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特別企画「シモンの活動靴」 提供 株式会社シモンー災害復旧を含むさまざまな現場活動の安全を"足元"から支えたいー

2011.01.25

特別企画「シモンの活動靴」 提供 株式会社シモン「災害復旧を含むさまざまな現場活動の安全を

被災地のさまざまな活動において「足元の安全」は見過ごされてきた

地震などの被災地で復旧活動にあたる人々の安全を考えるうえで意外な盲点があるという。足元の安全だ。具体的にいうと、靴である。木造家屋などが倒壊し、さまざまな危険物が散乱する被災地で存分に活動するために何を履くべきか。このことを事前に理解して、最適な履物を選んでいるという人がどのくらいいるだろうか。消防や警察など一部の専門職を除けば、ほとんどいないに違いない。復旧活動にあたる地方公共団体の一般職員を始め、被災した住民、災害ボランティアなど被災地では多くの人が活動する。彼らの足元の安全はこれまで見過ごされてきた。

安全靴メーカー大手の株式会社シモン(本社・東京都文京区、利岡信和社長)が、この防災対策上のいわば盲点に気づいたのは、2004年に発生した新潟県中越地震の際だった。小千谷市、長岡市に計600足の安全靴を救援物資として届けたことは被災地に大いに感謝されたという。また、同社フットウェア事業部長(取締役)で活動靴開発の指揮をとった利岡英和さんは、災害ボランティアとして現地で活動した人々から履物に苦労したという話を聞いた。事実、あるボランティアは、靴とズボンをガムテープでぐるぐる巻きに固定して、足場の悪い被災地での復旧作業に従事していたという。

利岡さんは振り返る。「食料やヘルメットなどは防災用品として備蓄もされています。しかし、復旧活動の基点になる"足元の安全=靴"に対する備えは欠けていました。私たちメーカーも、遅ればせながらそのことを理解したのです」。

同社はさっそく、被災地の各種活動における足元の安全確保を実現する活動靴の開発に着手した。それはもちろん、ユーザーニーズに応えようとする的確なビジネスマインドに基づく行動ではあった。ただ同時に、安全靴を長年手がけてきたメーカーとしての強い責任感と覚悟とをうかがわせるものでもあった。その理由を以下に見ていこう。

プロユースの災害活動靴が誕生。さらに一般ユース向けの新製品を開発

活動靴と安全靴の機能シモンの開発スタッフが最初に手掛けたことは、被災地の活動にどのような危険が伴うのかを丁寧に洗い直すことだった。つまり、安全靴とは違う活動靴に求められる機能を確認することだった。結果は右表の通り。工事現場や工場などでの利用を前提とした安全靴と、スタッフが作り出そうとした活動靴とは、求められる機能の優先順位が異なっていた。

家屋の倒壊現場などで最も危険なことは釘などの踏み抜きだろう。ガムテープの例が示すように、不安定な足場でもしっかりと地面を捉え、くるぶしを守って捻挫を防ぐ必要がある。危険物を蹴ってしまう恐れがあるからつま先も保護しなければならないし、泥などの異物の靴内への浸入を防ぐ機能も優先順位は高い。

開発スタッフはこれらの課題に一つ一つ解答を与えていく。踏抜き防止のために、靴底にステンレスの板を内蔵した。衝撃吸収性や安定性は安全靴で培った特許技術「SX3層底」を採用してクリアした。これは、アウトソールに2層のゴム、ミッドソールに過水分解しない高機能樹脂を組み合わせた靴底で、SX3層底が実現する「独立懸架方式(サスペンション・システム)」は、常に最大の接地面積を確保して安定したグリップ力を生み出すという。

さまざまな試行錯誤を経て、プロユース(防災機関などの担当者向け)の災害活動靴(防災靴)が誕生したのは地震から2年後の2006年のことだった。この商品は、中央省庁を始め、東京都などの自治体や企業の防災担当者に利用されているほか、災害用備蓄品としての採用も進んでいる。だが、利岡さんはさらに一歩踏み込む。「災害現場で活動するのは消防職員などのプロや被災者だけではありません。中越地震の復旧に駆けつけた20万人といわれるボランティアの人たち。彼ら一般ユーザーに対しては、プロユースの活動靴はちょっと本格的過ぎるのです」。確かに、プロ仕様の活動靴は編上の長靴であり、オレンジ色の反射テープも実用性を重視した作りになっている。利岡さんは、移動時には普通の靴でありながら、履き替えることなくそのまま作業に移れる一般ユース向けの活動靴を夢想した。2008年、シモンの新たな挑戦が始まる。

プロユースと一般ユース

スタッフは「自分たちが履きたい靴」を作った「衣食住」の根幹に"足元の安全=靴"

そして2010年夏、利岡さんらスタッフの思いは実を結ぶ。一般ユース向けの活動靴の製品化にこぎつけたのだ。

この活動靴をひと目みて感じるのはそのデザイン性の高さだ。プロユースの災害活動靴からの最も大きな変更点は、異物混入を防ぐという機能を保つために中編靴にフードをつける形式を採用したことだろう。フードを下ろせばスーツ着用時であっても違和感なく履ける。活動時にはズボンの裾をフード内にまとめつつ、ひざ下まで伸ばすことができる。フードの生地は薄いのだが、破れにくく水にも強い。反射テープの色も靴に合わせて黒に統一した。

試行錯誤を繰り返した。安全靴同様の牛革を使って突き刺しや引っかきに強く、火や薬品にも耐える。防水性を保ち静電気帯電も防止する。必要十分な安全機能を備えながら、どんな服装にも合わせられ、多様な用途に使えるものを......。利岡さんはさまざまな素材を工場に持ち込んでは、設計部門のメンバーらと試作を繰り返した。「多用途に使えるように、デザインはとにかくシンプルであることを目指しました。求められる機能とシンプルさとの両立に苦労しましたが、メンバー一同、自分たちが履きたくなる靴を作ろうという気持ちで取り組みました」。試作品だけでも70-80種類は作ったという。

実際に出来た活動靴をユーザーに試用してもらった。SX3層構造の特長でもあるから、軽くて履きやすいという声は予想できた。「デザインが良いから普段でも履ける」「大雨のときにまったく水が入らなかった」という意見に手応えを感じた。

活動靴開発の指揮をとった利岡さん 利岡さんは言う。「活動靴はまだ完成形ではありません。これをスタートにして、安全靴で培った技術を従来の産業の安全だけにとどまらず、市民生活のさまざまな場面の安全にも役立てていきたい。安全靴をはじめとする手と足の安全を一途に追求してきたメーカーとして、その思いを製品という形で社会に提供していきたいと考えています」。活動靴はアウトドアやガーデニングなどの野外活動にはぴったりだし、雨靴にもなる。用途はどんどん広がっていくだろう。

活動靴は2010年度グッドデザイン賞を受賞した。同賞は単なる外見を評価するものではない。ある製品が社会の不都合な部分をいかに解決しようとするのか、その提案性こそを評価する。「衣食住」は人の生活の基礎となるものである。災害時も平常時もそれは変わらない。そして、「衣」の根幹に?足元の安全=靴?がある。シモンの確信は、揺るがない。

株式会社シモン