」がそれぞれ特別警報に位置づけられました。

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東日本大震災の津波を教訓にして津波警報が見直され、「大津波警報」が導入されたのは今年3月のことでした。数十年に一度の大災害の発生を知らせる情報は、津波災害だけではなく、その他のさまざまな災害に対しても必要である。気象庁を始めとする関係機関が抱いた切迫感が特別警報の導入の背景にあるのでしょう。

特別警報の意義を理解したところで、次は特別警報が発表された場合に私たちに求められる行動とは何かについて考えてみましょう。