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【第13回】計画策定の目的を忘れない

2011.01.25

緊急時の非常招集体制の重要性

豪雪のイメージ 大みそかから新年にかけて山陰地方は記録的な豪雪に見舞われ、国道9号で車約千台が42時間立ち往生し、JR山陰線と伯備線合わせ18本が最大34時間停車した。また、鳥取県内では係留中の小型漁船約200隻が沈没、延約8万戸の停電も発生した。

防災関係者にとって、正月は緊急時の職員動員体制を敷くのに苦心する期間である。緊急時の非常招集体制は人事異動が行われた際に見直されるが、正月ともなると職員の福利厚生面からも勤務地を離れることを認めざるを得ない。タンクローリーのスリップから始まった今回の一連の事態は、渋滞を発生させ、道路に滞留した車が行く手を阻んで除雪車を使うことが難しくなるなど、緊急事態に対して管理部門から現場職員まで人手を集めるのに苦労したと思われる。緊急時の招集体制、関係業者との連携、閉じ込められた車内の人々への支援など、個々の事態が連鎖して新たな事態が発生していく状況とその対応は、他の災害に置き換えても学ぶべきものが多い。

地域防災計画は社会情勢に応じて修正する

災害対策基本法には市町村地域防災計画に定めるべき事項として、防災施設の新設や改良、防災の調査研究、教育や訓練、情報の収集や伝達などと、避難、消火、水防などの災害応急対策、ならびに復旧対策に関する計画を定めることになっている。

特に市町村計画においては、都道府県計画と違って各種防災計画の基本をなすべき防災基本計画に基づいて作成することが求められている。さらに、社会情勢の変化に応じて実情に合った計画とするため毎年検討を加え、必要があるときには修正しなければならないことが義務付けられている。

また、市町村計画は、防災業務計画や都道府県計画と一体になるものであり、修正するときにはあらかじめ都道府県知事に協議することも義務付けられている。知事は市町村計画が都道府県計画に抵触しないことを確認し、他の市町村計画との調整が必要であるのかを審査する。

これらの行為を怠ると、広域災害が発生した場合に応急対策や復旧対策に支障を生じ、それが原因となって市町村長に課せられた地域住民の生命、身体および財産の保護する責務を果たせないことになる。

組織に求められる情報収集・活用能力

こうした制度の中で、最新の情報を計画に反映するためにはどのような方法があるのであろうか。内閣府では中央防災会議で審議した事項を、防災白書を発行して国民に毎年広報している。さらに下位にある都道府県防災会議の議題や報告内容は担当課長会議などを通じて伝達され、改正事項等の整理が行われる。しかし、公的ルートからの情報だけでは内容の理解や対応の検討が難しいので、常に最新情報や解説などの資料が求められる。

まず、情報収集の最適な手段として4大新聞と地方紙の定期的な購読がある。山陰豪雪のように災害が発生した場合、現場からの被害状況報告、そして災害発生のメカニズムと分析、公共施設の復旧見通し、被災者の声、過去の被害状況など内容は多岐にわたる。一方、テレビとラジオの報道は、一過性で資料として蓄積するのには処理が必要となり文字として整理することが難しいが、映像の説得力に他メディアは追従できない。最近、インターネットからの情報も多くなっているが、その提供者や掲載意図が不明確なものは情報源としてはふさわしくない場合もある。やや専門的に偏るが学会のニュースレターや学会誌からの情報も重要であるが、学会に加入しなければ入手できない場合もあり、内容が専門的すぎる嫌いもある。業界紙的な性格を持つ雑誌や新聞の専門的な取材による特集記事などは参考になるものも多い。

積極的に情報を収集・整理するシステムを組織的に作り、新たな対策計画を練り上げるのは当事者である。地域防災計画を目標に近づけることができるのは、組織の情報収集と活用能力、そして見識と経験にかかっている。

井野盛夫(いの・もりお)
富士常葉大学環境防災学部客員
1937 年静岡市に生まれる。61 年東京教育大学卒業後、静岡県職員に採用される。工業用水道課、水資源課、地震対策課長を経て92年より防災局長。96年より静岡県防災情報研究所長。2000年より富士常葉大学環境防災学部長、07年度退職。理学博士。
中央防災会議専門委員、地震調査研究推進本部専門委員、静岡県立大学客員教授、兵庫教育大学講師、静岡大学講師などを歴任。97年国土庁長官防災功績者表彰。
著書に『21 世紀東海地震』(羽衣出版)『こうすれば東海地震はこわくない』『抗震-東海地震へのアプローチ』『抗震(改版)』(静岡新聞社)『今だから知りたい東海地震』(共著、静岡新聞社)『名水を科学する』(共著、技報堂)『地震予知がわかる本』(共著、オーム社)『地域防災計画の実務』(共著、鹿島出版)『東海地震いつ来るなぜ来るどう備える』(共著、清文社)など。

※本稿はbside2011年1月号[Vol.13]に掲載したコラムを再掲載しています。