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正しく理解し、賢く恐れる~放射性物質のキホン
(1)放射性物質の基礎知識

2011.03.25

福島第一原発事故によって放出されたとみられる放射性物質が、周辺都県の水道水や農作物から相次いで検出されています。政府は、いずれも少量の摂取では健康への影響はないと説明しているものの、国の基準値を上回る量が検出された場合には摂取制限の措置を取っています。

このことは、放出された放射性物質が東日本地域に広く拡散していることを示しています。現段階では原発から直径30km圏内に設定されている避難・屋内退避区域ですが、事故の収束が長引くにつれて、これ以外の地域でも同様の対応が必要になる可能性も高まってくるでしょう。

私たちが落ち着いて健康被害を防ぐ行動を取れるようにするためには、いま何が必要なのでしょうか。それはおそらく、これまで以上に放射性物質に関する正しい知識を身に付けながら、国や地方公共団体が発表する放射性物質に関する情報を冷静に受け止めることだと思います。災害は現在進行中です。今後も検出された数値は上下動するでしょう。予断はできません。放射性物質について正しく理解したうえで、賢く恐れる――あらためて放射性物質に関する基礎知識と身を守るポイントを4回に分けて紹介します。

「放射性物質」と「放射線」「放射能」の関係

原子力発電は、ウランの核分裂反応で発生するエネルギーを電力に換えて利用しています。核分裂の際に発生するのが放射線です。連日の報道では、放射性物質とか放射能という言葉も出てきます。どのように違うのでしょうか。

これらの関係は、よく懐中電灯に例えられます。懐中電灯は明るい光を出して対象物を照らします。放射性物質と放射線の関係もこれと同様で、放射性物質は懐中電灯、放射線は懐中電灯から出る光に相当します。

懐中電灯は光を出す能力を持っています。同様に放射線物質には放射線を出す能力があり、これが放射能です。放射性物質を指して放射能と呼ぶこともありますが、物理学的な定義では放射性物質と放射能とは別物です。物質(もの)とそれが持つ能力は違うからです。

単位「シーベルト」と「ベクレム」の違い

これも懐中電灯の例を考えます。光の強さを表す単位は「カンデラ」、対象物が照らされた明るさの単位は「ルクス」です。同様に、放射線を出す能力である放射能の強さを表す単位は「ベクレム」、それにさらされた人体が受ける影響を表す単位は「シーベルト」というわけです。

「グレイ」という単位も用いられます。これは放射線を浴びた物質が受ける「吸収線量」を示す単位です。シーベルトと似ていますが、シーベルトは人体への影響量を示すのでした。吸収線量は同じでも、放射線の種類や身体の部位などによって影響量は変化するため、これらを吸収線量に対して「等価線量(放射線の種類によって吸収線量を補正したもの)」「実効線量(身体部位の被ばくを全身被ばくに置き換えたもの)と呼び、その単位をシーベルトと定めています。つまり「シーベルト=グレイ×人体への影響度合い」の関係にあると考えられるでしょう。

単位「ベクレム」「グレイ」「シーベルト」の違い

単位名称 内容
ベクレム(Bq) 放射能の強さを表す
グレイ(Gy) 放射線が物質に吸収された程度を表す
シーベルト(Sv) 放射線が人体に与える影響の程度を表す
1Sv=1000mSv(ミリシーベルト)=100万μSv(マイクロシーベルト)

「放射性ヨウ素」と「放射性セシウム」

いずれも核分裂反応の際に生成される放射性物質で、過去の原発事故でも特に人体に影響を与えるものとして問題になりました。原子炉の中のヨウ素は高温になると気体になって外部に漏れ出します。水に溶けやすいセシウムは水蒸気とともに撒き散らされます。今回の福島第一原発の事故により原発施設外で検出されているのは、放射性ヨウ素131、放射性セシウム137、放射性セシウム134です。

原子力施設の外部に放出された放射性物質は空気中に漂ったり、地表に降下したりして人に外部被ばくをもたらすほか、人体に入って放射線を出し続け内部被ばくの原因になります。ヨウ素が体内に入ると、ほとんどが甲状腺に取り込まれます。これは、体内の代謝を調整する働きがある甲状腺ホルモンを合成するのにヨウ素が欠かせない材料だからです。一方のセシウムは全身、とくに筋肉に取り込まれやすいとされていますが、体内に摂取されたものの約1割はすみやかに尿などから排泄されます。

放射性物質は放射線を出すことによって自らの能力を減衰させていきます。このように、放射性物質が崩壊してもとの量の半分になるまでの時間が「半減期」です。今回問題となっている放射性物質の半減期は、放射性ヨウ素131は約8日、放射性セシウム137は約30年、放射性セシウム134は約2年です。

次に放射性物質が人体に及ぼす影響についてみていきましょう。

(2)放射性物質が人体に及ぼす影響」に続く